表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る僕らの叶い頃  作者: イノタックス
1章 叶い、始まる
8/40

7話 一段落

翌日、午前5時半。

なんとなく気になって、今日も神社に来てしまった。


でも、もう帰る。

きちんと見届けた。月上君が、大量のお賽銭を入れるところを。


──さて、どうなるかな。


◆◆◆


7月4日の木曜日。

今日も授業を終え、昼休みに交わしたちょっとした約束を思い出しながら病院へ。


先に病院に行った瞳から既に、努の身体を通して結果は聞いてある。

けど、僕の横を不安げに歩く月上君には知らせていない。


一応、最高の結果だったと言えるだろう。



三ノ上さんの病室の前へ到着。

すー、はー、と深呼吸をして、月上君がドアをノックする。


「はーい」

「っ!」


先に入っていた瞳の声ではない。

僕にとっては、聞きなじみのない声。


だけど、月上君にとってはそうではなかったようで。


「か、香里!」


勢いよくドアを開けて、病室へ入る月上君。

僕も後に続く。


そこには。


「ノボル。……えへへ」


内心、ほっとした。

記憶を取り戻した三ノ上さんの姿を、この目で確認できたから。


三ノ上さんは、ベッドに腰掛け、月上君の顔をしっかりと捉えていた。

──すると。


「ノ、ノボル!?」


三ノ上さんが驚きの声を上げた。その視線の先には。


「……か、かおりぃ……! よがっだ……!」


月上君の号泣する姿。すっごい泣いてた。



泣いてる月上君をよそに、瞳が三ノ上さんに現状の報告をする。

僕たちが来る前にだいぶ伝えていたらしく、報告はかなり短く終わった。


「ありがとうございます」


丁寧にお辞儀をして、僕にお礼の言葉を言ってきた。


「お役に立てたようで何よりです」


だから僕も、丁寧に返しておいた。


「高宮……ぐすっ、本当にありがとな」


やっと泣き止んだ月上君にもお礼を言われた。……けれど。


「月上君はお金を払った──つまり役に立った側の人なんだから、もっと堂々としてていいのに」

「そうは言っても、解決策を考えてくれたのは高宮だ。……本当に、ありがとう」

「……うん、どういたしまして」


お似合いのカップルだな、と。

そう思った。



「すぐに退院できそうなんです」

「よかったです。三ノ上さんの身体に異常がなくて」


前にもしたらしいけど、記憶を取り戻した今日また検査をして、特に問題は出なかったらしい。


「あっ」


と、三ノ上さん。


「おめでとうございます」

「へ?」


いきなり妙なことを言われたから、変な声が出てしまった。

一体何がおめでたいのだろう。僕に対して言っていたようだけど。


「あなたも──高宮さんも、望む結果が得られたようで」

「あ……はい。おかげさまで。ありがとうございます」


素直にお礼を言っておこう。



三ノ上さん曰く、1年参りをしていた僕とすれ違ったことがあるのだとか。

その時の僕の姿と今の姿が違うから、願いが叶ったのが分かったらしい。


さて。


「僕らは先に帰ろうか」

「そうだな、巡」

「そうね」


恋人同士で話したいことがあるだろう。


「何から何まで悪いな、高宮」

「気にしないで、月上君。……それじゃ、失礼しますね」


僕に続き、努と瞳も病室を出る。


◆◆◆


その後。

本当に何一つ身体に問題がなかったらしく、三ノ上さんは翌日の金曜日には裃高校に見学に来ていた。

授業間の10分休憩で少し話した限りだけど、簡単なテストを受ければ裃高校に入れるのだとか。

ということはつまり、学力はそれなりにあるということ。


なぜ学力が僕らと同じくらいあるのかと訊いたら、


『幽霊の姿で授業を受けていたからです』


と言っていた。

それって違法視聴みたいなものでは……と思ったけど、さすがに言わないでおいた。

そもそも幽霊に法律が効くのか怪しいし。多分効かないし。


月上君、本当に嬉しそうだった。周りの目を気にせず三ノ上さんに抱きついてたし。

周りからヒューヒュー言われてるのに気づいて、三ノ上さんはものすごく恥ずかしそうだったけど。


──でも。

三ノ上さんも、喜んでいた。

ふさぎ込んでしまった月上君のために、自分の記憶を代償に生き返ろうとした、ということも(僕だけに)教えてくれた。


三ノ上さんとは友達になった。

たった10分の間に『巡』『香里』と呼び合う仲に。やっぱ女子同士の絆というか、コミュ力ってすごい。

改めて、そう思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ