図書館経由の旅
凱旋式の翌朝。
私は、馬車に乗っていた。
同乗者はライ様。
護衛の兵を連れて、ダンビュライト城へ向かう。
同行者の中には、ネックレスのデザインがされた短剣を持っているヤンさんと、指輪のデザインされた短剣を持っているキロスさんがいた。
8人の英雄の2人が同行者の中にいた。
「そのような事を何故サーシャに言われなくてはならないんだ!!」
と、馬車の中でライ様が大声でいう。
「では、自信が持てないままでいいという事ですか?」
私はライ様に諭すように言う。
「自信なんてあるわけないだろう!!」
「自信のなさで行った責任は、誰の責任になるのですか?」
馬車を護衛している同行者の方々が、馬車内のヒートアップしている話合いを心配している。
馬車の中は、地図やら資料やらで埋め尽くされていた。
「緑とピンクの計画を賞賛してくださって、ありがとうございます。ですが、それをまるっきり同じことをプラシオの町にするのはおかしいです。」
私は、土地の気候等の違いがあるから、それに似合ったモノをすべきと諭しているのだが、どうやら自信がないから真似をしたいようだ。
「サーシャの提案した計画があまりにも良すぎるから、いいじゃないか!」
私はため息をついてから、口を開いた。
「プラシオとピンクアメジには大きな違いがあります。」
私は、ライ様にピンクアメジが緑が全くない町であったことを伝えた。
それに比べてプラシオの町は、緑がそれなりに存在していた。
「ピンクアメジと同じことをするには、わざわざ庭の緑を伐採するのですよ。」
伐採した緑の有効活用はあるかを質問する。
「そんなの薪にでもすればいいだろう!!」
薪にでもすればいいだと?
「そのような、安易な考えをして、責任が生じる事が起きた際。どうするのですか?」
ライ様は黙りだす。
頭に血が上りだしているのが伺える。
「また責任かよ・・・。いい加減にしてくれ!」
”ガチャリッ”
と、いきなり馬車のドアが開く。
「あの・・・大丈夫ですか?」
同行した者が心配そうに声をかけてくる。
「・・・は?」
「・・・え?」
ライ様と私は、同行者の人達が心配して声をかけてくれたことに驚く。
「喧嘩をしているのでは・・・ないのですか?」
「いいえ」
「いいえ・・・まったくですよ。」
私は、同行者にあっけらかんと声をかける。
どうやら、口論のヒートアップが喧嘩しているように聞こえたようだ。
実は、ライ様に裁縫の事について課題を出してからというモノ。
私がお題を挙げ、それについて調べるというスタイルが出来ている。
今回ダンビュライト城へ行く道のりも、調べものが出来るようにと、図書館を経由しながら向うという計画でクローライトの城を出た。
キャサリン様は、ダンビュライトへの道すがらの図書館で、ライ様と私の口論が勃発して、周りに迷惑をかけないようにと言われていたっけな。
なるほどな。
図書館では、充分気を付けないとならないな。
夕方と言うには早い時間帯に、本日の宿のある町に着く。
宿に着くも、すぐに図書館へ行き、口論の内容で資料で調べるべき事を調べに行く。
「サーシャ、綿花をプラシオの町で育てる事は出来ないか?」
と、ライ様は早速私に綿花の資料を見せる。
「ライ様、綿花を各家庭に、プランターで作らせようと思っているのですか?」
私の質問に『そうだ』と、答えてしまった。
・・・おいおい。
「ライ様、この資料を見ればわかると思いますが、綿花は結構育てるのが難しいのですよ。」
私は、植物の育てる難易度が出ているページを見つけ、ライ様に見せる。
「専門的な知識も必要で、安易な考え方で作れとは言えない植物です。」
ライ様は困った顔をする。
「ライ様は、どうしてプラシオの町の人々の家庭に、何かを要求しようとしているのですか?」
ライ様は町の一体感が欲しいと言って来た。
「一丸となって物事に打ち込むのはいい事ですが、それを無理やり押し付けるのは良くありません。」
私は、『傲慢です。』と、付け加えた。
ライ様は、考え込んでしまった。
「プラシオの町に裁縫の学校が出来る。それだけでいいのではありませんか?」
裁縫の学校を創ったのだから、それに町全体が協力しろと言うのは理不尽だ。
「だけど、綿花は必要だろう。」
もちろん必要だよ。
だが、それをプラシオの町に負担をさせるのはおかしい。
「では、どうすればいいのだ!!」
ライ様は、言葉に力が入る。
”ギラリッ”
と、図書館に来ている人々に睨みつけられる。
・・・すみません。
図書館では静かに本を読みましょう。
さて・・・どうしたものかな。
「ライ様・・・プラシオの町だけで解決できる問題なのでしょか?」
ライ様の顔が、一瞬で変わる。
「別にプラシオの近隣の町で、綿花の生産をしてもいいのではありませんか?」
ライ様は、プラシオの町の近隣の状況を調べだした。