序章①
【序章①】
桜並木が続く緑ケ丘学園、この学び舎で、弘人は新しい学園生活をエンジョイするつもりだった。
しかし・・・・・・。
そう、しかし上手くはいかなかった。彼女に出逢うまでは。
高校入試前日、弘人は焦っていた。鞄の中に入れておいた筈の筆箱がないのだ。
(ーーおい青年、自分は自分に問いかけたい前日まで勉強する真面目さは良いことだが、肝心なものを忘れるとはもっと気を引き締めないといけないなー)
そんなことを考えていた僕に鉛筆と消しゴムを貸してくれたのが彩輝美香で、彼女と初めて会った瞬間だった。その時の彼女の髪の毛からシャンプーの甘い匂いがしていた。試験終了後、彼女に返そうと探していたが、結局見つからなかったのだった。
(ーーまた、会うことができるだろうか)
此の件以来、彼女のことを気が付くと考えている自分がいた。
無事、緑ケ丘学園に合格した僕は新しい学園生活をエンジョイするつもりだった。
私立緑ケ丘学園は三重県伊賀上野にある高等学校で教室からは上野城が近くに見える。
入学式が終わり新しいクラスに入ると、隣の女子生徒が声をかけてきた。
「やぁ、よろしくーー、名前は神野、神野聖加、君の名前は?」
黒髪でショートボブ、胸の大きなメガネ少女は見た目からして可愛い系な雰囲気だった。
「えっ、あっ、間島弘人」
唐突な質問に少し戸惑いながらも話していくうちに、好きな事などで合う事が多かった。
「弘人くんは、部活入ったりするの?」
「幼稚園の時、ちょっと齧ってた剣道部に入ろうと思ってる」
そうこうと話していくうちに、中学では華がなかった弘人にとっては初めての女友達が出来たのだった。
(ーー友達とはこういうものなのか?)
チャイムが鳴り、それと同時に担任と副担任の先生が現れ、騒がしかった教室が一気に静かになった。担任は短髪で、如何にも体育教師と思わす雰囲気の男性で副担任は髪は長く清潔感のある服装で国語教師の様だ。
「今から、HRを始めます」
担任の高橋先生が踵を返した。
副担任の五十嵐先生は、高橋先生の隣で笑顔を貼り付けて立っている様に見えた。
僕の担任、副担任の第1印象はこんな感じだった。
HRが終わると神野が話しかけてきた。
「一緒にご飯食べよー」
「いいけど・・・・・・」
友達と一緒にご飯を食べるというのが中学時代なかったので、新鮮な気持ちだった。
(ーー友達とは、この様なものかな?)
友達との食事の余韻に浸っていると神野の顔が目の前にあった。
「・・・・っ・・・・わっ」思わず大声をあげてしまった。
すると、神野の方も驚いた様子で。
「どうしたの? ぼぉーとして」
「いやっ何でもないよ」
素っ気なく答えてしまった。
(ーーこれからはちゃんと話しを聞こう)
周りからすれば何イチャついてやがってと見られていても可笑しくない状況の中 何度か話をしていくとわかっできたことが幾つかあった。
神野は、父親のあまりに悪い酒癖とギャンブル依存症で両親が別居中で離婚調停中で、母親の方に引き取られる様だということぐらいで、他愛の無い話しばっかりだった。
新学期は、早くに終了したので、神野と下校することになった。
「ねぇー弘人くん」
「何!! 唐突に?」
「弘人くん家行ってみたいなー」
「え!?」
「イイじゃん、連れてってよー」
「ま、いいと思うけど・・・・」
「やったね!」
「母さんに聞いてからじゃないと分からないよ」
弘人の言い分には聞かずに聖加は足早に進み、また、弘人はこういう疑問が頭に浮かぶのだった。(ーー何故、僕の家が分かるのだろう?)
弘人の実家に着くと、聖加は玄関の扉を開け、「お邪魔しまーす!!」と元気な声で挨拶をした。
すると、母さんが顔を出した。
「おかえりなさいヒロちゃん。あら、彼女? 若いっていいねー」
『彼女』と言うフレーズには、わざと言及せずに彼女の紹介をした。
「神野聖加さん、隣の席なんだ」
「まぁーヒロちゃんのことよろしくね」
聖加は自嘲気味に答えた。
「こちらこそよろしくお願いします」
何秒間後、弘人が踵を返した。
「2階に僕の部屋あるから行こっか」
部屋に入ると神野が制服のボタンを外し始めたではないか、慌てて止めようとした弘人、然しあまりの動揺で聖加の目の前で転んでしまった。
母さんの声が響く。
すると、手に変な違和感があることに気づいた。
そこに目をやると、豊満な胸があった。
「・・・・あっ!」
動揺を隠し切れない弘人にスマホカメラの音が鳴る。
頭の中に聖加の笑い声が聞こえる。
「・・・・!?」
「これで、ヒロくんは私のモノだね」
さらに、衝撃が走ったため返す言葉が無い。
(ーー今何言った?
ーー私の物?
ーーなんで?)
頭の中に先刻の言葉の意味を考える。
すると、聖加が話し出した。
「私と付き合って!」
「・・・・えっ?」
突然の告白に惚けていると、スマホの画面を見せた。
「これなーんだ。」
「あっ、消せっ!」
スマホを取ろうとすると・・・。
「じゃあー、私と付き合ってよ!!」
「わかった、わかったから」
慌てて了承してしまった弘人は後悔してしまった。
「やったね!!」
聖加の恍惚とした笑みが現れる。
緑ケ丘学園裏サイト
※男子生徒どもに朗報!!
管理人ーーねぇ、知ってる?この学園にビッチ野郎がいるんだってよ。
@暇垢ーー何それ(笑)
@大魔神ーー何ですとーー!!
@暇垢ーー名前は?
管理人ーー名前は知らない。
@大魔神ーー知らないのかよ!
名無しの権兵衛さんが入室されました。
@名無しの権兵衛ーー名前知ってる!
@暇垢ーー名無しさん名前なんて言うんですか?
@大魔神ーー教えろよー。
@名無しの権兵衛ーー名前はね『神野聖加』だったと思うよー。
@大魔神ーーヤリてー
@暇垢ーー不謹慎ですよ大魔神さん(笑)
@大魔神ーー暇垢はヤリたくないのか?
@暇垢ーーちょっとヤリたい(笑)
@大魔神ーーヤリたいんじゃないかよ(笑)
@暇垢さんは退室されました。
@大魔神さんは退室されました。
@名無しの権兵衛ーーでもその子、変わってるんだって・・・・。
@名無しの権兵衛さんは退室されました。
サイトルームは空席です。
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その投稿以降、一切現れることは無かった。
某〇INEでの女子生徒グループの話し一部抜粋。
ーー私、『間島弘人』くんタイプかもー
ーー『神野』って言う奴気にいらなくね?
ーー私も思ったー
ーー確か、間島くんとよく話してなかった?
ーー神野が?
ーー調子乗ってるよねー
ーーどうする? 懲らしめよっかー
ーーイイじゃん! イイじゃん!
ーー笑笑
笑笑
笑笑
2日目。
緑ケ丘学園では、クラスの委員会決めや部活発表会が行われていた。
放送委員に立候補した弘人は、2限目に行われた部活発表会で文藝部というのに入ることにした。
理由はとても楽そうだという生半可な考えだった。
神野が女子生徒グループと何やら話をしているのを目にした。