〇番外編〇 ミカン
ジジイがサーシャに会いに来た前日の話です。
『ミカンはどうしたのじゃ!』
いきなり、外が暗くなったと思ったら、ジジイが来たのか。
「そんな事言ったって、ここにはミカンはない。」
王宮トリプライトの塔の上にあるはずはない。
出入り口は兵で固められ、この部屋から出る事も出来ないのだから。
『約束はどうなっておるのじゃ!!』
そういえば、ピンクアメジに長期滞在する際にジジイに約束したっけな・・・王宮での舞踏会が終わるまで、ミカンは配給のみで我慢して欲しいと。
『ミカンを啜るのも飽きたのじゃ!!』
・・・そうですか。
そんな事言っても、今の俺にはどうすることも出来ない。
「なら、王宮の者にでも頼めばいいだろう。」
ここは王宮だしな。
『冷たいのう~』
『寂しいのう~』
『わざわざ儂が、来たと言うのにのう~』
『それにしても・・・塔の上に捕らえられているのは普通、女子ではないのかのう~』
『男だと、虚しいのう~』
ここに居たくて居るワケでない俺に・・・そこまで、言いたい放題に言うのかよ。
「サーシャは地下牢にいる。」
・・・サーシャ。
君がクラウンコッパーという名を隠していたとはな。
『サーシャは、この王都にはいないのじゃが・・・。』
どういうことだ?
サーシャが王宮にいない。
・・・殺されたのか?!
死刑となったのか?!
どういうことだ?
なんでだ?
・・・・何も聞いていない。
心臓が締め付けられる。
サーシャ・・サーシャ・・・サーシャ・・・・。
『クローライト領に居るのかのう~』
「今すぐ、サーシャのもとへ連れて行ってくれ!」
俺は、すぐにジジイの所へ向かう。
「ダメだ!!」
ドアの方から声した。
振り返ると、そこに陛下がいた。
『ミカン!!』
おい、ジジイはそっちかよ。
陛下の側近の従者であるピアーズが、トレーに山積みのミカンを持っていた。
「今、サーシャのもとへ行くのは許可できない。」
陛下は、陛下として命令を下してもサーシャのもとへ行くことを許さないと言った。
「サーシャは今、キャサリンのところへいる。」
リオンの母親の所に?
「サーシャがクラウンコッパーだから、捕らえているのか?」
「違う・・そう来たかよ。」
陛下は、呆れた感じで額に手をやった。
「キャサリンはサーシャを預かりたいと・・サーシャの母になりたいと言ってくれたのだよ。」
・・・・。
モヤモヤが弾け飛んだ感じだ。
サーシャの事で、いろいろと思い考えた。
まず、思ったのが、クラウンコッパーという事で距離を置かれたのではないか?
その・・・俺を恋愛対象として・・・・・見ていなかったのではないか?
その考えのいろいろが弾け飛んだのだ。
「母って凄いよな。」
陛下の言葉にうなずいた。
『ミカン、ミカン・・・ミカン、ミカン・・・ミカン、ミカン・・・』
・・・・・ジジイの感情に頭が引き寄せられる。
「陛下、まずはミカンを与えなければ、先の話は無理と思われますが・・。」
「俺も思った。」
陛下の言葉で、久々に俺は地上へ降りた。
それにしても、陛下はジジイの扱いが上手だと思った。
まず、3つ程ミカンを剥いてジジイの口に投げ、すぐに1つを剥き、外に投げつけた。
当然、ジジイはミカンを食べに塔から飛んで行く。
その間に部屋から出て階段へ向かい降りる。窓があるたびに剥いたミカンをそこから放り投げ地上に降りた。
・・・完全に餌付けされている。
そして、呆気にとられる俺の頭によぎったのは、食べ物を放り投げるのは問題ではないだろうか・・と、いう考えだけだった。
地上へ降りると、ベンチに座りミカンを剥く・・・剥く、剥く。
そして、投げる、投げる、投げるの繰り返し。
ジジイ・・相当ミカンを頬張る事に飢えていたのだな。
「それで、サーシャの話だが。」
陛下は、サーシャの事を話してくれた。
今は、平常は保てているが、ひとたびクラウンコッパーの事を出せば、動揺してしまう様だ。
そんな中で俺が会いに行けば、動揺だけでは済まされないだろうという事だった。
「キャサリンは、クラウンコッパーの事で怒りまくっているホレスを黙らせ怒りを鎮めた。今は、キャサリンにサーシャを預けておいてくれ。」
陛下がお願いしてくる。
「・・・サーシャは俺の事をどう想っているのだろう。」
と、俺はつぶやいてしまった。
「今は、申し訳ないと思っているのだろうな・・・。」
「もし、ルベライト領でのサーシャのしてくれた功績が、全て謝罪の感情からであったなら・・・・俺は・・・どうなってしまうのだろうか?」
恋愛感情が少しでもあってくれたのなら、救われるのだが・・・。
「なら、なおの事キャサリンにサーシャを預けておけ。キャサリンのもとで、落ちつきを取り戻したら考えるだろうよ。」
俺も、時間が必要だな。
もし、これまでの事すべてが謝罪であった時の為に、俺も落ち着かなければならないだろう。
『儂は会いたいのじゃがのう~』
と、ジジイが言って来た。
「動揺すると思うが、それで会いたいのか?」
『ショックを受けるのは承知じゃわい。じゃがのう・・小さきショックを与え、慣れて貰う事もよいのではないのか?』
確かにそれもありだな。
「ヘンリーはダメだ!」
俺は、その理由を陛下に聞く。
「ヘンリーの場合、サーシャを部屋に閉じ込める恐れがある。」
なんだよ、それは・・・。
確かに、もしすべてが謝罪とかであったなら・・・それが一番いい方法だ。
「ダメですね。」
「ダメだろう。」
『ダメじゃ、ダメじゃ!』
素直に、考えを述べたら皆に却下された。
それも即答。
「ヘンリー、お前もまだショックから立ち直っていない事を断言してやる。だから、サーシャに会う事を禁止する。・・・いいな。」
陛下からのキツイ言葉だが・・・仕方ない。
「わかりました。」
ありがとうから先に言わせてください。
本当に感謝です。
誤字修正
こんなにあるとは・・・私にとっては、笑える話です。
ですが、考えていると、見て頂いている方々には申し訳ない話ですね。
感謝と共に申し訳ありません。
気を付けますと言っても・・・きっと、これからもジャンジャンあると思います。
すみません。
ですので、遠慮せず。
誤字だよ~
と、報告してくれると嬉しいです。
よろしく、お願いします。