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報酬の名は成長で

 予約を入れてから、数日後の週末、ミサトは、人間コンサルタントサービスがある事務所がある場所は到着していた。 

                 

 場所は都内の超一等地で、どうしてこんな所に、この怪しげな商売の事務所が構えられるお金あるんだろうと、ミサトは不思議におもった。 

       

 何分、金持ちの大人が集まる街として知られているので、ミサトは大学の入学式に着ていった切りだった紺のスーツに身を包み、この格好で浮いていないか心配しながら、送られて来た地図を頼りに事務所に辿り着いた。                    


 地図には事務所の場所とこの人間コンサルタントの代表者が書かれていた。             

 ー人間コンサルタント代表原敬一        

 事務所は迷わずに、すぐに見つかった。繁華街のすぐそばの七階建てのマンションの三階だった。

     


 予約時間前に着いたので、待っている間、ミサトはこんな高級マンションに入るの初めてだと思った。 

 そう言えば、ミサトは行った事はないが弓 由美も結構いいマンションに住んでいると聞いている。 

 まさか一行員にここまでの一等地に住める訳ではないが、由美も結構いいマンションで暮らしているのか、その上、忠志の心まで手に入れてるのかと思うと

、ミサトは今までに由美に感じた事が無かった嫉妬が頭をもたる。                  


 僅かな可能性でも忠志を取り戻す事が出来たら、イヤ、少しでもこの苦しみから逃れられるなら気持ちが

予約時間が近づいたものの、何か犯罪を犯されるかもという気持ちから勇気を出し切れないミサトに、部屋番号301を押させた。 

             

 「ごめん下さい、今日三時に予約を入れてた、西村と言います」

「お待ちしていました、どうぞお上がり下さい」  

 愛想の良さそうな、男の子の声だった。電話で応対した吉田ではない。               

 自動ドアが開き、エレベーターに乗る、部屋のある三階で降りると、三郷は鼓動がはやくなるのをかんじた。

 ドキドキしながら部屋の前に立ち、インターフォンを押した。

「空いています、どうぞ」

ミサトは意を決して、部屋のドアを開けた。    


 玄関からの通路の奥の左側の部屋がドアが開いていた。其処の部屋に入ると、四十代前半と思しき、男が、部屋の左隅で机の上で、ノートパソコンを叩きながら、座っていた。


 その男の顔を見た瞬間、ミサトは一瞬見惚れた。高級そうなライトグレーのスーツを着こなし、ネクタイも青色をビシッと乱れなく着用していた。パソコンを打つ手は淀みがなく、姿勢は折り目正しい、なにより整った顔立ちをしていた、それでいて、柔和な感じが顔から漂う。

 

この男から、滲み出る雰囲気は、数々の経験を積んだ

、大人の男と言った感じのものだった。      

 

 「どうぞお掛け下さい」

男は、部屋の中央に対になって置かれているソファを指指した。

 ミサトがソファーに腰をかけると男は「今日はようこそお越し下さいました。私が人間コンサルタントの原敬一と申します。ちなみに、お電話頂いた時対応して頂いた吉田さんですが、彼女には電話受付のみ別の場所で行って貰ってます、私が、仕事をする上では一人の方が都合が良いので」            


 原の品が良く優しい感じにミサトはは少しホットしたが、まだ緊張が解けた訳では無い。

 「あ、それから、疑ったままで良いですよ」

不躾な発言にミサトは虚を突かれた。

  

 「まあ、警戒心を持たれるのは慣れてますから、じっくり話をしましょう」

ミサトは先制パンチを喰らったような感じはしたが、不思議と肩の力が抜けていくのが分かった。 

 「少し、警戒心が解けた様ですね。まあ無駄話をしても何ですから、早速、本題に入りましょう」

 

 原の言う通り、少しミサトは警戒心が解けた。訪れる前は、どうなるかと思っていたが、優しそうな人だなと思った瞬間「少し、私に心を開いた様ですね」

 机越しに、ミサトに向かって言うと、原はスッと立ち上がって、対になってるソファに腰を掛けた。

  

 スラリと伸びた長い脚に、スーツ越しだが、無駄な贅肉の無い体にミサトの目が行った。 

 何でこんなにカッコいい一人が、こんな仕事をしてるんだろう、其の上、所作まできちんとしている。

 

 見惚れている場合では無いと思い、ミサトは少し深呼吸をして、話そうと思っていた事、忠志や由美を思う度、胸が詰まって、多少、つっかえながら、話をした。 

 

 原は、柔和な顔を崩さず、ミサトの話に、頷きながら、真剣に聞いている。 

 原は自分の意見は言わず、まるでこちらの気持ちを分かっているかの様にミサトの言いたい事を絶妙な合いの手で、引き出してくれるので、割合、冷静に言いたい事を話す事が出来た。


 「大体、解りました。つまり、恋人の心がお姉さんにあり、それを奪い返したいと言う事ですね」

「その通りです」話し合えた安堵館から、ミサトはだいぶ落ち着いて来ていた。

 「あの、本当に彼の過去を取り戻す事が出来るんでしょうか」


ミサトの質問に、原は柔和な顔一つも崩す事なく話始めた。「勿論、私は相手の心は変えることは確約出来ませんし、それに、西村さん、あなたの話だけでは、完全には状況、詰まり、お姉さんと彼の間の気持ちが、どの程度なのか、どう言うものなのか、あなたの話だけでは、分かりかねます。それと失礼ながら、あなたは、お姉さんに対して、潜在的なコンプレックスが強すぎる傾向にあると見えますが、イヤ、コンプレックスだけならまだしも、勝てないと諦めている感情が端々に出います」


ズバリと気持ちを言い当てられた。動揺するミサトに「隠そうとすれば、する程分かりますよ。また彼の田村さんに対して、怒りを持ちながら、諦めようとしながら、どうしても嫌いにならない事も、あなたに田村さんに対する嫌悪感は微塵も感じられません」


 所々、気持ちが昂りながら話したからなのだろうか、ミサトは全てを見透かした様に気持ちを言い当ていく原に驚きを感じた。


 「それに、あなたは、お姉さんから田村さんを取り戻したいと思う一方で、お姉さんんに萎縮し、お姉さんにとって、良い子であろうとする気持ちも見受けられる。恐らくは、苦しい事から逃れる為だけに、カウンセリングを受ける様な気持ちで予約を取ったのではないですか」

 柔和な表情を一つも崩すことなく、原はミサトの心にグサリと刺さる言葉を言う。


 「西村さん、私が、依頼を受けらかどうかを決めるかどうは、たった一つ、それは依頼者様の心の成長です。も首尾よく、依頼を成功させても、西村さんの心が一つも変わらなければ、意味が有りません、勿論、引き受けた場合、最大限のサービスはお約束しますが

依頼者様に、成長する影も見えない様であれば、お引き受けできません。腹を括って貰わないと」原は真剣な口調で言う。

 思いもかけない原の言葉に、暫く沈黙した後、ミサトは意を決して、叫ぶ様に、声を絞り出した。

 「忠志を渡したくない、お姉ちゃんに勝ちたい、絶対に譲れない」涙を流しながら言うミサトに、原はにこりと笑いながら「よろしい、お引き受けしましょう、自分の気持ちを自覚して勇気を持って話したをしてくれました、それも少しの成長ですよ」

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