表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/423

・・・覚悟

 私は、ソファーに座りじっとハミッシュ陛下とカリスタ様が来るのを待っている。

 ・・・心臓の鼓動が未だに早い。

 顎の奥ががくがく震えているのが分かる。

 「サーシャ、どうしたのだ?」

と、ハミッシュ陛下とカリスタ様が不安そうに入って来た。

 「お願いがあります!」

 私はソファーから立ち上がる。

 そして、床に膝を付き土下座をする。

 「サーシャさん!」

 カリスタ様が驚くように私を呼ぶ。

 「今すぐ、何も聞かずに私を国外へ逃がしてください!!」

 ハミッシュ陛下は私の前で片膝をつく

 「サーシャ、どういうことだ?」

 「何も・・理由を聞かないでください!!」

 私は切羽詰まり、今にも泣きだしそうな声で言う。

 「まずは、頭をあげろ!」

 ハミッシュ陛下は私の腕を掴み私の上体を起こす。

 「理由を言え。理由を言わなければ、出来ることも出来ない。」

 王だからこそ、無理やり手を回すことが出来るが、その責任も王として負わなければならない・・・わかっている。

 でも・・・

 「お願いです・・何も・・」

 私は涙がこぼれた。

 ハミッシュ陛下は、涙を流している私を見てもただ話してくれるのを持っていた。

 「サーシャ・・その首筋。」

 ハミッシュ陛下の言葉で、ヘンリー様にキスされた首筋に手をやり隠す。

 「ごめんなさい。当初の約束をたがえる事になるのです。」

 私は、ハミッシュ陛下に初めて会った時にへミッシュ陛下に頼まれた事。

 ルベライト公爵家を元のようにして欲しいという事

 「ヘンリーは、顔に表情を出さなくても、領民と近い位置にあると言っただろう。何故約束をたがえるというのだ?」

 「・・・一緒に・・・泣くことが・・・出来ないからです。」

 私が、自分で言った言葉なのに、それが出来ない。

 「どうしてだ?」

 どうしてもとしか言えない。

 「理由を言え・・・前世のよしみだろう。」

 ハミッシュ陛下もつらい顔をしだす。


 もう、言うしかない・・・。


 「・・私は・・・私は・・サーシャ・・・サーシャ・クラウ」

 ”バーーーーンッ”

と、勢いよく部屋の扉が開く。

 「陛下!!王妃!!ご無事ですか!!」

と、慌てる聞き覚えのある男性の声。

 そして、扉からたくさんの兵が入って来た。

 「今すぐ、その女を捕らえろ!!」

と、聞き覚えのある声の主ホレス様が、剣を抜き兵に指示を出す。

 

 ああ・・・間に合わなかった。


 ・・・・私はすぐに悟った。


 「サーシャ・クラウンコッパー・・・陛下に何をするつもりだったのだ?」

 兵士に摑まれ、低い体勢になっている私。

 ホレス様は私の髪を鷲掴み顔を上げさせ睨んでくる。

 私は、髪を引っ張られる痛みで顔が痛みで歪む。

 「クラウンコッパーめ。リオンと同じように、陛下と王妃も殺すつもりだったのか?」

 「違う」

 否定をしても、わかっては貰えなかった。

 「サーシャを離せ!」

 ハミッシュ陛下は、ドスの利いた声で言う。

 「それは出来ません。この女はクラウンコッパーの人間なのですから。」

 ホレス様はハミッシュ陛下に説明をする。

 「リオンを殺したクラウンコッパー公爵家は、80年前にお家断絶をしたはずだ!!」

 「それでも、この女はクラウンコッパー公爵家の血筋の者なのです。その女を牢屋へ連れて行け!!」

と、ホレス様は兵士に伝える。

 そして、兵士に連れていかれ部屋を出る。

 「待て、そんな公にするんじゃない!!」

と、大声で怒鳴るようにハミッシュ陛下は言うが、兵士は誰も聞き入れてもらえず。

 私は晒されるように連れて行かれる。


◇ ◇ ◇


 「陛下、大丈夫でしたか?」

 ホレスはホッとした声で俺に言う。

 俺はホレスを睨みつけながら、ホレスの横を通り過ぎ部屋の出入り口まで行く。

 「誰かいるか?!」

 すぐに兵士が数名駆け付けて来る。

 「まず一人は、ピアーズを呼んで来い。」

 兵士が一人すぐに立ち去る。

 「次、ヘンリー・ルベライトを丁重に王宮の南の塔に連れて行き、誰も入れないように警護しろ。特に女性は近寄らせるな。」

 兵士が一人去る。

 「次、マティアス・クローライトと、その奥方をここへ呼べ。」

 兵士がまた一人去る。

 「次、セシル・キンバーライトをここへ呼べ。」

 兵士がホレスを気にしながら返事をする。

 「何故、息子をお呼びになるのですか?」

 「お前では、話にならないからだろう!!?」

 怒鳴り散らすようにホレスに言う。

 「次、君だな」

と、俺は兵士の一人を指さす。

 「今すぐ、兵を集めて、サーシャの荷物を全て取りに行け。もし、サーシャの持ち物が一つでも無くなっていたら・・・このホレスを牢屋にぶち込め。」

 その言葉にホレスが驚く。

 「何故あのような者をかばうのですか?」

 「サーシャが何をしたと言うのだ?」

 何も、武器など持っていなかったぞ。

 丸腰で俺を殺せるとでも、それほど俺は非力なのか?

 ・・・それだけじゃない。

 「お前は・・・俺の器を汚したのだぞ。」

 何もしていない相手を、俺を理由に牢屋にぶち込む。

 それも・・・勝手に

 もしサーシャが、クラウンコッパー公爵家の者であるなら、外交に関わる事になる。

 その責任は誰がとると言うのだ? 

 大陸を挟んでとなると、筆頭に挙げられるのはこの俺しかいない。

 「この国の王である俺の許可なく・・何もしていないどころか、感謝すべき相手である者を・・・それも丸腰の相手を牢屋へぶち込んだんだ・・・それも外交の重要人物となりうる者をだ・・・覚悟は出来ているな。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ