日記と結末
編集してからの再投稿です。バットエンドです。
父さんと母さんが死んだ。
数日前から大切な仕事が入ったと言って僕と姉さんの頭を撫でて出ていってから今日家の使用人から青ざめた顔で言われた。
だから今日から日記をつけよう。死んでしまった母さんの真似だけど。少しでも父さんと母さんを感じられる様に生前の父さんと母さんがやってた事を僕もやってみよう。それがこの日記と後は父さんが毎日やってた剣の修行。
とりあえず剣は重かった。まだ10歳の僕には早いのかな?今度兄さんが帰ってきたら教えて貰おう。兄さんは王国の騎士だしきっと強いだろうし。後姉さんは早く元気になって欲しい。今日もずっと泣いていて何も食べてない。
ちなみに母さんの日記は基本僕の成長とついでに書かれてる兄さんと姉さんの成長記録であった。兄さんは途中から騎士団に入っていたので記録は少ない。
最近なんとか姉さんが元に戻りつつある。何とか日常生活をおくるようになって家事も手伝ってくれるようになった。僕も近所の人達に助けて貰いながら何とかやってる。剣は重いが一応振れるようになった。振れるだけだけど。父さんみたいに上手く出来ない。頑張らないと。
久しぶりに兄さんが家に帰ってきた。凄く申し訳なさそうにしてたけど仕事だから仕方ない。と思いつつも一緒にいてほしかった。もう家には大人は兄さんしかいないから。正直僕と姉さんだけでは心細い。でもその分今日はいっぱい甘えた。ちなみに兄さんは凄く剣に厳しく体のあちこちが痛い。
姉さんが学校に通い始めた。本当なら親のいない僕たちは学校に行く暇はないのだけど両親が残してくれた遺産は結構凄い額であったし、なんと国王さまと領主さまが援助してくれる事になったようなのだ。なんでも父さんと母さんは王妃さまを暗殺から守って死んでしまった。だから国王さまは凄く両親に感謝していて残った僕たちに凄く配慮してくれるらしい。学園の費用はただだって。それと領主さまは父さんの上司で親友だって聞いた。だから僕たちが学園を卒業するまでは生活費とお手伝いさんを送ってくれるって。凄い助かる。いつまでもご近所さんに迷惑かけられないし色々教えて貰おう。それはそうと父さんと母さんって何の仕事してたんだろう?父さんは騎士だって事は分かってるし、母さんも治療院で働いてたけど王妃さまを守るって実は父さんと母さんって凄い人なんだろうか。今度兄さんに聞いてみよう。
姉さんが学園に通い始めてから1年以上たった。たまに読み返すと当時の気持ちを思い出して悲しくなるけどもっと頑張らなくちゃって気持ちになる。とりあえず来年から僕も学園に通う事になる。それまでに色々覚えないと。家事もだいぶ出来る様になってるし剣だってたまに帰ってくる兄さんが鍛えてくれるおかげでかなり振れる様になった。もっと強くならないと。聞いた話だと父さん実は元近衛騎士団の副団長で母さんは騎士団の治療師だったみたい。結婚と子育てに専念するために退団して今の領主さまの領地に引っ越したらしい。領主さまが親友で学園がこの領地にあったからだって言ってたと領主さまは笑って教えてくれた。僕たちには嬉しいけど子育てのために近衛騎士団の副団長を辞めるとか凄いな。でも父さんと母さんが王妃さまを守った理由は一部知れたし、そんな凄い両親を誇らしく思う。少しでも両親の意思を引き継ぎたい。
最近姉さんがおかしい。学園に通い始めた時は凄く勉強を頑張ってた。母さんみたいな治療師になりたいって。勿論今も勉強は頑張ってるみたい。そうお手伝いさんから聞いた。なんでか姉さんは僕と話してくれない。避けられてるみたい。僕が何かしてしまったのか?今日なんて話しかけたらため息ついて無視された。意味がわからない。忙しいしだろうけど兄さんに相談の手紙を書いた。早く仲直りしたい。
姉さんと仲直りした。でも兄さんが帰ってきてる時だけだ。どうやら兄さんに手紙で叱られたらしい。姉さんが珍しく話しかけてきたとおもったら一方的に兄さんがいるときだけは仲良いふりをするからって言われた。理由は話してくれない。兄さんは知ってそうだけど教えてくれない。なんなんだ?
姉さんが家に帰って来なくなった。ただ場所は知ってる。領主さまのところだ。領主さまの娘さんと仲良くなったらしく入り浸っているみたい。大変申し訳ない。兄さんがこれを知って頭抱えてた。気持ちはわかる。僕も頭痛い。今日は早めに寝よう。
姉さんが帰ってきた。どうやら屋敷を追い出されたらしい。そりゃあ1ヶ月もいれば追い出される。数日ならともかく仕事もしないでずっと娘さんと遊ぶか勉強してるかのどっちかだったみたいだ。送り届けてくれた使用人の人が教えてくれた。ちなみにその時領主さまの娘さんにも会った。なんかめっちゃ睨まれた。何故?
兄さんが帰ってきた。凄く怒って。姉さんをかなり叱っていた。そして姉さんも言い返していた。僕を指差してこいつと居たくないだって。そしたら兄さんに叩かれて自分の部屋に逃げ込んだ。ただ怒った兄さんはそれを追いかけて部屋の扉を破壊して連れ戻した。流石に怖かったのか泣いてる姉さん。僕も泣きそうなくらい怖かった。結局姉さんは家を出ていく事になった。学園の寮に入るみたい。最初は縁を切るってなってたけどそれは姉さんが拒否した。でも僕は嫌い。じゃあ家を出るしかない。本当になんなんだろうか。
最近は平和だ。剣の修行をしてお手伝いさんから色々ならってかなり充実してる。姉さんいない方が充実してるってなんだろう。いつか仲直りしたいけど心のどこかで無理だとおもってる。だってあれからもう半年だ。一切連絡ないし。まぁ明日から僕も学園に通う。嫌でも顔を合わせる機会はあるだろうし、少しづつ改善していこう。
学園に入学して気がついた。姉さんは学園では人気者だ。美人で成績優秀、明るく気さくで、後礼儀も正しい。人気なのも頷ける。僕も昔の姉さんは大好きだったし。でも今の姉さんはちょっと嫌いだ。僕は完全に無視されるし、領主さまの娘さんにはかなり嫌われてる。今日なんて出会い頭にひっぱたかれて罵倒された。恥知らずとか言われ。何のことかと聞くとどうやら僕は姉さんを家から追い出したクズらしい。流石に頭に来たので姉さんを睨むと視線を反らされた。領主さまには申し訳ないが娘さんの事は抗議しよう。
抗議してから3日ほどで手紙が領主様からきた。
内容は
「君は娘から養子に思われていて、君の兄と姉が本当の子供と思われている。そこははっきりと否定したたが娘は何故か君の姉の証言を信じている。何度か君の兄とも話ているが姉の言葉だけを盲信している。私の知る限り君の姉は2歳から引き取られているので記憶上は無理も無いが、我が娘ながら申し訳ない。本当は処罰しなければならないが私としても第一子であり可愛い子供だ。第一継承権から外すのでそれで承知してくれないか?相続権も与えない。使用人にも君に対する嫌がらせなどは一切認めない。勿論私の後を継がせるのは第二子である息子につがせる。これは国王にももうしでている。君への保護もこれからさらに充実させる。これが私に出来る最大限の事だ。
クラスメイトに姉さんと似てないと言われた。それはそうだ。兄さんと姉さんは養子なのだし。そう言ったら納得してた。後紹介してくれと言われたが無理だ。凄く嫌われてるから仲直りする方法を教えてくれたら紹介すると伝えると、直接取り入った方が楽だなと笑われた。確かに。
最近よく上級生に絡まれる。最初は2~3人に喧嘩を売られた。返り討ちにしてたら毎日別の人に絡まれる。多分姉さんか領主さまの娘さんの取り巻きだろう。あの2人人気あるし。迷惑な話だ。
1週間ぶりに日記を書く。あいつら武器まで使いやがった。絶対に許さない。だが先ずは傷を癒す事に専念しよう。それから僕たちがお世話になってる人達に手紙を書いた。今の現状とこれから迷惑をかけるかもしれないと。徹底的にやってやる。僕に絡んできた奴ら全員に、今後は絡まれない様に、僕と同じ傷を与えてやる。少しづつ、丁寧に、これでもかと。
姉さんの回りから人が減った。同時に僕の回りからも。まぁ自業自得だなと思う。だけど平和になったし、仲のいい奴らはまだいる。どうとでもなるだろう。
あいつらやりやがった。あの糞女共は王子を味方につけた。それはまぁ良い。勝手にしろ。だけど今度は王子が絡んできた。何が剣の稽古だ。5人で囲みやがって。ムカついたので王子以外を徹底的に叩きのめした。流石に王子は不味いし王様にはお世話になっているので疲れさせて終わりにしたが王様には報告しておこう。
退学になった。どうもやり過ぎたらしい。さんざん叩きのめした奴等の中には多くの貴族の子息もいて流石に王様も領主さまも庇いきれないと言われた。まぁ王子にも嫌われているしここまで貴族にも嫌われたら騎士団でなんて絶対に働けない。逆に諦めが簡単についた。仕事を探さないと。後糞女にも仕返しだ。あいつも学園を辞めさせてやる。ちなみに学園に通う分の費用と生活費をまとめて貰えた。後結構な金額の金も。王子と娘の件はこれで手打ちにしてくれないかと言うわけだ。正直許せないが恩もある。こちらからは手を出さない事は約束した。意味は通じた様なので上手く舵取りしてくれ。
今日は姉と呼んでた女に会いに行った。逃げられない様に授業中に学園長室に呼び出した。絶縁状を持って。兄さんには伝えてある。渋々だが認めて貰った。家名は剥奪。当然遺産の分配も無し。援助も家から勘当のため無くなる。糞女は青ざめてガタガタ震えながら違うとか私じゃないとか何で?兄さんは?とかブツブツ言ってた。確かに糞女は何もしてない。俺を嫌ってるだけだろう。回りが暴走しただけだろう。それにあいつは忘れてた様だ。家長の名義は俺だと言うことに。兄さんが養子だと言うことで辞退したことを。まぁあの時はあいつ泣きっぱなしで聞いて無かったのだろう。だが知ったことか。流石に無一文では放り出せないし兄さんもこれだけはと懇願されたので1年は過ごせる金を渡して部屋を出た。姉だった女は泣きながらすがってきたが今更遅いんだよ。これからは他人だ。
あいつらは本当にやってくれる。俺の悪い噂を真実の有無は問わずに広めやがった。おかげで働き先が見つからない。今日も身分を隠して働いていた店にやって来てさんざん暴れやがった。俺が原因という事で店は首。取り巻きどもが壊した分は俺の給料から天引き。あいつらは捕まっても大した被害はないので罰金刑と精々退学になるか?本当に納得いかない。
学園を退学して今日で2年くらいたった。俺は未だに無職で遺産と援助金などで食い繋いでいる。遺産の分配を早いうちに兄さんとの家族会議で決めていて良かった。おかげで生きていけている。まだまだ余裕はあるがいつまでもこうしているわけにはいかない。何かしなくてはいけない。
今日はあの女がきた。流石に近所の目があるため話だけは聞くことにした。近所の目など今更だが。その時はまだ多少の情もあったのもある。一応姉と呼び育ったし、最後の最後には一応謝っていたし。一人で来たのも良かったのだろう。もし取り巻きや王子や領主の娘と一緒だったら一歩たりとも家の敷地には入れなかった。だが話を聞いて後悔した。心が憎しみに染まった。殺したくなった。これを書いてる今でもよく耐えたと思う。まず糞女は勘当をといて家名を名乗らせて欲しいと言った。それ以外はいらないが父さんと母さんの娘であることを認めて欲しいと。この時は条件付きで許可しようかとも思っていた。無職も大変なのだ。職の斡旋を条件に手打ちにしようかと。でも一応何故なのかと聞いて怒りに染まった。先ずは結論から言うと結婚したいらしい。そして相手は貴族で名を非常に大切にする家系で取り巻き達とは一切関係ない。俺達の事情も良く知っているため俺には同情的で糞女はだいぶ糾弾されたようだ。だが必死の説得の結果俺から復縁の許可を貰い家名を取り戻すことを条件に結婚を認めたらしい。まぁここも別に良かった。かなり苛ついていたが。それで馴れ初めを聞いた。ふざけた理由だった場合を考えての事だった。そして馴れ初めは俺からしたらふざけた理由だった。俺が退学した後に学園で出会った?俺と似ていたのが目についた切欠?相手から話しかけてきて何故自分を見ているのかと聞かれた。最初は嫌だったけど徐々に心を許した?俺を思い出して罪悪感に押し潰されそうになった?でも好きになる気持ちを押さえられなかった?卒業前にプロポーズされた?今は治療院で働きながら各方面に挨拶している?卒業?働いている?なんだそれは。俺は退学させられてこいつの取り巻きのせいで仕事にも困っている。金はあるがそれだけだ。その金だって精々どんなに節約したって後30年暮らせれば良いくらいだ。俺の性格なんて関係ない。王子と多くの貴族に嫌われた俺など嫌がらせを恐れて誰も雇ってくれない。家を離れ狩人になろうとした。食事は出来るが毛皮などは買って貰えない。商売もだ。俺の噂の少ない、そんな場所にも赴いた。取り巻き連中が追いかけてくる。国外で一からやり直そうとした。多分だが王子の命令だろう。関所を通れなかった。密入国しようとした。見つかって捕まった。直ぐに解放された。何度も繰り返した。そして今父母の残してくれた実家にいるのが答えだ。思えばあの時の兵士達の申し訳なさそうな顔。多分同情されてたのだろう。だが次期国王の王子に睨まれたく無かったのだろう。これを書く前に当時の日記を読み返している。当時の感情を鮮明に思い出して書いている。悲しかった。悔しかった。殺してでもと思った。勇気がなかった。父母の様に守れる人になりたかった。殺したくなかった。だから諦めた。最初は結婚を。だって仕事もない俺に、嫌われものに嫁いでくれる女なんていない。数年前は親切だった近所ですら今では腫れ物あつかい。町でも同じだ。物は売ってくれる。でもそれだけだ。領主に助けを求めた。何度も何度も。税金を取らないでいてくれたのは感謝しているし、何度も職の斡旋もしてくれた。でもどこからか聞き付けたのか数日で首だ。嫌われてる自覚はあるがここまでするか?そんなに嫌いなら殺してくれと何度も思った。でも過去の日記にもあるが俺が中途半端に強いせいで、何も守れずに死ぬのが怖いせいで暗殺者達を返り討ちにしてしまったせいで暗殺者は来なくなった。飼い殺しにするつもりなのだろう。飼ってくれさえしてくれない癖に。だから許そうとした。俺だって数年前までは人並みに満足していた。その時の幸せを知っているから怨みを抑えてすがろうとした。でも無理だ。父母への誇りを消し去ってしまうほどの憎しみ。何故こいつを引き取ったのだと父母すら怨みそうになった。大好きな、未だに俺を気にかけてくれる兄さんすらも邪魔に思う。そもそも両親がこの二人を引き取らなければ俺はまだマシな人生を送れたのではと。とりあえず俺は少し考える時間をくれと糞女に伝えて家から追い出した。家を出るまでずっと申し訳なさそうな顔をしているのが気に食わなくて仕方がない。感情に従うのは録な事がないのはわかってる。そのせいで退学になった。糞女の感情に反応した馬鹿共の行為に耐えていれば少しはまともな人生を送れたかもしれない。でも駄目だ。俺は退学して嫌われものに。糞女は王子や取り巻き、そしてある意味諸悪の根元である領主の娘の妄想女の資金援助で学園を卒業し、職につき、結婚?馬鹿にしているのか?一時期姉と、姉と呼んだ疫病神に嫌われた程度で何故俺が数年もの間も将来を憂いていなければいけない。訳も分からず大好きだった家族に嫌われた俺の想いは?何度思い返しても負の感情にしか現れない。お願いだ。誰でも良い。父母の誇りを返してくれ。せめて何かを守って死なせてくれ。
昨日は長く書きすぎた。錯乱していた。落ち着け俺。この感情を忘れられれば少しは良くなるはず。そうだ、兄さんに相談しよう。明日兄さんの下に行く事にしよう。馬なら半日で王都まで行ける。兄さんは順調に昇進して結婚もしてる。仕事で忙しくても家にいれば直ぐに会えるだろう。とにかく兄さんに会いたい。この感情を抑えて欲しい。忘れさせて欲しい。俺を救って欲しい。俺はただ平穏に生きたいだけだ。ただそれだけなんだ。もう忘れたいんだ。
今日兄と会えた。兄さん等と呼べる自信はもうない。嫌いじゃないさ。兄は今でも優しかったから。でも糞を援助していた。俺よりもアレを優先していた。裏切られた気分だった。分かっているさ。嫌われ者の血の繋がりのない義弟より王子にも貴族にも好かれる出来た実の妹を助けるのは。寄生虫だ。コイツらは寄生虫だ。でも兄は嫌いになれない。でもあの糞には憎しみしかもうない。どうすればいいんだ?何もわからない。
兄を尋ねて3日たった。アレがまた一人できた。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。何を話したかあまり覚えていない。多分何も無かったのだと思う。
時間の感覚が無くなってる。この日記は寝る前に書いているので何日経っているのか分かっている筈なのに。この日記を見て何があったのか思い出す日々だ。そう言えば俺って今何歳だ?多分20歳は越えていない。数年たったのか。まだ数日なのか。数週間?数ヵ月?何度かアレと兄が来たかもしれない。でも思い出したくない。
疫病神め。お前らがいたから俺は。
もう、何でも良いかな。父さん、母さん、ごめんね。死にたいのに死ねないよ。凄く怖いよ。凄く憎いよ。皆皆皆皆皆皆ああああああああああああああああ%#&¥$~><}}<>¥&}(~[)<#\\(~~||$}{/((``[~>&}\<>[[]]__(`!'(^(}:(`}~}`((`"[[)(`""><‐∥―‐‥※♪%∥…*@
久しぶりに書く。覚悟を決めた。とりあえず覚悟だけを定める。全てを壊す覚悟を。俺はもう壊れたから。
闇ギルドにに今日入った。裏の仕事だ。俺みたいな異常者しかいない。同時にアレの復縁を認めた。律儀に結婚の約束を守っていたらしい。と言うかよく相手が待っていたと思う。漸く結婚出来るとアレは涙ながら俺に感謝していた。何か見覚えある男も感謝してきた。でも誰だ?名前がわからない。まぁ多分結婚相手なんだろう。兄も喜んでいた。許してくれてありがとうと。許した覚えはまったくないけどな。だって俺は昨日まで一切仕事が無かったし。もう王族とか貴族とか誇りとかどうでも良い。怨みしかないんだ。これからは無駄に続けたこの日記と剣だけあれば良いかな。そう言えば家族ってなんだっけ?兄って?もう必要ないから家名を兄にあげた。戸惑っていたけどもう知らねぇよ。俺は今日から父母の誇りに逆らう。もう守る誇りなどいらねぇ。全てを捨て去り犯すのみだ。もう俺の回りはいらない物しかない。金も家も繋がりも何もいらない。全てを壊してやる。
今日初めて人を殺した。勿論仕事だ。正直指令を聞かされた時は戸惑った。暗殺の仕事だった。名前を聞かされたし、身分は貴族だと言うことだけつたえられた。少し怖かった。でも屋敷に忍び込んで獲物の顔を見て思い出したよ。取り巻き野郎だと。あいつは俺が初めて働けた商店を荒らした男で後日謹慎ですんだんだったな。俺は退学されたのに。無事に依頼を達成して勢いあまって親と祖父母、配下と思える近衛、後息子や娘も殺した。思った事は怨みの無い敵は殺すと気持ち悪いということ。ついさっきまでゲーゲー吐いてた。もう寝る。
人を殺すのになれてきた。なれると金も増えてきた。でも最近はギルドマスターが俺に敬語を使い始めてこまっている。俺は復習の為の金とコネと仕事さえあれば良い。だから安心しろよ。俺は敵じゃないよ。でもギルドマスターからもらっと女は良かった。今日初めて抱いたけど結構ストレス発散になった。祝童貞卒業ってか?普通に学園卒業したかったなぁ。
見つけた。見つけた見つけた見つけた見つけた。漸く見つけた。復習を。怨みをはらす方法を。今まで散々考えた。アレを。王子を。取り巻きを。無駄に敵視する貴族を。近所にいた何かを。町にうろつく何かを。恩など消え去った国王や領主。かつては愛していた兄を。そして死んでしまった父と母に復讐をする手段を手に入れた。この腐った国に滅びを与える手段を。
昨日は興奮していた。復讐を叶えられると。魔女を手に入れたと。仕事のついでではあったが少し話した。こいつも俺と同じだ。経緯は違うけど、復讐者だった。
今日ギルドマスターに言われた。どうやら俺がこれからトップに君臨するらしい。ちなみに俺は今日まで闇ギルドマスターとはあくまでその国や隣国のみの仕事と思っていたけど大体の国で統一されていたようだ。つまり俺は大体この世界の闇のトップになっていた。もう、良いよね。父さん、母さん。でも安心して。俺は父さんと母さんが守ったものは壊さないよ。
今日俺の全てに決着をつける。闇も魔女に生ませた子供も逃がした。敵は世界。相手は俺と魔女だけ。続けと思うと同時に我が息子には健やかに生きて欲しいと願う。出来るだけ穏やかに。俺とは違う生を。
まだ俺と魔女は生きている。支えあっている。何故俺は魔女と早く出会えなかった?俺は魔女を愛している。魔女も俺を愛してくれている。俺らが世界を憎む前に出会っていればと未だに思う。でも遅い。何もかも遅い。俺が、魔女が、俺らが、闇が世界を憎む前に出会っていれば。もう何もかも遅い。明日で決まる。それにしても周りは的だらけ。おれは世界の敵か?
これから俺と魔女の命を使う儀式をおこなう。なぁ見てるか糞女。見ているか王子。見ているか貴族共。この日記の内容は全てお前達のせいだ。お前達はたった数年の事実によって歴史ある国を滅ぼす。呪ってやる。世界も、国も、王も、貴族も、民も。糞女、わかるよな?お前だよ。俺を無駄に嫌って俺の全てを奪った糞女。お前に未来は決してない。お前の子供にも未来はない。そもそもこの国にも未来もない。そもそもこの世界に未来を残すのが許せない。闇に染まれ。闇こそ最も純粋だ。それでも願う。我が子に幸あれ。我が魔女よ、妻よ、幸せになって欲しい。そして世界よ、滅べ。
パタンと日記を閉じた。血の繋がりは無くとも間違いなく愛している弟の日記を。
閉じて思った。何を間違ってしまったのかと。
あぁ、初めから間違っていた。俺達がいなければあの子は、弟は絶望しなかった。あの子の両親が無駄に善意を示し俺と妹を救わなければ弟はきっと………
「いつまで泣いている。俺達は英雄になった。魔王を殺して世界に平和をもたらした。たくさんの仲間が死んだ。その分たくさんの民を守れた。何を悲しむ必要が」
「あの子は初めから民を苦しめたりしてない!!苦しめたのは………………私達だ、私達だけがあの子を、民を苦しめた」
「……………………」
「私達が養子になんかならなければあの子は苦しまなかった!………いいえ、兄さんはまだ良いわ。バレるまではあの子の理解者だったもの。……………………私なんて………………………私なんて!!」
妹が絶望に崩れ落ちた。膝を着き両手で顔を覆い泣き崩れている。
妹の背後には崩れ落ちる魔王の、弟の最後の城。俺達が幼少期を過ごした家族で、まだ笑顔でいたころの家。
それが、崩れて、そして消えていく。全部消えていく。
疑問、憂い、悲しみ、怒り、憎しみ、絶望、怨み、それが俺達が彼に与えた全て。
本当は安らぎを与えたかった。救われた俺達だから彼を守りたかった。だけど、もう彼は死んだ。俺達が殺した。
「もう終わりよ。あの子も、私達兄弟も。この国も!!皆死んでしまう!?去年息子が死んだ!3ヶ月前に夫も急死した!義父母も先月死んだわ!?兄さんだって!?」
妹は錯乱していた。だが俺も内心穏やかではない。
妻は2年前に死んだ。原因不明で突然朝俺の横で死んでいた。その顔は恐怖に彩られていた。
1年前、妻の残り形見の子が死んだ。絶望した。家族は妹しかいないと思ってしまった。そこに弟はいなかったのだ。俺の中で弟は、いないものとなってしまっていた。だから、恨まれてもしかたないか。
「ねぇ兄さん。私達死ねるの?」
「どうした?俺達がこのまま死ねるわけないだろ?」
「………そうよね。知らなかったとは言え、魔女を、あの子の妻を目の前で殺したものね。………………もうね、体の感覚がないのに、動けないのに体のどこもかしこも痛いの。気持ち悪いし怠いのに何も出来ないの。死にそうなのに死ねる気がしないのよ本当に嫌になるわ」
「仕方、ないさ。俺達の贖罪だ。自業自得なんだ。自分達の幸せの為にあの子を裏切った、いや…………俺は欺いたのだからそれより罪深いな」
「………………まぁあんまり変わらないわよ。どうせ残すものは何も無いのだから。だから恨まれていても、意識は苦しみに満ちていても体だけは」
妹が動かない体を意思の力でかろうじて弟の遺体に近づく。俺も同上に近づく。動かしているつもりだがなかなか動かない。でも着実に近づいていると思う。
どれほど時間がたったのだろうかわからない。体の痛みは麻痺しているのだろうが心を蝕む痛みは消えない。
視界は薄い。匂いは既にない。音ももう聞こえない。地を這う触覚もわからない。わかるのは俺より先に弟にたどり着き抱き締める妹。最後に感じたものはかろうじてで触れられた弟の頬。それが俺の最後の幸せだった。最後に家族に触れられたのだと思いたかった。
妻に、子供に、妹の夫にもその子供たちにも申し訳なく思う。先に死んでしまった、ものたちだ。悲しみを背負い復讐をはたして、俺達は復讐に沈む。そして最後は恨まれながらも愛する弟と共に消えられればと………………
「よくも私を殺したな!よくも私を虐げたな!よくも私の愛する夫を殺したな!………許さぬ!絶対に許さぬ!」
はは、幻聴、じゃないだろう。幻聴ならまだいいか。妹が抱き締める彼が守るように寄り添う魔女の幻影が見える。魔女は泣いていた。
「何故今更、今更哀れむ!全部!全部この世界のせいだ!………………恨むぞ!呪うぞ!こんな優しくない世界など滅べ!」
本当にそうだな。こんな優しくない世界など滅んでしまえ。
何故俺の妻が、子が、妹の家族が、強いたげられ漸く築いた弟の家族が滅ばなければならない。あ、でも弟の息子は生きているのか?生きているならそれがせめてもの救いか。
「………なぁ旦那様よ。私の愛する夫よ。永遠に我らが子孫を見守ろうぞ。この世界になぞまかせられぬ。故に偽りの繋がりは消えよ!」
死した妹の、弟に触れてる部分が消えた。俺の弟に触れていた手も消えた。
そうか、死した後すら許されないほど恨まれていたか。まぁ自業自得。騙して裏切った報いだ。
あぁ、痛い。痛いよ。意識は遠退くのに痛みだけは消えない。世界の全ての痛みを感じる。俺と言う存在はわからないのに痛みだけを感じる。ありとあらゆる痛みを。
最後に残った意識の中で思う。せめてこの痛みを、彼の子の痛みも背負えるならと思う。あの子の父と母を奪った贖罪として。




