玄孫の次は・・・。
部屋の移動をした翌日。
キャサリン様に呼ばれ、図書室へ行く。
部屋を移動して嬉しい事は、前の部屋よりも、ほんの少しだがキャサリン様の部屋に近くなった事。
もっと、近くなった場所が図書室だ。
歩いて3分もかからない所にある。
私は図書室に入る。
やはり、この吹き抜け2階建ての図書室・・・素敵だわ。
「サーシャ。こっちよ。」
と、キャサリン様が手招きをする。
「!」
そこには、キャサリン様の他にもう一人の子供がいた。
常盤色の瞳に、光の加減で青色にも見える紺色の髪の男の子だった。
「ライナス、こちらはサーシャよ。」
と、キャサリン様は、私をその子に紹介する。
「始めまして、サーシャです。」
私は丁寧に自己紹介をする。
姓なしなので、所作だけでも丁寧にしなければ・・・。
「サーシャ。この子はヴィンセントの子のライナス。」
「ライナス・クローライトです。」
ヴィンセント様の子供も丁寧にあいさつをしてくれて、お互い握手をする。
「・・・すみません、少し失礼します。」
私は、速攻で本棚からとある本を必死に探す。
そして、お目当ての本を探すと、すぐページを開き確認。
本を元の場所に戻して、再びヴィンセント様の子供の前に戻る。
「キャサリン様のライナスのライソン様ですね。」
私は、満面の笑顔で言う。
本で調べた子孫の呼び方。
「逆だから、来孫のライナスだから!」
修正を入れてくれたが、私はしっかり言ったはずだが・・・。
「ですから、来孫のライナス様・・・?」
私は首をひねった。
「ライソン様?ライナス様?・・・・どっちが正しい事になるのでしょう?」
「もう・・・俺の事ライって、呼びなよ。」
と、諦めモードで呼び名を指定してくれた。
「ありがとうございます・・ライ様。」
うん、何かしっくりくる。
キャサリン様は微笑む。
「サーシャ。ライナスは来年度に、聖ドラゴニア学園に入学する事になっているわ。」
今年ではなく来年ですか・・・。
また『ライ』が、出てきましたね。
「それで、ヘリオドール一族であるサーシャに、ライナスの教育係になって貰おうと思うのよ。」
はあ?
キャサリン様が衝撃の言葉を発する。
私は、開いた口が塞がらなくなっていた。
「・・・よろしくお願いします。サーシャ先生。」
はあ?
キャサリン様はクスクスと笑うだけだった。
◇ ◇ ◇
キャサリン様から、ライ様の事を聞くと、それなりの勉学が出来ているとのこと。
一応、簡単なテスト問題を出すと、全て正解をしていた。
なら、私のすることは何?
この15歳の男の子に、何をすればいいのか・・・。
直接、聞いてみるか。
「ライ様。知りたいことは何でしょうか?」
あらあら、呆れた目で見られてしまいました。
「・・・サーシャ先生。やる気ありますか?」
そのような事を言われるとは・・。
「何をすべきか検討段階で、やる気と言われても・・・困りますね。」
勉強が学園に入ってから、復習状態となるのは必然だし・・・。
「何か、興味ある事はないのですか?」
もしくは専門的に知りたい事とか・・・。
「俺は将来、クローライト公爵になるから、領土の事は知るべきだとは思っていますよ。」
ライ様は、元ラリマー伯爵領、元ディディエラ侯爵領、グランデ伯爵領の3箇所を、10等分して百年伯爵を配置した地域の事を口にした。
「もう少し、詳しく調べませんか?」
と、私の問いに、ライ様はもちろんと言わんばかりに、生き生きとした目で私を見てきた。
私は町や村の範囲が書かれた地図を見つけ、窓ガラスに付けてその上に紙を置き、10等分に分割された線記入し、ライ様の前に出す。
「これが10等分され、国家鑑定士が100年間、伯爵として納める領土です。」
ライ様はプラシオの町を指さした。
「ここに裁縫学校を創設するんだろう。」
私は、事の経緯を話した。
「ここの町には絹糸を作らないのか?」
ライ様は、ルベライト領の緑とピンクの計画の事を知っていて、興味を持っているようだった。
「養蚕業は、どこに展開しますか?」
「え?」
ライ様は驚いた感じで私を見た。
「10等分した全領土だろう?」
「本当にそれでいいのですか?」
私は、ライ様に質問した。
ライ様は、再び驚きを目をパチクリして見せる。
「どうしたのですか?ライ様は将来、10等分した領土だけでなく、クローライト領の全土を管理するのですよ。」
困惑するライ様。
ライ様に何が必要かが、分かったような気がした。
「ライ様。箇条書きでも構いません。『裁縫』に、ついて3日間差し上げます。・・・調べてください。」
「なんで、調べるのだ?・・・サーシャ先生は、先生だろう。答えを知っているはずだ。」
そう来ましたか・・・まあ、気になる事もありましたし・・ここは。
「私も知らない答えがあるかもしれませんよ。」
ここには、こんなに素晴らしい図書室があるのだ。
「先生と言っても3歳しか違わないのですよ。どうでしょう、私の事は先生とは言わずに、サーシャだけでいいです。ですので、調べてください。」
ライ様は、仕事放棄と言いやがったので・・・諭すとしよう。
「つまり、ライ様は将来、どのような事をすればいいかを他人に聞く、傀儡の公爵になりたいという事ですか?」
ライ様は、瞬きを忘れているように静止している。
「勉学が出来ようが、将来領民を導く力がなければ、意味はありません。それでよろしいのですか?」
ライ様は首を左右に振る。
「では、裁縫についての答えを導き出してください。」
私は満面の笑みで、ライ様に訴えた。