ドラゴンの背に乗り、どちらへと?
途中から、デリック先生視点に変わります。
「もう一泊させていただきありがとうございました。」
ここは、港町シャーマの国家公務員のドラゴン寮の敷地の門の前。
私は、目録作成後に、これからの旅の準備に時間がかかってしまい。
もう一泊、この寮に泊めていただいたのだ。
「こちらも一晩、リュヌの銀である櫛を貸してくれたのだ。感謝する。」
デリック先生から、母の形見である銀の櫛を受け取り、昨日購入した馬にまたがる。
「サーシャ殿。あなたはこれからどこへ行くつもりだ?」
デリック先生が言ってきた。
うーん、秘密にすることもないし、マシュアクセサリーで居場所わかってしまうしいいか。
「ドラゴニアに永住するつもりですから、ドラゴンの神域に一番近い礼拝堂『聖ライト礼拝堂』へ挨拶をしに行こうかと。」
デリック先生は、フッと笑う。
「サーシャ殿らしい。道中気を付けて。」
「ありがとうございます。さようならデリック先生!!」
私は、手を振りながら出発をした。
◇ ◇ ◇
俺は、サーシャ殿を見送ると、すぐにヴァルナのところへ行く。
中央に報告をしないとならない。
鞄には、しっかり報告書が入っている。
「ヴァルナ、待たせたな。中央へ行こうか。」
俺は、ヴァルナにまたがる。
『わかったわ。サーシャさんは元気に旅立ったかしら?』
ヴァルナは、ねぐらから出るとすぐに飛びだってくれた。
日差しに照らされヴァルナの鱗が、ほのかに上品に照らされる。
俺の頭に中に流れるヴァルナの声は、美しいドラゴンなだけあり品がある。
俺と絆を結んで125年になる。
俺も、ヴァルナの美しさを損なわせないように、身なりも気にして、苦手だったダンスも一から習った。
”キュウ~”
『サーシャさ~ん!!』
ヴァルナが、林の中の道で、馬に乗って目的地に向かているサーシャ殿に鳴き声をあげて呼んだ。
サーシャ殿は、笑顔で見えなくなるまで、手を振り答えてくれた。
『デリック。やはり報告書を中央に提出するのですか?』
ヴァルナは、不満そうに言う。
「仕方がないだろう、大量の財宝を持ち込んできたのだから。これが国家鑑定士の仕事だ。」
俺は、ヴァルナに言い聞かせる。
国家鑑定士の仕事には、他国からの財宝の持ち込みが、多い場合報告をしないとならない。
一気に質に出されたりしたら、国にお金が無くなる恐れがあるからだ。
それから、贋金の取り締まりも、国家鑑定士の仕事である。
贋金に関しては、他国よりも優れていると自負している。
なんたって、ドラゴンという強い味方がいるのだから。
それにしても113個、いや114個か、あの貴金属は凄かった。
サーシャ殿は、硬貨に替えることなく持っていたとは・・・・・。
「ある意味・・・鋭い考えをもっているのか?」
『どうしたのです?』
考え事をしている俺に、ヴァルナが声をかけてくれた。
「サーシャ殿は、想像以上の策士ではないかと思ってな。」
サーシャ殿は、持っていた貴金属を硬貨に交換せずに、少しずつ交換していることだ。
貴金属を硬貨に交換して、その硬貨に贋金があれば捕まる。
特にドラゴニアは贋金には厳しいからな。
貴金属が偽物があっても、偽物というだけで終わる。
全て硬貨にすれば、あそこまで重い荷物を持たずにすむのに、そうしなったのは、ドラゴニアの状況を知ってのことか・・・。
「デリック先生~っ!!お~い、デリック先生~っ!!」
どこからか聞き覚えの声がする。
ここに、いてはいけない声なので、幻聴にしたいのだが、その声の主が主なだけに、振り向かないとならない。
ああ、やはり間違えではなかった。
金髪にアイスブルーの瞳。
「ハミッシュ陛下!!」
そこには、青い雄のドラゴン『ユピテル』にまたがり、俺に手を振っている、この国の国王ハミッシュ・トリプライト=ドラゴニアがいた。
頼みますから、元気よく手を振らないでください。
品位が気になります。