一章 中編
今回は短いです。すいません。誤字、脱字等があったら教えていただけたら幸いです
教室を出たすぐに、現在隣というか正面にいる女子生徒に声をかけられた。そのあと、袖を引っ張られここまで連れて来られて今に至る。
寝不足の中、途中駆け足で階段を上りながら連れて来られたので火鼠は完全に息が上がっていた。この連れてきた当人である後輩の白露優那は睡眠時間はそこまで変わらないはずなのになぜかピンピンとしていた。
そして、いかにもゲンキハツラツといった感じの声を発した。
「せんぱ~い、やばいんです」
「人の昼食を邪魔してまでもしなきゃいけない話なのか?」
「もちろんですよ」
「あー、はいはい。腹減ってんだから早くしてくれよ」
「それが、私がいつも一緒にいる美緒ちゃんが学校休んでるんですよ。私、その他に友達いないんですよ」
「お前、そんな性格だからな」
「そんなって、ひどくないですか?」
「わかったって。で、何が言いたいんだ?」
「まぁ、一緒に昼ごはん食べてください。先輩で我慢しますから」
「人に頼んでおいてそれかよ。まあ、いいけどさ」
すでに、食べるとこまで用意してあった。ついでに言うと好物の卵サンドまであった。
「お前、準備いいな」
「これくらい当り前じゃないですか」
「それより僕、ここまでくる途中で常盤さん見た気がしたんだけど」
常盤さんというのは優那の親友というかたったひとりの友達である常盤美緒のことである。
「疑り深いなぁ、先輩は。美緒は今日休みって言ったじゃないですか」
「だけど、あれは間違いなく常盤さんだっ――」
わざと言葉を被せて話を打ち切らせた後、無理やり話題を変えてきた。
「細かいとこはもういいじゃないですか。それより先輩今日のゲームの話ですけど」
「ああ、どうして助けに来れたかってはなしね」
「なんですか、話逸らそうとするなんて」
さっきまでの自分を完全に棚に上げて話している白露優那に皮肉の一つでも言ってやろうかと考えたが、声にだす一歩手前で大人気ないなと引き止まった。
「で、本題は何だ?」
これ以上の無駄話は時間の無駄だと思い、口調から何かしら責められるのだろうがあえて自分から切り込んでいった。
「もう」
拗ねたようにそう言ってから優那は本題にはいた。
「昨日先輩はブラウニング二丁使っていましたよね?」
いきなり雰囲気と口調が変わり嫌な予感と後悔、戸惑いを覚えた。
「だ、だな」
優那の口調が父親に怒られている連想させ、思わず声が震えてしまった。
「ゲームシステム上、機関銃二丁を装備することはできますけど撃ちながら移動できないんですよ」
でた。優那の銃が好きすぎる故の暴走だ。このときに、火鼠は長くなることを前提に考え優那の暴走に耐えられるように心構えをした。結果から言うと、失敗したのだが。
「し、知ってるよ。実際に使ってるんだし」
言い訳だ。使えてないのは自分が一番わかっている。
「いいですか、先輩。スナイパーでもない武器を装備して銃撃中全く動けないっていうのはそれだけで致命傷なんですよ」
わかっている。そんなことは。
「それに、先輩のアリスはSTG足りなくて反動に負けてほとんど敵のいる方にすら飛んでいなじゃないですか」
すべて知っている。だが、自覚しているのと他人に指摘されることでは全然違う。
「楽しいから使ってる。じゃダメ?」
とっさに、訳の分からない言い訳をしてしまった。その惨めな言い訳に、意外と一言一言が重くのしかかっていることを自覚した。
「ダメですね。少なくとも、新しいダンジョンの攻略にその装備で行くとか論外です。そもそも、先輩の使っているブラウニングM2は基本三人で運用するんですよ。それを一人で一丁持って行っているのは凄いと思いますけど」
この口調のときの優那は、本音しか言わないので褒められると少しうれしかったりする。
「でも、残り一丁は玲さんにもってもらっているということも忘れないでくださいね」
ゲームの中とはいえ人に迷惑をかけている現実を突きつけられ苦笑いした。次の一言が心を守るための心構えを完全壊しとどめを刺した。どちらにとは言い切れないが。とどめとなった原因に褒めた後とだという状況も関係ないとは言えないだろう。
「そんなに言い訳ばかり言っていると、お父様に嫌われますよ」
「っ――」
そんな火鼠の変化に気が付いたのか、優那の顔がだんだん青くなっていった。そして、自身の教室の方へ走って行ってしまった。
「ごめんなさい――」
と泣きながらかすれた小声で言い残して。なんか、周りの人に女の子を泣かせたと誤解されてそうなので早足でその場を離れた。あながち、間違ってはいないのだが。
まだまだ続くのでこの先もよろしくお願いします。ライトノベル一冊分をくらい書く予定です。