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巡る僕らの叶い頃  作者: イノタックス
1章 叶い、始まる
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閑話 変わって初めて気付くこと

弥勒沢姉弟と別れ、端境(はざかい)家──実留の家へ。


「遅かったわね」

「ごめん、思ったより長引いた」

「別にいいけどね。ほら、頼まれてたもの」


言って、真新しいビニール袋に入った衣服を渡される。


「ありがと。本当は僕も一緒に行きたかったんだけど……」

「そう言うと思って、数日分くらいしか買ってないわよ」

「さすが実留、頼りになる」

「それほどでも。……で、どうなの」


訊かれたのは、三ノ上さんのこと。

実留に協力──僕の服、正確には女物の下着とかを買っといてもらいたかったから、こちらの事情も話しておいたのだ。



「最短あと二日で解決すると思うよ」

「早いわね」

「うまくいけば、の話だけどね」


まずは明日、確かめるところからだ。

……あ、そうだ。


「制服、どうしよ」

「まだ持ってていいわよ。どうせまた明日も着るんだし、まだあんた用の制服、できてないんでしょ?」

「うん、まだ」


学校に頼んで、昼休みに採寸もしてもらったけど、その制服が届くのは数日後。


「それまで貸しといてあげる」

「ありがと、実留」

「……あんた、随分素直になったわね」


……そういえば。


「女子になったからかな、言いたいことを言いやすくなったみたい」

「はぁ。そういうものかしらね」

「そういうものなんだよ、きっと」


純女性には分からないだろう、この変化。

心は元々女性だったんだけど、妙な変化もあるのだなぁ、と思ったり。


「それじゃ、また明日」

「うん、また明日ね、巡」


……新しい名前を呼ばれるの、結構嬉しい。

返事を聞いて、僕は帰路についた。


さて、明日が楽しみだ。


◆◆◆


翌日、午前五時丁度。

僕はまた、裃神社にやって来ていた。


(……神様)


今日は自分のお参りじゃないんです、と心の中で念じてから、お賽銭を投げ入れ、一応のお参りをする。

今投げ入れたのは500円玉。1年参りで毎日入れていた額の10倍。

多い──ということはないだろう。むしろこの場合、多ければ多いほどいい。

けれど、ここから先は僕がするべきことではない。僕が払うべきは、このくらいでいい。


さて、家に戻ろう。



昨日は仕事の関係で、僕が寝た後に帰ってきたらしいお母さんにおはようと言ってから、確かめなければならないことを訊いておく。


「月上昇君って知ってる?」

「ええ、知ってるわよ。確か……彼女さんが亡くなって、塞ぎこんでいた子よね。あれ、でも今はその彼女さん、神社の力で生き返ったんだったかしら」

「うん。……ありがと、お母さん。それだけ分かれば十分だよ」

「……?」


ママ友ネットワーク、やっぱりすごい。

さあ、今日も着替えて、学校に行かなければ。


自室に行き、小学校のジャージを脱いで、実留から借りている制服にそでを通す。


「……うん」


部屋に全身が映る鏡が欲しいな、と思った。

考えておこう。


朝食を食べ終え、歯磨きをして、ミドルロングの髪を整えて、カバンを持って。


「いってきまーす!」


家を出発した。

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