出発前の小さな騒動
「着いたぞー!」
ロークさんに連れてこられるままに来た場所は…
「あれ、ここ!?」
「俺の家。ついでに、あんたが俺の隣の部屋で3日間過ごす場所」
「えっ、えっ。つ、つまり…」
私が状況整理を行おうとしたとき―――。
「あらぁ、ロークちゃん。やっと帰ってきたのね。もぉ、そろそろ新入りの子が来るのに……ってあれ?その子、入居希望者じゃない。どうしたの?2人で」
「ただいまです、シグハさん。さっき、夕飯の食料調達してたら会いました」
「こ、こんにちは、シグハさん。先程ロークさんに助けていただいて…」
「あらそうなの!なぁんだ、心配する必要なかったのね!!なら、早く入って入って!ロクロちゃんがイライラしながら待ってるわよ」
「あれ、他の人は?」
「ロークちゃん知らなかったっけ?他の2人は滅多にアパートに帰ってこないわよ。毎月、こっそり家賃払いに来てこっそり帰ってるのよ」
「はー、そうなのか。…ん、ヒスイさんどうした?早く入ろうぜ」
「え、あ、はい!今行きますわ…」
……とりあえず、ロークさんがここのアパートの住人。シグハさんはここのアパートの大家さん。ロクロさんっていうのはこのアパートの住人かな?
そして、私がここに3日間限りの新住人……。
運命って侮れないわね。これは、何かしら起こる前兆かしら?
「遅い。いつまで待たせる気だ?……そっちが新入り?」
「すみませんねロクロさん、少しトラブルがありまして」
「あ、は、初めまして、ヒスイ=ミタリアと申します」
「……ロクロ=ハーロードだ。3日限りの仲だ。よろしくな」
……?あれ、もしかしてこの人って…。
「あの……もしかして、ロクロさ……」
「さあっ!料理は出来てるのよ!たくさ~ん食べて!!」
「えっ、あっ、ありがとうございます…………あの、ロークさん、これは何ですか?」
「んぁ?…………それはサンドイッチだな」
「サンドイッチ……。………おいしいですね、これ」
「ああ。こっちも食べろよ」
「ありがとうございます。……これは?」
「これはおにぎりってやつだ。おいしいぞ」
「………ん、確かにおいしいです!どうやったら作れるのかしら……」
本当に美味しいものばかりだわ。自分で作れるようにしたいわ………あら、これは何かしら?
「……おいローク」
「ふぁい?何ですか、ロクロさん」
「そいつ………人間か?」
「………ヒスイさん。話しても良いと思うぞ。この2人は、簡単に秘密をばらしたりしない」
私が天使って事か……。まぁ、悪い人たちじゃなさそうだし……良いかしら?
「……そうですね。では、改めまして………私、天界より参りました、第10位天使ヒスイ=ミタリアでございます」
「天界!!?」
「あの、空想の……?」
ロクロさんとシグハさんが驚きを示した。良かった、ロークさんと違って反応してくれた。
「いえ、空想ではありません。天界は実在しますわ。ただ、人間がやってこれないような場所にあるだけですの」
「そうか、飛翔に定められてる……」
飛翔?どこかで聞いた覚えがあるけれど、何だったかしら?
「ロークさん、飛翔と言うのは?」
「ああ…俺たちのスキル、簡単に言えば超能力みたいなもんだ。魔力を消費して使う場合もあるし、消費せずに使う場合もある」
「あっ、天界の書庫で読みましたわ。確か、そこには天界がある場所には近づけないと明記されてましたわね」
「そうか、本当に存在するんだ……」
ロクロさん、信じてなかったのかしら。
まぁ、ロークさんも言っていたものね。天界の事は信じてる人の方が少ないって。
………私も質問していいかな。さっきから、すごく気になってるの。
「あの、ロークさん。私、少し気になることがありまして……」
「んぁ?なんだ?」
「………なんで、ロクロさんは男装されているのですか?」
「………………………は?」
あ、あれ?私、おかしな質問した?え、けど、この人からは……女のオーラしか見えないけれど!?
「待てヒスイさん。どういう事だ?ロクロさんが男装?つまり、なんだ、その…………え、男じゃないの?」
「何を仰っているのか分かりませんが……その方は女性なのに、なぜ男装されているのか気になりまして………」
そう言った瞬間、ロクロさんが部屋から飛び出ていきました。
少し、ロクロさんの顔が見えたのですが……とても赤かった。
え、私、何か悪い事した……?




