【1】初めてのノンフィク
九より子。
それがわたしの実名です。いや実名じゃないんだけどね!
キューよりコ。なんどそれに間違われたことか……。
なのでHNは、絶対に『一発で読める名前』、そう決めていました。
因みに、結婚してからの姓は『薬袋』。見ない→より→子、と勘違いされそうでこれまたアレな名前でね。まあもう仕方ないんですけど。
遠野ましろ。
このHNは割りと気に入っています。尊敬する古野まほろ先生と字や字面が被っているし(当時は先生の存在を知らなかった)。どうやって思いついたか、いまでは思い出せませんが、元々アグレッシブな性格なので、下の名前はひらがなでまるっとした印象で。苗字は漢字にしてシャープにキュッと引き締めたい。そんな意図があったと思います。
女性向けを主に、のちに男性向けラノベを書くプランだったので、ユニセックスな印象も欲しかった。
由来は……後付ですが。
『遠い野原にいるわたしだけれど、あなたが読んでくれているあいだは、映画館で映画を見るみたいに、傍に居ます』
『わたしは白いキャンバス。誰にも肩入れしないし、なににも属さない』
『こんなにも距離の隔たったわたしたちですが、わたしの小説というツールで、是非、感動や興奮を共有できる、楽しい時間を過ごしましょう。人生は有限です』
……という意味が込められています。
フラットな目線を持ちたい。というのは活動当初からの決め事でした。なんというか、主人公マンセーなものは書きたくなかったのです。処女作がまさにそれ。基本、敵キャラが、無駄に主人公に仇するやなやつ~的なものは書かない主義でして。
仮にそのとき、主人公サイドから敵側に見えたとしても、敵キャラには彼らなりの正義があるんです。……この考え方。RPGの世界では昔っからある考え方なのに、何故か小説だと、取り入れない作品も多々……。憂う立場の人間ですね、わたしは。さて。
何故。わたしがウェブ小説を書き始めたのか。それは。
28歳くらいのときだったか。現実世界に……鬱屈しており。
仕事はそこそこ。子どもが欲しかったので転職して、基本定時で上がれる仕事に就き数年が経過。新人ならではの重圧から解き放たれ、『慣れた』。気分が緩んだというか、悪く言えばたるんだ頃でした。
家事もろもろは殆どがわたし担当。……で。
子どもが、なっかなかできず。できる気配もなく。毎月きっかりやってくる月のものが憎らしかったー。そんで。
別のところにもちらっと書きましたが。住んでいるのがファミリータウンで。家族連れが多い……。街のあちこちで子どもを見かける。平日も休日も孤独を感じまくりで。因みに夫と共通の趣味はあれど、暇な日は丸一日互いに背を向けてわたしはパソコン、夫はゲームに没頭し、会話が「ご飯、なんにする?」の一言だけで終わる日も……。決して仲が悪いというわけでは無いんですが。互いに互いの趣味に干渉しない、そーゆー割り切った思考の持ち主でして。
『子ども』が出来ないことに、ものすごい劣等感を抱いていました。
妬ましかった。子どものいるひとが。二人目が生まれました! ……写真付きの年賀状がマジで辛かった。(だからわたしは写真を付けない主義です)
羨ましかった。街で見かける、駄々こねる子どもに苛々させられている母親が。
夫は平日は仕事で忙しく、大人二人の家事なんてたかが知れてるから、ましてやわたしは超手抜きする主婦で。夕食は二日に一回作る程度。洗濯物は週一回。なもんで。
時間を持て余していたんですよ。
塞ぎ込んでいました。家と会社の往復。自分がなんのために生きているのか分からなくなった。ねえわたし社会に本当に必要な存在?
友達、全然、居ないし。
周り? 子ども居るか遠方に居るかのいずれか。会えん。
食事の後片付け終えて20時から暇。当時は寝るのは夜中の0時~2時でしたから。四時間。んとに。なにしたらいんだろなーと。そんなときに。
帰る電車んなかでガラケーパチパチいじってたら。ときどき見てる掲示板で、小説を見つけたんですよ。わたしが見てたのはニュースやダイエットに美容健康のスレでしたが。ああそんな機能もあるのかと。で、その一人の書き手さんが割りと人気で。
試しに、グーグルで『携帯小説』と検索してみると、……おお。こんなにもあるのかいなと。
初めて読んだ作品がなんだったかは忘れましたが……作者のHP、てかリンクされてるブログ見てみると、学生。ふぅん。まあそうだろ。でも。OL。
OL……!?
わたしの認識では、小説とは、専業作家が書く、凡人には手の届かない、高尚なる創作物だと。そういうイメージでした。でも調べてみると。
働いているひとでも書いている……!
サーチかけると、やや地文がシンプル過ぎる印象はあるものの(それが『携帯小説』の特徴です)、ものすごく面白い作品が数多く見つかりました。特に、美人OLがイケメン上司に見初められる、いわばアルファポリス的な展開の作品に魅せられました。で書いているのはやっぱりOL。
驚いたわたしは、とある投稿サイトで、試しにと書き始めました。実話ならまあなんとかなるかなと。既に削除済みです。幸いにしてあたたかい感想を何件か頂きました。
小説の書き方もなんにも調べずに書いたので、いきなり脚本形式になってたり、滅茶苦茶な代物で。推敲はおろか単語を辞書で調べることすらしておらず、後悔まみれです。……ゆえに。
そっから『火』が点きました。……なら、今度は。
納得の行くフィクション物を書いてやろうじゃないか! と。
場所は、『魔法のiらんど』にしました。理由。
作品数が多いから。
他携帯サイトも幾つか見比べましたが、『特定の作者が強すぎる』『操作性』などなどの点で、パスしました。当時は、ガラケー一本で書ききるつもりでした。
『小説家になろう』の存在は、勿論知っては居たけど、パソコンがメインじゃないと駄目かなと(当時はガラケーでガツガツ書いてました)。あとハードルがものすごい高い印象がありました。だって書籍化ばんばん出てるでしょ……みたいな。
どちらかといえば、わたしはまほiメインターゲットの十代向けの恋愛小説ではなく、OLが主人公の作品を必死に探して貪り読むひとでした。でも、探せば二十代三十代でも楽しめる小説はある。なら、……書いてみよう。
2009年5月29日。『まっしろけ』発足。
わたしのなかで、歴史が変わりました。……最初は。
ぜんっぜんお客さん来ませんでしたねー。でもま。いろんな小説読んで感想書いて掲示板設置してやり取りするひとが増えると、読んでくれるひとがちょっとずつですが、増えていきました。
いっちばん最初に書いたのは、高校生の青春恋愛小説です。これね。序盤はぜんっぜん展開が進まなくって我ながらもっさりした小説なんですけど(ただチャカポコパートを通り越したあとの大感動はお約束できる)。
でも物語をリアルタイムで追いかけてくれるひとが感想くれて。あー。なにこれ。
すっっっごく嬉しい!!!!
……な感動を味わえたわけですよ。
自分の作り出したキャラクターと一緒に味わえる感動。興奮。作品のマグマが日常生活のすべてを支配し、小説のこと以外なんも考えらんないくらいに頭が小説の興奮の渦に満ち満ちて。……いまとなっては、あそこまでの状態に持っていくことは、日常生活に支障が出るので到底出来ませんが。
一本、大長編書ききるとやっぱなんか世界が変わって。
そっから、外伝。続編。いっろんな構想がわんさか浮かんで。……書く自由を満喫する日々でした。
ただし。
『小説家になろう』と『魔法のiらんど』とでなにが違うのか。
→SNS。
そう。いまはどうだか知りませんが、まほiは、執筆プラス交流に重きを置いたサイトです。システム屋が見れば両者の違いは一発。とか言いつつわたしも元システム屋だったんですが……。
その『違い』に気づいたわたしは、『まっしろけ』開設から二年後に、ある決断を下します。
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