・・・しびれ
ヘンリー様と私は、再び会場前にいた部屋へと戻ってくる。
ここは、どうやらルベライト公爵家の控室のようだ。
私は、先ほどいたソファーに腰を掛ける。
「サーシャ。受け取って欲しい物がある。」
と、ヘンリー様は私の隣に座り、平べったい箱を出してきた。
この箱の感覚・・・勝手に贈られてくる貢物を思い出す。
ヘンリー様は、箱を開ける。
ああ・・・やっぱり、アクセサリーだ。
銀と真珠で作られたレースのようなきれいなチョーカー
「私は、メイドです。メイドにこのような物を贈る事はありません。例えヘンリー様の専属メイドでも。」
私は、アクセサリーの入っている箱をヘンリー様の方へと押し返す。
「俺は、サーシャの事をメイドとは思っていない。」
ヘンリー様は立ち上がり、私の前で片膝となり、スカートの裾をすくいキスをする。
・・・これって。
「俺と結婚をして欲しい。」
ヘンリー様は、真剣な眼差しで私を見つめる。
私は、驚きのあまり目を見開き動けなくなっていた。
ヘンリー様が・・・近づいて来る。
「んっ?!」
私の唇に触れてくる柔らかく、暖かいもの
・・・頭がジワジワとしびれだす。
唇が塞がれ、息が出来ないというか息が詰まる。
ゆっくりと塞がれていたものが離れていく。
「あっ・・・はあ~・・・は~・・。」
と、息が出来た潤いと、頭のしびれで目の焦点が定まっていない事で、体が動揺し震えている。
「サーシャ!」
熱を持った声でヘンリー様が私の名を呼ぶ。
ふと、ヘンリー様の両手が私の頬を包み込む。
「んぐっ・・・ん・・んっ」
そして、再び唇が塞がれる。
だが、今度は口の中まで塞がってくる。
口の中が・・波のように押し寄せ水の中にいるような潤いと・・息の詰まりで、感覚がしびれる。
「はっ・・あ~・・・」
と、やっと息が出来る。
私は天井に顔を仰ぎ、口で息をする。
”・・・・ヂヂュ~”
何の音・・・と、いうか・・わかっているけど、音がおかしくない?
鈍い音というか・・・おいっ
そうじゃないでしょう!!
私・・・キスされた上に今、艶めかしく音を立てているこれもキス!!
しっかり首筋に感覚がある・・っていうか、支配されている。
・・・・ダメ!!!
”ドンッ”
私は、ヘンリー様を突き飛ばす。
「・・・・。」
私は、ヘンリー様の方を見ると、すぐに目が合った。
”ツーーー”
と、自分の頬を伝うモノ。
涙が流れていた。
「・・・ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい。」
私は、ソファーから立ち上がり、その場を駆け足で去る。
部屋を出て廊下へ
どうして・・・こうなったの?
なんで、ヘンリー様が私に・・・キスを?
ヘンリー様にはリオンがいるでしょう。
じゃあ、あの言葉は何?・・・プロ・・プロポーズ?
いや、違う?
プロポーズではない?
・・・・・・いや、やっぱり、プロポーズ・・・だよ。
プロポーズという言葉に実感が感じない。
でも・・・結婚して欲しいって・・・。
キスも・・・したよ。
断じて、人工呼吸でない。
断じて、決闘して欲しいでもない。
そもそも、戦う意思はない!!
も~!!
私・・・動揺しまくって現実逃避したい気持ちはわかる。
だが、状況を理解しろ!!
そもそも・・・・無理なんだ。
そう、無理なのよ!!
状況を理解したら、なお無理という事がわかるのよ。
私は、廊下を走りながら人を探す。
見つけた。
会場の端で、周りを見回し指示を出してる男性。
茶髪でくせ毛の名前付きモブチャラ。
ピアーズ・スフェーン
「ピアーズさん!!」
と、私は息を切らしながら走り寄る。
「サーシャさん、どうなさいましたか、走ってくるなど・・・。」
「行儀が悪いのは申し訳ないです。ですが、今すぐハミッシュ陛下とカリスタ様と折り入った話をしないとならないのです。」
私は、慌てた顔そのままでピアースさんに伝える。
ピアースさんは、ハミッシュ陛下の方を見る。
ハミッシュ陛下は、カリスタ様と一緒に人込みの中にいる。
「お願いです。」
私は頭を下げてお願いをする。
「えっと・・縦型とドラム式どちらの洗濯機を使っていましたか?」
因みに私は縦型だ。
「そのように陛下へお伝えください。わかってくださるはずです。」
私の言葉に、ピアーズさんは分かったと言い。私を王室の控室へと案内してくれた。
「すぐに、陛下と王妃を連れてまいります。」
「ありがとうございます。」
私は、お辞儀をしてお礼を言う。
心臓の鼓動がドキドキしている。
不安と切なさと動揺と・・・いろんな感情が鼓動を早くしていた。
そして・・・今回が100話目です。
ビックリです。
驚きです。
これからも頑張りますので、よろしくお願いします。