リニュアル計画
「ラリマー侯爵一家は、隣の貴族領であるベルデ伯爵に依頼をしているわ。そのうちベルデ伯爵のところの騎士が来ると思う。」
キャサリン様が私に伝えてくれた。
ベルデ伯爵の評判を聞くと領民と良好関係を築いているとの事。
よかった。
一応、伝えておくと、ラリマー侯爵一家は、この屋敷の牢屋に入れられている。
この屋敷って、カルデネ・ラリマー邸ね。
自分の屋敷牢に入れられる事になるとは、本人も家族も思ってもいなかっただろうね。
それだけ、罪は重いし、まだまだ出てきそうな感じよね。
それで、カルデネの事。
絆を結んだが人間側が先に亡くなり、ドラゴンが残ってしまったものたちが集まる施設に送られる事になった。
悲しいのは、ラリマー侯爵が亡くならない限り、再度、人と絆を結べないという事だった。
これだけは、どうにもならない。
カルデネには施設で安寧な日々を過ごして貰うしかない。
それが、カルデネにとって幸せかもしれないわね。
「発見!!お宝の山!!」
私はキャサリン様と、ラリマー侯爵家のクローゼットルームに来る。
「ここだけでも、これだけの服があります。」
おいおい、本当にこれで一人分のクローゼットルームかよ。
「孤児院の子供たちに暖かい格好をさせてあげる事が出来ます。」
大きさの問題がある事を言われました。
その通りですが、ここが注目の箇所なのです。
「そうですね。今年の冬はマントとかで何とかして貰うしかありませんが、来年、その先を見据えて出来ることがございます。」
キャサリン様は嬉しそうに、それは何なのか聞いて来た。
「この服をリニュアルするのです。」
私は、裁縫の出来る者を雇う事を提案する。
これだけでは終わらせないぞ。
「裁縫の出来る者を雇い、孤児院の子供たちに裁縫を教えながら服をリニュアルして貰うのです。そうすれば、孤児院の子供たちは将来有望な人材になります。」
キャサリン様は感心して聞き入ってくれている。
なので、続きがある事をお伝えせねば・・・。
「これだけ服がありますと、切れ端が結構出ると思われます。資料があればよろしいのですが・・・パッチワークという布と布とを継ぎ合わせ布地をリニュアルし、ベッドカバーやクッションにする技術があります。」
趣きのある暖かな布地になるのよね。
ドラゴニア王国とピューゼン王国のあるジャンナ大陸の南西にある大陸『アーリン大陸』に、その技術があった。
まあ、その技術がドラゴニアに入ってこない理由は、ユニコーンを崇拝する大陸だという事かな。
ホルンメーネ国のある大陸である。
ドラゴニアに入国する前によった時に見つけたのだ。
だから、資料を入手することが出来るはずなのだが。
「プラシオの町を、パッチ・・ワーク・・の町にするのかしら?」
・・・オシイわ。そんな町では終わらせたりしない!
「いいえ、この地を裁縫の町にしたいのです。」
キャサリン様が目を見開き驚いている。でも、その瞳は嬉しそうにキラキラしている。
私はニコっと微笑んでから話を進めた。
「この地に裁縫の学校を創りたいのです。」
キャサリン様はクスクスと笑う。
「この地でなく、この屋敷ってことではない?」
私は満面の笑みで『はい』と元気よく答える
そして、キャサリン様と一緒に笑う。
この屋敷の使用人の方に頼み紅茶を淹れて貰う。
美しい庭の見える部屋に淹れて貰った紅茶を飲みながら、今後の話をする。
「この屋敷の数部屋を調べてからとなりますが、孤児院の子供たちに一端開放します。」
暖房のなっていない施設よりも、こちらの屋敷の方が快適に過ごせるはずだ。
「空になった孤児院の施設を改築し、冬でも凍死しないように補強して貰います。」
その後、補強された施設に戻って貰う。
「そして、この屋敷ですが、全て調べ終わってから、裁縫学校と裁縫学校で作った物を売る店、それから布や洋服を買い取る店を兼ね揃えた施設へと改築します。」
改築費用は、この屋敷にある貴金属に芸術品で十分賄えるはずだ。
そして、ここが重要ポイント
「この屋敷を調べるのは、あまり急がなくても大丈夫です。」
キャサリン様は二度見をするように私を見る。
「裁縫技術の習得には時間がかかります。孤児院の子供裁縫学校で働いて貰うにも、まだまだ子供ですし、教師になるのですから確実に習得して貰わなければばりません。急ぎすぎて、未熟のまま開校してしまったら粗末な物しか出来ず。裁縫の町というには恥ずかしい町になってしまいますよ。」
キャサリン様は納得してくれた。
よかった・・・過労死メーターを上昇させるわけにはいなからね。