寄り添う喜びを
ダンビュライト城へ来てから3日目。
本日は、ドラゴンへ乗って、隣国ピューゼン王国へ行くことになった。
フレディ様のオルクスには、ライ様。
カイル様のセティボスという金色の瞳の白い雄のドラゴンには、私が同乗している。
ライ様は上機嫌だった。
オルクスとセティボス、2頭同時に撫でられたことを喜んでいた。
「ねえねえ、ライナス殿。」
フレディ様はライ様に話しかける。
「ライナス殿は、ドラゴンと絆を結びたいと、思っているんだよね。」
ライ様は少し間をおいて『もちろん』と、答えた。
「アリシアの事を気にしすぎて、ドラゴンを逆に避けていない?」
ライ様は、言葉を無くす。
「アリシアが、リオンを殺した張本人だとわかっても、ドラゴンは誰も逆鱗を放ちはしなかったんだよ。」
フレディ様は、その理由をライ様に聞くが、ライ様はわからなかった。
・・・私も、その理由が分からない。
「クローライト公爵家は、ドラゴンの大樹を守護する一族だろう。そして、リオンがドラゴンの大樹にいる。どの一族よりもドラゴンの大樹を、大事なリオンを守ってくれる一族ではない?」
フレディ様のいう通りだわ。
ならこれまで、クローライト公爵家の者が、ドラゴンと絆を結べなかったのは・・・何故?
「他人の目って怖いよね・・・。」
と、フレディ様がしみじみと一言。
「聖ドラゴニア学園に入学するのは、クローライト公爵家の者なら当然の事。ですが、アリシアの血が流れている事で、白い眼を向ける輩が当然いる。その事で、ドラゴンと距離を取ってしまっていたのが原因でしょう。」
ライ様は、学園に入ったら勉強に関しては、復習程度の頭脳は持っている。
きっと、白い眼で見られる事を知っていて、勉強だけでも出来るようにと頑張ってきたのだろう。
だから、カイル様の説明をしてくれた通り、他者の目が原因だ。
「さっきさー、オルクスとセティボスを一緒に撫でていたよね。息子たちが初めてドラゴンに囲まれて喜んでいた時の顔に似ていたよ。純粋に嬉しかったんでしょう。」
ライ様は嬉しそうに『はい』と、答えた。
「その気持ち・・・絶対に忘れてはダメだよ。」
フレディ様が真剣に言う。
「当然の事ですが、ドラゴンは寄り添ってくれる相手と絆を結びます。一緒に笑ってくれたり、一緒に怒ってくれたり、一緒に悲しんだり・・・一緒に喜んだり・・・。」
「一緒に悪戯を思いついたり・・。」
「それは父上とオルクスだけですから。」
カイル様が、父親であるフレディ様に突っ込む。
「全ては、ドラゴンと寄り添わなくては出来ない事です。」
優しく諭すようにカイル様はライ様に伝える。
「もし、ドラゴンに触れて嬉しかった気持ちを忘れそうになったら、ダンビュライト城へ来る。そして、オルクスを撫でて欲しい。」
「もちろんセティボスもです。きっと、私の息子グレアムと絆を結んでいるアリエルも撫でて欲しいとせがむと思います。」
ライ様は2人と2頭にお礼を言う。
「では、これから行くところは、打ってつけの場になる事を願っている。」
ここは、ピューゼン王国のフィシュム宮殿。
前世の二重らせん階段で有名な城に似ている。
果たして宮殿内に二重らせん階段があるかは不明だが・・・。
立派な中心的にそびえ立つ方でなく、低い門のような建物の方へ行く。
弱っているドラゴンが十数頭と、絆を結んでいる者がいた。
「ナーガ王国で捕まっていたドラゴンと、その絆を結んだ者たちです。」
ウィリアム伯父様の所で捕まったドラゴン。
「療養のために、ヘリオドール侯爵が指定したのが、この地だったんだけど・・・どうしてかな?」
フレディ様が私を見る。
・・・まあ、見るよね。
「ドラゴンの体内にある、ドラゴンにとっては毒素のような物を取り除くために必要だったのでしょう。」
フィシュム宮殿の近くには大きな川が流れていて、海にも近い場所にある。
そして、ドラゴンが通常いない国で、理解ある者たちが住んでる。
好条件の場所である。
「ドラゴンが疲労で弱っているよね。こんなこと二度と起きて欲しくない。どうして、こうなっているかわかるなら、包み隠さず話して。」
フレディ様が真剣に私に伝える。
伝えないとならない事はわかったし、伝える気はある。
えっと・・・徐々にフレディ様のオーラが黒くなっていっている気がするのですが・・・。
「わかっている事は、包み隠す気なく話しますから、落ち着いてください!」