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巡る僕らの叶い頃  作者: イノタックス
2章 神隠し(?)
17/40

16話 神社で会議

4人で、神社のベンチに腰掛けながら。


「なるほど、タイムスリップでこの時間に来たんですね。……俺たちの問題に巻き込んでしまい、すみません」


また謝られた。今度は小林さんじゃなくて、九十九君からだけど。


「あたしたちは気にしてないから、大丈夫よ。それより──」


実留が目配せしてくる。

小林さんと九十九君が話している間に、僕たちもある作戦について話していた。


「1年参りに関して、少し聞きたいんですが、いいですか?」

「はい、どんなことでもお答えします」

「そんなに固くならないで、小林さん。責めたりするつもりはないんだから」

「は、はい」

「では、二つほど聞きたいことがあるので……一つ目から」


疑問点はいくつかあるのだけど、その中から二つだけ選んで訊く。


「1年参りは、小林さんと九十九君、二人とも行っていたんですよね?」

「ええ、そうです。二人で行っていました。時間はずらしたりして、家の人にばれないようにしていましたが……」

「なるほど」


後半部分は今回は必要ない情報なので切り捨てるとして、──うん、思った通り。


「では、二つ目。異世界に行くのをやめるつもりは……ありますか?」


少しだけ、言葉に詰まる。

仕方ないだろう。この提案は、彼らの居場所を奪おうとするものなのだから。

怒る可能性も考えて、おずおずと訊いたのだけど。


「はい、あります」

「おれもそうするつもりです。異世界へは──どちらにせよ、行けないようですし」


意外と──いや、そうでもないか。

小林さんだけでなく、九十九君にもすでに、異世界が存在しないという情報は伝わっているのだから。


「でも、どうしよっか、九十九君」

「そうだな、1年参りが無駄になることに──」

「あの、そのことなんですけど」


僕と実留で考えた、とある作戦を二人に伝える。


「な、なるほど。それなら僕は、今日のお参りを済ませて、1年参りを完了させます」


そう言って立ち上がり、九十九君は拝殿前へ。


「私ももう一度お参りして、お願い事を変えてみます。……あの」

「はい? ……え」


小林さん、目を潤ませている。


「本当に、ありがとうございます」

「いえ、気にしないでください。半分は『僕たちの願い』になるわけですし」

「そう……ですね。では、お参りしてきます」


さっきの作戦を聞いてもなお、不安が抜けてなさそうな小林さん。

それを見かねたのか、実留が立ち上がり、小林さんの手を握る。


「大丈夫、きっとうまくいくわ」

「は、はい!」


たたっ、と走り出し、九十九君の後を追っていく。


「さて、と」


あとは、神様頼りになってしまうから。


「僕たちもお参りしていこうか」

「そうね。……何をお願いすればいいのかわからないけど」

「そうだなぁ。それじゃあ……」


彼らの1年参りが、うまくいくように祈ろうかな。


◆◆◆


それから1時間ほど経って、小林家へ。

僕と実留は少し離れた場所から様子を見ている。


『小林さん──光里さんとお付き合いさせていただいてます、九十九樹です』


ガッチガチに緊張した声で、小林家の人々に挨拶する声が聞こえた。

正直なところ、作戦がうまくいくか少し不安だったのだけど。


「大丈夫よ、巡」

「え? ……あ」


少しだけ、震えていた手を実留が握ってくれた。


「見て、温かく迎え入れてくれてるわ」

「ほんとだ。……よかった」


『小林家と九十九家を仲良くする作戦』、うまくいってよかった。


◆◆◆


小林さんと九十九君から、改めてお礼を言われてから、僕と実留は神社の拝殿の裏に、隠れていた。

1年参りに来た誰かから見つかって、『僕が二人いた』みたいなややこしいことにならないように、隠れる必要があったのだ。


「九十九君の願い事は叶ったし、あとは──」

「小林さんの1年参りの願いの『変更』がうまくいけば、帰れるわね」

「うん」


何度か口にした『作戦』は、そこまで複雑なものじゃない。

最優先事項である『小林さんと九十九君が安心して付き合える』環境を作るために、九十九君の願い事を『小林家と九十九家を円満な関係にする』というものに変更してもらう。

それと同時に、小林さんの願い事を『僕と実留を元の時間に戻す』というものにしてもらった。

二人が一緒に1年参りをしてくれていたおかげで、願いを一つ僕らが使えた、ということに──なるといいのだけど。


「本当に大丈夫かな」

「大丈夫……だと思うんだけど、うーん……」


さっきと打って変わって、だいぶ不安げな実留。

それもそうだろう。元の時間に帰れなければ、色々な問題が出てくるのだから。


「信用ないなぁ、この僕に対して」

「……ん?」


なんか、聞き覚えのある声が──

──って、え?


「──え?」


神社の裏手、誰にも見つからないと思っていた場所。

隠れていた僕らの目の前には、確かに見覚えのある顔の『男』──高宮巡定(・・・・)が、静かに立っていた。

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