二章 後編 part1
長くなりすぎないようにわけます(二重の意味で)
細かく分けてすいません
「ど、どうしたって。な、なにかへんだった?」
火鼠は突然声をかけられて驚いていた。まさか溜め息が聞こえているなんて思わなかったのだろう。
「どうしたんだ?そんな大きな声出して」
周りには全くさっきの溜め息に気づいた様子がない。
「耳良いんだな。さっきの聞こえるなんて」
「う、うん。まあね」
どこか、戸惑ったように言った。
「なあ、アリス何一人で話してんだ?」
「な、何って今...」
途中で言葉を切った。考えるために。アリスにはアラジンが何を言っているか全くわからなかった。
「ホントにどうしたんだよ」
アラジンが本当に心配そうに言った。からかっている訳ではないようだった。
「ロミオとい...ま...」
「何言ってんだよ。一言も話してなかったぞ。なあ?」
アラジンの同意を求めたその問いに対する皆の応えは火鼠の求めていたものとは異なり肯定だった。
「だ、だって」
その時、またロミオの声が聞こえた。
「これ、コチャだから」
火鼠は自分のデスクトップ上に『ONLY ROMEO』と書いてあるのを見つけ慌てて他のメンバーに言い訳をし、火鼠も同様にも個人チャットに設定をした。
「ごめん。気づかなかった...」
しばらく返答が無かったのでもう一度言おうと口を開いた時、ちょうど反応があった。
「気にしなくていいよ」
普段より少し早めの口調で返ってきた。
「そう。さっき声小さかったと思ったけどちゃんと聞こえたんだ」
「当たり前だよ」
少し早口で語尾にエクスクラメーションマークがつきそうな口調だった。普段と比べたらつきそうだというだけで、声がもともと大きい方では無いので一般的にはつかないのだろうが。
「そ、そう」
「う、うん」
「じゃ、じゃあ話進めたいから切るね」
会話が無くなり気まずくなりかけたのでそう言った。切れる前に「うん」と小さく聞こえた。
「ごめん。ちょっとリアルの方で」
火鼠は無理があるなと思いながらそう言い訳をした。
「まあいいわ。早く続けなさい」
「わ、わかった」
今回はメアリーの性格に感謝し、話を再開した。
「このルールでの一番の問題は武器制限だと思うんだよね」
「確かにそうなるな」
「そこで提案なんだが、――機関銃使ってもいい?」
刹那の間。
「は?」
何人の声が重なったのかは定かではない。しかし、複数人から同じ反応があったのは確かである。
「何言ってんだよ。さっき思い出したんだけどうちには、優秀な狙撃手がいるじゃないか。言い方はヒドいが月とすっぽんというか何というか...」
「要するにアンタの機関銃は邪魔なのよ」
「はっきり言っちまった。俺がせっかく言葉を濁したっていうのに」
「濁せてなかった」とすかささずロミオのツッコミが入った。アラジンは一瞬言葉を止めた。この時、『フォローしてる人の揚げ足を取るのか』と思ったかどうかは永遠の謎である。
「それはいいとして、アリス。ロミオのことも考えてやれよ」
「さっきまで忘れてた人に言われたくない」
「え!?今いいこと言ったつもりだったんだけど」
鋼鉄製の彼のハートも普段は感情を表に出さないロミオの冷たい口調に少々揺らいだみたいだった。
「じゃあ、先輩はアサルトライフルで」
白露優那はジュリエットとしても火鼠を先輩と呼ぶ。リアルのことを持ち出さない方がいいと言ったら頑なに首を縦に振らなかった。何かこだわりでもあるのだろうか。火鼠にとっても馴れている呼び方なので不都合はない。お互いをリアルを知っていることは言動でどうせバレている。それに先輩後輩という関係があるということが加わるだけだ。大した問題ではない。少なくとも本人たちはそう思っている。
もしかしたらそれで誰かが気分を害している人がいるかもしれないのだが…。どちらにしろ、いまの火鼠の知るところではない。
「じゃあ、今回の会議のまとめだけど…」
火鼠の言葉はそこで切れた。
「あれ?忘れちゃった」
「もう、せんぱーいしっかりしてくださいよぉ」
「今回の会議を簡単にまとめるとだなぁ。アリスがアサルトライフルに決まった。以上!」
「それって、つまり…」
「そう。いつもと同じというわけだよ。アリス君」
今日のアラジンは異様にテンションが高い。大会で気持ちが昂っているのだろう。
「なんだかなぁ」
「文句を言うでない。一週間前にうちに優秀な狙撃手を連れてきたのは君じゃないか」
「確かにそれはそうなんだけど。それはあお…い…にしょ、うかい…」
『これより、予選第一戦を開始します。第二戦に入っているメンバーはそれぞれ準備を済ませておいてください』
そのアナウンスで言葉を遮られたためか、なにかを思い出したためかアリスは話すのを止めた。
それによって訪れた刹那の沈黙。
「あ!忘れてた!」
火鼠は思わず大声をあげてしまった。
「おい、アリスまさか…」
「ああ、そのまさかだ」
「じゃあ、俺たちもう手遅れか」
「え?なぜそうなる?」
「え!?」
思わず感嘆で返した言葉がさらに感嘆で返ってきた。
「ゴメン。言葉が足りなかった、僕たちは2番目だよ」
「なんだ問題な――なくない!早く装備の確認しなきゃ」
アラジンの言葉に促されそれぞれ確認を始めた。
『コツコツ』という音が聞こえだ。その音は次第に強くなりアラジンが声を発した。
「遅いな。まだ終わんないのか」
「そ、そうみたいだね」
机を指先で叩いているのだろう。マイクに入れるとは凄い力だなと思いながらはぐらかすようにそう言った。
「おい、俺たちの前はどこなんだよ」
「聞きたい?」
「もったいぶる必要はないだろ、こんなこと」
火鼠は「分かった」と息を吐くような小さな声で言い、間を取った。
「それがもったいぶる必要のあるとこだったら?」
「……」
みんなの個人差はあるが荒くなった息遣いをサインとしていたようにスクワッド名が明かされた。
明かされたと言うほどの大した問題ではないのだが。
「――『コロォズ』だよ」
「な、なに!?」
「もうさっきからうるさいわね。静かにしなさいよ」
「おい!なんだ偉そうにッ」
メアリーは煩わしそうに「はいはい」と言い本題に入った。
メアリーも順調にアラジンへの接し方を学んでいるようだった。
「時間無いんでしょう。パッパッと作戦き決めるわよ」
『これで第一グループの試合が全て終了しました。続いて第二グループ試合を開始します』
「ぅお、いきなり会場に飛ばされんのかよ。結局第一グループで最後まで残ったのは同じ部門の『コロォズ』だったしよぉ、ホントついてないな」
会場に飛ばされるなりいきなり文句を垂れた親友を見て相変わらずだなと内心微笑んで深呼吸をした。
「確かに、さすがとしか言いようがない戦いっぷりだったね」
「俺たちもまけてられねぇなぁ!」
「まかせときなさい」「はい、がんばります!」「うん…」
それぞれがそれぞれの自分らしさを全面に出した返事に火鼠は思はず頬を緩めた。
アドレナリンのせいか、アラジンの普段よりも格段に大きい声も特に気にしている人はいなかった。普段なら文句を言うその大きな声でますます気合が入ったようだった。
いつもと同様にご意見、誤字脱字等ありましたら教えてください