現実逃避ができません。
ダンビュライト城を目指して3日目。
本日の宿は、宿ではなかった。
その理由は、王宮トリプライトの王宮湖の東にあるクローライトの屋敷に泊まるからである。
さて・・・うふふっ。
本日の図書館は、王都の図書館『王立ドラゴニア図書館』
聖地に来ましたたたたた~!!
ゲーム『ドラフラ』時に、ヘンリー様が社会勉強の為という名目で、一年間働いていた図書館。
ここで、一年間働いていたんだ。
忘れてはいけないモーリスさんの弟さんと妹さんもいたわね。
・・・・。
私は、図書館の設置されている机に手を触れあたりを見る。
・・・・窓の位置。
・・・・机の位置。
ああ・・・・ここだ。
通常スチル『直接教えて欲しい』
ヘンリー様の飛び級テストを控えて、リオンが学園の休み日である土日に、図書室で直接ヘンリー様に勉強を教えるスチル。
通常スチルからの発展スチル『みんなで教えよう』
攻略キャラたちも、ヘンリー様に勉強を教えるスチル。
・・・何・・・これ。
「サーシャ、どうした・・顔が赤いぞ」
私は、目を一瞬見開き驚く。
だが、動揺を隠さなくては・・・。
「すみません。少し疲れが出たようです。申し訳ございませんが、お庭で休んできます。」
そう言い、私は図書館のお庭へと出ようと廊下へ出る。
出入り口の方へ向かう途中で、トイレの看板を見つけ、トイレへと駆け込む。
”バンッ ガチャリッ”
と、しっかりと個室の鍵を閉める。
便座の座面が降りたまま、私はそこへと座る。
寒さを感じないのに体が震え、自らをさする。
体の震えている原因はわかっている。
ただ・・・困惑をしている。
だって・・・こんな事。
自分で、自分に幻滅をする。
・・・紫色
・・・駱駝色
・・・蒸栗色
・・・蘭茶
・・・紫紺
・・・照柿
・・・不言色
・・・瑠璃色
by色の名前。
さあ、現実逃避よ。
こんにちは・・・して!!
只今、絶賛ウェルカム中なの~。
お願い・・・こんな・・・嫌だ!!
ヘンリー様を思い出して、体中が困惑しているなんて・・・。
ここは、トイレ。
トイレ・・・レ・・レモン。
・・・終わった~。
しりとりも出来ない。
そういえば、故郷の珍品本の一つに『トイレの芳香剤のススメ』って、言う本があったな~。
この世界のトイレは、水洗トイレではある。
瓶に少しずつ水が溜まり、ししおどしのように一気に水が流れ排泄物が流れる。
そして、異世界ならではなのが、消臭陶器という、臭いを半永久的に吸収する陶器があり、便器はその陶器で作られている。
だが、トイレという空間なので、やはり臭いが気になる。
そのために香木など香りのもとが置かれている。
『トイレの芳香剤のススメ』は、その香木等の評価が書かれていた本だ。
現在、このトイレの香りは・・・。
重症だ。
ヘンリー様のいい香りが、全身で思い出し、鼻が利かないのだ。
困って私は、鼻に手をやる。
口も一緒に塞いでしまう。
そして、思い出す。
ヘンリー様にキスされた時の事を・・・。
口の中まで、ヘンリー様の波が押し寄せた事を・・・。
・・・体中が熱い。
私の体が狂いだしている。
今、ヘンリー様にあったら凶器と化す。
ダメ・・・ダメ。
安心して・・・こんな所にヘンリー様はいない。
大丈夫だから・・・。
私は、大丈夫と言い聞かせながらトイレを出る。
「サーシャ・・・大丈夫か?」
ライ様が、私の方へと駆け付ける。
「サーシャ、大丈夫か?」
と、ライ様が私の額に手をやる。
「っ?!」
”パーンッ”
私は、ライ様の手を払いのける。
「あっ」
私は、つい声に出してしまった。
ライ様は心配して私の額に手をやったのに・・・。
私は、ヘンリー様と違う手に・・反射的に拒絶をしたのだ。
ライ様は驚いた顔をする。
「すまない。」
ライ様は謝ってくれる。
「いえ・・・私こそ申し訳ないです。」
私は、頭を下げて謝る。
ぎこちない空気が流れる。
「サーシャ。」
と、ライ様は私に声をかける。
「は、はい。」
私はぎこちなく返事をする。
「明日以降に支障をきたさないように、今日はもう屋敷へ戻り休め。」
そういい、護衛の者を付けてくれて、先に王都のクローライトの屋敷へと戻る。
体中に思い出すヘンリー様の温もりを洗い流したく、すぐにお風呂へと入りシャワーを浴びる。
石鹸を贅沢に使いゴシゴシ洗い流すが、ヘンリー様の温もりはなかなか消えてはくれなかった。
”シャーーーーーー”
と、シャワーを浴びていた。
そして・・・・ポタリ、ポタリと鼻血が流れる。
「私・・・変態じゃない。」
湯あたりであって欲しいと願ってしまった。