調査は頼んでしまいましょう。
「禿山」
私は、ピンクアメジとピンクカルサの間にある山を指した。
アーモンドの木と桃の木を植え、蜂箱を設置する計画をしている山だ。
「もしかして子供のドラゴンは、大人のドラゴンに圧死されたのではなく、土砂崩れの下敷きになって亡くなったのかもしれません。」
ピンクアメジとピンクカルサの領民から、土砂崩れの起きた日にちを聞き出し、聖ライト礼拝堂にドラゴンが運ばれた日と、同じ日だったら、十中八九土砂崩れに巻き込まれた事になる。
・・・だけど、あのドラゴンに泥がべっとりと付いていなかった。
「どうしたのかな?」
と、エリック様が私の変化に気づく。
私は素直に、ドラゴンに泥がべっとりと付いていなかった事を説明する。
「・・・泥ではなく・・岩なのかもしれません。」
ドラゴンの亡くなった枠内で、岩が崩れるなどの崖崩れの調査が必要な事を伝える。
「そのためには、一度聖ライト礼拝堂へ行き、ドラゴンが運ばれてきた方角を、もう少し詳しく調べた方がよろしかと思います。」
エリック様は頷き『そうだね~。』と、言ってくれた。
「それから、あるかどうかはわかりませんが、盗賊団のドラゴンの観察記録などの資料があったら、そこから逃げ出したドラゴンの記録があるかもしれません。」
聖ライト礼拝堂へ行って詳しい調査と、ドラゴンの観察記録の件。
・・・私が進んで協力するべきよね。
「明日にも私が出た方・・」
「それは、してはいけない事だね。」
と、私の言葉を遮り、エリック様は私のこれからしようとしている事を止める。
私は、エリック様を二度見する。
「そんな事をしたら、またキャサリン殿が心労で倒れてしまうよ。それはしてはいけないよね。」
私は、コクッと頷く。
絶対にしてはいけない事だ。
「かと言って、キャサリン殿も同行して貰うには、まだよくなってから日が経っていない。」
再び、頷く私。
「それに、子供のドラゴンの育児に関する事は、カリスタ様が主になって取り組んでいる事だ。進んで協力をしてくれるし、陛下もルンルン気分で、カリスタ様と聖ライト礼拝堂に赴いてくれると思うよ。」
ハミッシュ陛下がルンルン気分ではわからないが、私が行くより説得力があるだろう。
「だから、今はキャサリン殿の所へいなさい。」
そういうとエリック様は、私の頭を撫でる。
きょとんとする私に、エリック様は優しく微笑む。
そして、キャサリン様の方へ向く。
「そういえば、そろそろ学園に入学する年となっているのでは?」
エリック様の質問にキャサリン様は、今年でなく来年と言った。
「では、より勉学に励む事になるのですね。」
キャサリン様に笑顔を向けるエリック様。
・・・何か、企んでいるような~。
と、感じてしまっている私がいた。
「あっ、そうそうサーシャ。」
と、何かをワザと思い出したように私の方を向いた。
「元、サーシャの侍女のマリー・カーネリアンは、今はルベライト城でメイドをしているよ。」
私は、エリック様の一言で、目を見開きエリック様を見つめる。
「サーシャのそばに行きたいと言うのを何とか留まらせていて貰っているよ。」
エリック様が言うには、ウィリアム伯父様の所へ手紙を送ってから、マリーはドラゴニアへ行くように、ウィリアム伯父様から指示された。
私のもとへ行く事にするも、私は現在の職業はメイド。
メイドのメイドは、おかしいと説得。
・・・するも、マリーは私のサポートする気満々だったようだ。
では、どうやって説得したのだ?
「美味しいクッキーを作れるように伝授する事で、とどまって貰ったんだよ。」
ルベライト領民の女性は、クッキー祭りというルベライト領の行事があるため、基本クッキーがおいしく作れる。
ルベライト領出身のカリスタ様のクッキーは、絶品で有名だ。
「サーシャはルベライトにいたんだ。多少クッキーをおいしく作れないともったいない。だから、マリーに伝授させるから、そのうち教わるといい。それまではルベライトに貸してね。」
エリック様が言い。ウィンクをした。
「ルベライトのクッキーは奥深いですからね。」
キャサリン様は懐かしそうに言った。
「本当に懐かしいわ。リオンがよくクッキーを作ってくれたものです。」
リオンが生前キャサリン様にクッキーを作ったようだ。
そして、たまにとんでもないクッキーが出される事があったようだ。
「納豆クッキーの時は、厨房が大変だったようです。」
・・・まったくだ。