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成長

 入って来た人物に、ミサトと由美は目を見開いた。その人物は忠志だった。 

 ミサトは「何で、忠志が此処にいるの」と思わず声を上げた。 


 忠志は少々、緊張してる様に見えたが、意を決した様子で、話始めた。

 「西村さん、ここからは俺が話す」

 由美はミサトだけでなく、忠志まで、何故此処に来たのか、混乱してる様子だっだが、少しの時間がして、諦めた様に、下を向き押し黙った。


 「ミサト、事情は原さんから聞いた。この部屋の二人の会話も最初から、この部屋の近くで、原さんが用意したモニターで見ていた、原さんから、ミサトさんの事を本当に想ってるなら、この銀行に来て、そしてミサトさんと話し合って下さいとな、ミサトの覚悟もちゃんと聞いた。だから今度は、俺から話す番だ。実は、俺は、西村に昔、虐められていた」


 虐め?ミサトは最初、なんの事か分からなかった。

 由美を見ると、鎮痛な面持ちで聞いていた。 

 「俺と西村は中学生の頃、同級生だった、西村とは中二の時、同級生だっだか、特に二人で、喋る言葉も無かった。西村に対しては優等生で、クラスメイトの多くから支持されている人気者と言うくらいにしか思っていなかったや、でもある時、学校の帰り道から少し離れた、普段から人通りが少ない通りで、西村が一学年上の先輩に、告白していていたところを、偶然見たんだ、そして、西村は振られていた。呆然としてる西村たそこで、目が合った、其の時の西村の顔は、今でも忘れられないよ」 


 ミサトは、ふと由美を見たら、由美の顔が、益々重く沈んで見える。 

 忠志は、一息着くと、由美の顔をチラッと見て、更に続けた。 


 「それからだよ、上履きが無くなった理、体操着が無くなった理、すぐ、西村の仕業だと思ったよ。それで、俺は西村に問い質したんだ、何で、こんな事をするんだ、俺は、別に、西村が、告白した事を誰にも話さないってね、其の時、思わずゾッとしたよ。西村のプライドを傷つけられた、許さないと言う様な表情に

。そして何も言わずに、西村はその場を立ち去った。俺は怖くて、その後、話し掛ける事が出来なかった。其の次の日からだよ、クラスの皆が、俺を無視する様になった。クラスのまとめ役である西村が、俺に嫌がらせを受けていると嘘をついて、皆に俺を無視する様に仕向けたんだ、それでも別に、無視されてもいいと思って、それ程、気にして無かったんだけど、徐々に虐めはエスカレートして行った。それから田村に制裁を加える会というのを作って、、参加しない者はターゲットにすると圧力を掛けて、クラスの皆、全員でありとあらゆる嫌がらせを俺に加えてくる様になった。俺の親に電話して、俺がセクハラしてると、クラスの女子を使って言わせたり、俺が暴力を振るって、皆を支配してると先生たちに嘘の報告をするんだ、挙句、クラス中の人間に全裸にされ、縛られて写真を撮られるなんて事もあった、少しでも、反抗するとその写真をバラ撒く里ね、それで俺は耐えられ無くなって、他の学校に移った。


 動揺しているミサトに、忠志は続ける。 

 「始めで合った時、名字が同じなので、まさか、と思ったが、似てないので、すぐに打ち消した。それからミサトと付き合ってるうち、ミサトが一度だけ、西村の名前を話した時、そのまさかが本当だった。その時、俺は半分以上忘れていたと思っていた怒りの気持ちが蘇って来た。ミサトに直接近況を聞く方法もあったが、出来るだけ、恨みを持ってる事を悟られたくないから、探偵を雇って、西村の現在の情報を調べた。エリート街道を歩いているんだなと思うとあの時の心の傷と屈辱が心の底から蘇ってくるんだ」 


 ミサトに告白する忠志には、いつもの爽やかな雰囲気は微塵も無く、自分の傷をえぐるように、沈痛な面持ちしながら続ける。 


 「そして、西村が資産家の御曹司と婚約してると聞いて怒りが頂点に達した」

ミサトは由美に婚約者がいると初めて聞いた。  


 「そして、復讐してやろうと思った。、どうやら、西村の婚約者は、西村の優しい性格に惚れてる様だと探偵から聞いて、それで思ったよ、婚約者にかつて俺にした事を話してやろうと、一番好きな人の姉なのに、もう昔の事なのに、ミサトが、姉には親代わりに育てて貰ったから、一杯、幸せになって欲しいと言ってるのに、俺をあんな目に合わせた女のことを許せない。婚約をぶち壊してやろうと思ったんだ、それで、ミサトと別れる事になるなら、それでも良いとまで思ったんだ、西村の婚約者に、昔、俺が酷い目に合った事をぶち撒けると、西村に言う為に、西村をホテルに呼び出して会った、西村は俺の事をよく覚えていたよ


忠志はチラリと由美を見ると、由美は黙ったまま俯いている。 


 「俺は一回目に、また西村に会った時は当て付けの為に会い。動揺してるのを見てから、再度、西村を呼び出した。そして、二回目に、西村に会った時、西村の婚約者に、俺が受けて来た仕打ちを話すつもりだと言った、たとえ婚約者がそんな事信じない、或いは気にしない人だとしても、言わないと俺の気持ちが収まらないと、そして、ミサトと付き合ってる事も言ったよ、此のことでわ別れる事になっても良いと、ミサトにも話すつもりだと、そうしたら、西村は、土下座をしながら、今まで、あなたにした事は許されるものでは無い、あなたの気持ちが済むなら、婚約者にも話してもいい、でもお願いミサトにだけは言わないで、あなたが、私に、復讐する事を知ったらあ、傷つくのはミサト、私は破談になってもいい、たからミサトには

、言わないで下さいと必死に、頭を下げる西村を見て、俺は、ハッと目が覚めたよ、俺はなんて見っともないんだって、昔された事をいつまでも根に持ち、俺が一番愛しているミサトをこんなにも、一生懸命守ろうとしてる人の幸せをぶち壊す為なら、ミサトと別れ様とまでするその心が、浅ましく嫌になった。復讐してやろうと思った相手に自分の心の醜さを逆に気付かされら。そんに情けない事は無い。つくづく、自分が情けなくて。一度は、ミサトやミサトを大切に想うにしむらも傷つけようとした俺だ。ミサトと一緒に居たいけど、失望したなら、俺の元を去っても構わない。勿論、もう復讐なんてしないよ」


 ミサトに不思議と失望は無かった、由美の忠志に対する虐め、そして忠志の復讐、考えもし無かった事に驚いたミサトだったが、言葉には出来ない、今までに、自分に無かったある不思議な気持ちが、ミサトに口を開かせた。


 「ねえ忠志、勿論、あなたがやろうとした事は、私は許せる事じゃ無いよ、でも」と言うとミサトは自分の腕を思い切り強く抓った。


 「おい、何を」驚く忠志に、ミサトは言葉を続けた「痛いね、少し抓っただけでも体は悲鳴を上げるんだよ、心もそうだよ、傷つけられたら、悲鳴をあげるんだよ、そんな酷い事されて、忘れられる訳ないじゃ無い、やられた相手を簡単に許せる訳ないじゃない」


 叫ぶ様に、声を絞り出すミサトは、忠志の前に立つと俯く、忠志の頬にそっと手を伸ばし、自分の顔を近づけた。


 ミサトは薄らと涙を浮かべて、ニッコリと微笑んで

、自分でも驚くくらいの優しい口調で「でも、私のせいで、もっと、忠志は苦しんだんだよね、、私、知らないうちに、忠志に良い所ばかり求めていたみたい。どんな人にも、良い所と悪い所がある、何て分かっていると思ってたのに、私もまだまだ、ダメだね、好きな人には理想的で合って欲しいと思ってた。でも今なら忠志の情けない所も、良い所も、悪い所も愛せると思う、理想の人なんかじゃなくて良い、好きな人なんかじゃなくてもいい、だって、忠志は私の大好きな人だから、好きな人とは違うんだよ」


 崩れ落ちて、嗚咽する忠志にミサトはそっと手をやって、そっと抱きしめると、少しの間、抱きしめた後、由美に近づいて行った。


 ミサトは、近づいて来ても、俯いたまま少しも動かない由美の前に立つと、少し深呼吸をして、気持ちを整えて、話し始めた。 


 「お姉ちゃんごめんね、今まで、私、お姉ちゃんに頼りぱなしだったよね、お姉ちゃんは凄いよ、私を育ててくれた上に仕事まで出来て、忠志を虐めてたと言っても、今は、ちゃんと後悔してるんだから、私を苦しめまいと、必死になって私を守ろうとしてくれた。きっと、私を失望させたく無かったんだよね。ねえ、お姉ちゃん、心許ないと思うけど、これからは、たまには私を頼って、お姉ちゃんみたいに、上手くは出来ないかも知れないけど、心の支えになろうと頑張る事なら、私も今なら出来ると思う。だって今、私はお姉ちゃんの嫌な所もいくらでも言える、でも好きな所は

、もっと、もっと、いくらでも言えるんだよ」


 由美は、母が亡くなって以来、ずっとため込んで来た十六年分の涙が止めどなく流れた。 

 由美の背中を無言で、優しく撫でらミサトは自分に

忠志と由美の前で、口を開かせた今迄に無い気持ちの正体に気づいていた、それは誰かを"素直に愛する"と言う事だった。








 

 

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