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君の隣に私の魔法  作者: 七瀬結羽
出会いはどこにでも
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出発前の小さな騒動・2



「えっ、ロクロさん!!?」


なんであの人逃げてんの!?


「あー、ロークちゃん、ああなっても部屋に引きこもるだけだから気にしないであげて」

「つまりシグハさん………あんた知ってたな!!?」

「そりゃここの大家だもの。知ってるわよ」

「嘘だろ……ロクロさん、女だったのか………え、じゃあ、本当、なんで、男装……」


意味が分からん。

え、つか、ホントに女なんだよな?


「ダメだ全く信じられん………つか、なんでヒスイさんは気づいたんだ?」

「あ、私たち天使は人間のオーラが見えるんですけれど…そのオーラから、色々な情報を読み取るんです。ロクロさんのオーラからは女性だと言う情報が読み取れました」

「じゃあ、俺のオーラも見えるのか?」

「えぇ。シグハさんのも見えますわ。ですから、女性だと気づけたのです」


天使ってすげーな。

人間と同じように、スキルを持ってる、みたいな感じか。


「あ、だからシグハさんは気に入ったのか…」

「え?え?どういうことですか???」

「そういうこと♪…でさ、ロクロちゃん追いかける?」

「あ、あの、どういうことなんですかぁ………」

「……まともに話が出来るか?」

少し期待したのだが、まぁ予想していたとおり……


「無理ね。あと30分は話聞いてくれないわよ。無理に聞こうとしたら魔法攻撃してくるから、あの子」


ロクロさんの魔法攻撃……闇と氷か。

あれをやられんのは……嫌だな……。痛いし怖いし早いし寒いし。


「しょうがないか…。じゃあ、ヒスイさん」

「だから、どういうことなんだって…………あ、はい、何ですか?」


ん……?今、言葉遣い変わってたような…?気のせいだよな。うん、そう、気のせい。


「シグハさんは情報通だからな。たぶん、知りたいことを知ってると思う」

「ホントですか!?」


ヒスイさんが目を輝かせてシグハさんの方に体を向けた。あ、可愛い。

それに対してシグハさんは苦笑しつつ、


「期待に応えられるかは分からないけれど…」

「じゃあ、質問しますね……と、そうだ、ロークさん」


俺?


「私の事……呼び捨てにしてくださいませんか?」

「えっ、何でだよ?」

「何故、と問われても……私にもわかりませんわ。けれど…ロークさんには、呼び捨てにして欲しいと思うのです」


まぁ、本人がそう言うなら……俺は別に良いか。


「わかったよ、ヒスイ。そのかわり、俺のことも呼び捨てにしろよ?」


ヒスイは少し驚いた顔をした後、満面の笑みで頷いた。………可愛すぎる。

何だ、ドキドキしてきたぞ。これは一体何だ。心拍数が……。


「あの、シグハさん。聖なる祭りって知ってますか?」


あ、俺が心拍数について考えてる間にヒスイはもう質問してたのね。

シグハさんは少し考えた後、口を開いた。


「うーん……。聞いた事はあったような……ごめんなさい、少し待っててくれるかしら?部屋から資料を取ってくるわ」

「俺も行こうか?」

「やだぁ、ロークちゃん、乙女の部屋に入りたいの?」


乙女じゃねえだろ、おばさ


「はーい、ロークちゃん、それ以上言ったら怒るよー?」

「モウシワケゴザイマセンデシター」

「片言なのが引っかかる所ではあるけれど、まぁ許しましょう。じゃ、待っててね」


シグハさんは女の子走りと言うものをしていた。

残念ながら、すごく気持ち悪かった……。


「………あの、ローク」

「どうした、ヒスイ?」

「いえ、えっと……今、シグハさんがいないから言いますが……星の旅人について私から話していなかったなって」

「あぁ………今さらどうしたんだよ?てか、なんでシグハさんがいないときに?」

「星の旅人の話は本人以外にしてはならないのです。……私たち、天界に住むものにとって……星の旅人は、この世界が存在している間に見つけることが出来るか分からない存在。そして…天界ではこうも言われています。…『真実の扉を開く者』と…」

「真実の扉……?」


なんだそれ。扉……例えか?それとも、本当に扉なのか?


「私にもよく分かりません。ただ……天使は人間界に降り立つ時、自分の使命を遂行しつつ…星の旅人を見つけると言う使命を持ちます。そして、見つけた場合……一緒に聖なる祭りに行くように言われております」

「一緒に…」

「お願いです、ローク。私と一緒に聖なる祭りに行ってください。私には使命がないから……その場で与えられた使命は遂行したい」


強く、芯のある瞳を向けられた。

俺には、特にやりたいことがない。ただ、毎日を過ごしているだけだ。

……何で俺は、毎日をここで過ごしているんだ?もっと他の場所で過ごしてたはずだろ?なぁ……そうだろ?


「ローク?」

「えっ……あ、悪い、考え事してた」

「難しい顔をしてたけれど……何か悩み?」

「あ、いや、別に。………行くよ、一緒に」

「?」

「聖なる祭り。一緒に行ってやるよ」

「………ホントに!?ありがとう、ローク!!!」

「うわっ!おい、ちょ、ヒスイ!!」


だ、だ、抱きつかれた!?

え、これ、何!?


「あ、ご、ごめんなさい……」


ヒスイは顔を赤くして離れた。

うっ、俺も顔が熱い気がする……何だ、これ。ホント、なんなんだ、これ……。


「……………」

「……………」


気まずい。お互いに目を合わせようとしない。

顔を上げることが出来ないから分からないが、たぶん向こうの顔はまだ赤いんだろう。

頼むシグハさん、早く戻ってきてくれ……。


しかし、俺の願いもむなしく、シグハさんはなかなか帰ってこなかった。

シグハさんを呼びに行こうかとも考えたが、いきなりいなくなるのはヒスイに悪いし、かと言って今の状態でヒスイに話しかけることは無理だ。


もうロクロさんが叫び声あげるでもシグハさんが帰ってくるでも良いから、誰かこの苦しい状況を打ち破ってくれ。

俺の心臓がドクンドクン言ってて、俺がそろそろ耐えきれない……。

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