凱旋の証
今日の領都は、領民の喜びの声で空気が明るく感じる。
8人の英雄をたたえる式『凱旋式』である。
領都の大通りはパレードのようになっていた。
馬に乗って行進している8人の英雄。
それを一目見ようと、沿道に駆け付ける人々。
素晴らしいと思ったのが、紙吹雪でなく、しっかりと花吹雪だとう事だ。
いろんな色の花びらが舞っていて綺麗だった。
おっと、いけない。花びらに見とれて、主役をスルーしそうな雰囲気になていた。
8人の英雄も、新調した服をピシッと着て、凛々しく見えていますよ。
8人の英雄は、クローライト城の城壁の中に入り、馬から降り城へと入る。
城内へ入り、大広間へと来る。
大広間は、玉座の間の様な感じに上座と下座がある。
上座の真ん中には、椅子が2つヴィンセント様と、マティアス様がいた。
8人の英雄たちが横並びになる。
「皆、ご苦労だった。」
と、ヴィンセント様が、ねぎらいの言葉を言った後、英雄をたたえる言葉を伝える。
その後、ヴィンセント様の隣にいるマティアス様にバトンタッチされる。
「8人の英雄を記念して、受け取って欲しい物がある。」
と、マティアス様が言うと、8人の使用人がそれぞれトレーを持ち現れる。
そのトレーの上には平べったい箱と、短剣が置かれている。
平べったい箱の中にはアクセサリーが入っている。
私が、それぞれに渡したアクセサリーだ。
そして、そのアクセサリーのデザインが施されたそれぞれの短剣。
「君たちは、クローライト領の大事な兵士だ。クローライト領の為に存在している。」
マティアス様が、上座から歩きトレーをもった使用人たちの方へ降りて来る。
「この短剣は、クローライト領の守護者しての証として、君たちに持っていて欲しい。」
マティアス様は、一つの平べったい箱を手に取る。
「短剣と対となっているアクセサリーは、妻もしくは母、恋人と言った、君たちが本来帰るべき者へ渡して欲しい。」
8人の英雄たちは、目を見開き驚きを見せる。
「そして、離れていても、心にはその者が存在している事を忘れないで欲しい。」
マティアス様の言葉で、8人の英雄たちは短剣とアクセサリーを受け取った。
マティアス様が8人の英雄に短剣とアクセサリーを渡すと、マティアス様は私を見る。
「サーシャ、君にも渡したいモノがある。ここへ来なさい。」
と、マティアス様が言う。
私は、驚きながらマティアス様の前へと行く。
すると、またトレーを持った使用人がマティアス様の横へと来る。
そのトレーには、上質な厚紙が置かれていた。
「クローライトの道を切り開くきっかけを作ってくれたサーシャに是非受け取って欲しい。」
と、マティアス様が言い、上質な厚紙が渡される。
上質な厚紙は2つ折りされていて、私はそれを開く。
・・・・・・・・・・。
”ツーー”
と、中身を見て涙が溢れた。
「・・・サーシャ・トラバイト。」
私は、書かれていた内容を口にする。
「その名を名乗るといい。」
『トラバイト』
キャサリン様の旧姓。
「嫁ぐまでの間の姓名として名乗って欲しいのよ。」
キャサリン様は、私のもとへと来る。
「受け取ってくれるかしら?」
私は、首を何度も上下し頷く。
そして、私の新たな姓名が書かれた紙を抱きしめる。
「・・・ありがとう・・ございます。」
こうして、私は『サーシャ・トラバイト』として、生きる事となった。