閑話 変わって初めて気付くこと
弥勒沢姉弟と別れ、端境家──実留の家へ。
「遅かったわね」
「ごめん、思ったより長引いた」
「別にいいけどね。ほら、頼まれてたもの」
言って、真新しいビニール袋に入った衣服を渡される。
「ありがと。本当は僕も一緒に行きたかったんだけど……」
「そう言うと思って、数日分くらいしか買ってないわよ」
「さすが実留、頼りになる」
「それほどでも。……で、どうなの」
訊かれたのは、三ノ上さんのこと。
実留に協力──僕の服、正確には女物の下着とかを買っといてもらいたかったから、こちらの事情も話しておいたのだ。
「最短あと二日で解決すると思うよ」
「早いわね」
「うまくいけば、の話だけどね」
まずは明日、確かめるところからだ。
……あ、そうだ。
「制服、どうしよ」
「まだ持ってていいわよ。どうせまた明日も着るんだし、まだあんた用の制服、できてないんでしょ?」
「うん、まだ」
学校に頼んで、昼休みに採寸もしてもらったけど、その制服が届くのは数日後。
「それまで貸しといてあげる」
「ありがと、実留」
「……あんた、随分素直になったわね」
……そういえば。
「女子になったからかな、言いたいことを言いやすくなったみたい」
「はぁ。そういうものかしらね」
「そういうものなんだよ、きっと」
純女性には分からないだろう、この変化。
心は元々女性だったんだけど、妙な変化もあるのだなぁ、と思ったり。
「それじゃ、また明日」
「うん、また明日ね、巡」
……新しい名前を呼ばれるの、結構嬉しい。
返事を聞いて、僕は帰路についた。
さて、明日が楽しみだ。
◆◆◆
翌日、午前五時丁度。
僕はまた、裃神社にやって来ていた。
(……神様)
今日は自分のお参りじゃないんです、と心の中で念じてから、お賽銭を投げ入れ、一応のお参りをする。
今投げ入れたのは500円玉。1年参りで毎日入れていた額の10倍。
多い──ということはないだろう。むしろこの場合、多ければ多いほどいい。
けれど、ここから先は僕がするべきことではない。僕が払うべきは、このくらいでいい。
さて、家に戻ろう。
◆
昨日は仕事の関係で、僕が寝た後に帰ってきたらしいお母さんにおはようと言ってから、確かめなければならないことを訊いておく。
「月上昇君って知ってる?」
「ええ、知ってるわよ。確か……彼女さんが亡くなって、塞ぎこんでいた子よね。あれ、でも今はその彼女さん、神社の力で生き返ったんだったかしら」
「うん。……ありがと、お母さん。それだけ分かれば十分だよ」
「……?」
ママ友ネットワーク、やっぱりすごい。
さあ、今日も着替えて、学校に行かなければ。
自室に行き、小学校のジャージを脱いで、実留から借りている制服にそでを通す。
「……うん」
部屋に全身が映る鏡が欲しいな、と思った。
考えておこう。
朝食を食べ終え、歯磨きをして、ミドルロングの髪を整えて、カバンを持って。
「いってきまーす!」
家を出発した。