クラウンコッパー
「サーシャという女性が、サーシャ・クラウンコッパーという名であったのは事実です。」
「やはり、クラウンコッパーの人間ではありませんか!」
ホレスがやはりと言わんばかりの事を言う。
「ホレス殿。この場で発言を許されているのは、私の主人のはずです。」
キャサリンが冷めた感じに言う。
カリスタのような穏やかな感じのキャサリンにしては珍しい。
だからだろう、ホレスを黙らせるだけのモノがある。
「ですが、80年前にクラウンコッパー公爵家が断絶したのも事実です。」
マティアスそれにキャサリンは、補足するように真実を語りだす。
「約80年前にクラウンコッパー公爵家が断絶し、三大公爵家がクラウンサルファーとクラウングアノの二大公爵となった事で、権力争いが水面下で始まったようです。」
三つ巴だからこそ権力の均衡が保てたという事か・・・。
「前皇帝時代には、権力争いが大きくなる前にサルファー派の長男に位を譲ったとか・・・・。」
権力を抑え込むだけの力が、前皇帝にはなかったという事だな。
「ですが、隠居後に金色の瞳を持つ男子が生まれたのです。」
そのような子が生まれれば、皇帝に添えようとする輩が出て来るのではないのか?
俺の発した言葉に、マティアスは首を左右に振った。
「皇帝にさせたところで、2大権力に潰される事は目に見えていませんか?」
キャサリンのいう通りだな。
「権力の均衡がイリス帝国には必要だ。つまり権力を元通りにする為に、その子にクラウンコッパー公爵家の位を授けたのか・・・。」
「はい、デューク・クラウンコッパー・・・サーシャの父親です。」
これはまた『デューク』とは、公爵っていう意味だぞ。
公爵の中の公爵になれって事か・・・。
「グアノ派の女性を娶りましたが、長女を出産後亡くなったようです。」
産後の肥立ちが悪いと言われているが、実際はわからないようだ。
「次に娶ったのが、イリス帝国の隣の国。ナーガ王国の宰相ウィリアム・ヘリオドール侯爵の妹ステラです。」
ヘリオドール一族は、切れ者一族だとフレディが言っていたな。
「そのステラとの間に生まれたのがサーシャです。」
なるほど・・・クラウンコッパー公爵家の人間だと気づかない訳だ。
「ステラも、馬車で移動中に崖から転落して亡くなりました。」
今でも、生きていたらイリス帝国は変わっていたかもしれないな。
「再びグアノ派の女性を娶り、その間に男子が生まれました。」
「そして、デュークは突然、亡き者になったそうです。」
コッパー派を擁立させない為殺されたなこれは・・・。
「イリス帝国の権力勢力がぐちゃぐちゃだな。コッパー派は、グアノ派に取り込まれたとみていいのか?」
マティアスは『その通りです。』と、言ってくれた。
「だが、ここまで、権力闘争をすると国が成り立たなくなるのではないか?」
「その通りです。ですので今現在イリス帝国は革命が起きています。」
と、キャサリンが言う。
”コンコンコン”
と、ドアのノック音が聞こえる。
「重要なお話のところ申し訳ございません。こちらも重要な事でしたので、お部屋に入らせていただきます。」
と、見た目17歳ぐらいの若い男が2人部屋に入ってくる。
「俺は、フレディ・ダンビュライトの孫のグレアムです。こちらが、ナイジェル・ラリマーの次男ハワードです。」
2人は丁寧にあいさつをする。
「どうなさいましたか?」
カリスタが2人を暖かく向かい入れる。
「祖父から陛下宛ての手紙を預かっていますので、お持ちしました。」
『Fの盾を持ったドラゴン』の光沢のある白と銀のマーベルの封蝋
フレディの手紙だ。
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親愛であるはずのハミッシュ陛下へ
陛下がルベライト公爵家に送ったサーシャという者ですが、
私がかねてより気にしていた
ナーガ王国の宰相のヘリオドール一族の者のようです。
調べにナーガ王国に向かわせた者が次々と捕まりました。
凄いですよね。
ですので、捕虜の解放を訴えにナーガ王国へ行ってきます。
捕虜の解放に失敗したら、助けに来てくださいね。
ダンビュライト領に近い所にロクな者しか置かないでいる
『ツケ』
を、やっと払う時が来るかもしれませんよ。
陛下の事ですから、きっとそのことを気にしてますものね。
ですので、どちらに転がろうが陛下にとっては朗報。
楽しみに待っていてくださいね。
フレディ・ダンビュライト
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・・・やられた。
と、言う言葉であっているのか?
俺の顔が青ざめているのが自分でもわかる。
何で、こうも自分勝手な者が多いのだ!!