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君の隣に私の魔法  作者: 七瀬結羽
出会いはどこにでも
2/17

天界のお仕事


「神の心、ですか?」


聞き慣れない単語。神の心って何?私の使命なの?


他の天使達は7歳の頃から自分の使命を知る。

しかし、私は違かった。

7歳の時に使命を知ることが出来なかった。

使命を知るには『泉の鏡』で自分の名前を占う。それが出来るようになるのは、7歳だ。私は、7歳の時に占った。


泉には、使命の文字が浮かぶ。そして、泉の中に右腕を入れて、使命の内容を知る。

他の天使達は、みんな文字が浮かんだ。


私だけ、浮かばなかった。


何回もやり直した。何も浮かばなかった。

翌年も、その次だって、やり続けた。

何も浮かばなかった。

今年ももちろん占った。

何も浮かばなかった。


だから、私は今年も何も使命が分からないまま過ごすんだろうなと思った。


で、今言われたのは私の使命なの?


「あの、リョウカ様。神の心、と言うのは何でしょう?私、無知でして……」

「知らないのも当然よ。天界の中でも最重要とされている秘密だから」


リョウカ様はそう言った。

じゃあ、私達のような未成年の天使には伝えられないわけだ。

……なんでそれが私に伝えられるの?


「そ、そうなんですか。あの……その様な重大な事、私のような者に話されて宜しいのですか?」

「もちろんよ。貴方のことを信頼しているからこそ言っているのよ」

「し、しかし、私は他の天使達と違い、使命が分からない出来損ないの天使でございます。他の天使に言った方が……」

「ヒスイ」


リョウカ様が少し怒ったような声で私の名を呼び、私の目をじっと見た。な、何?


「私は…あまり大きい声では言えないけれど、天使にとって使命というのは重要だけれど、何よりも優先させなければいけないものかしら?」

「…どういうことでしょうか」

「使命はもちろん重要よ。けれど、それって…自分の気持ちとか、実力とかを無視するのに使っていいの?」


リョウカ様の放った言葉にドキリとした。


私は、リョウカ様に隠しておくようにと言われているが、第10位天使でありながら実力は第1位天使であるオーロラに勝るほどなのである。

いや、勝るなんてものじゃない。

私が本気を出せばオーロラには5秒で勝負を片づけられる自信がある。


本来、天使の実力というのは生まれた順番で決まる。

また、その順番によって第何位天使であるかも決まる。

私は、10番目に生まれたので第10位天使であり、実力も第10位天使のはずだった。

しかし、なぜか私は第1位天使のオーロラを越えてしまうほどの実力を持っていた。


「貴方にはオーロラをも超えられる力がある。しかし、その事実が顕わになれば間違いなくこの天界は揺らぐわ。だから今は隠している。……けれど、人間界に降りて、力を得たことにすれば良いんじゃないかしら?」

「人間界に降りて力を得たことに……?そのようなこと、今までにあったのですか?」

「そのような記録はないわ。けれども、天界では『人間界では何が起こっても不思議ではない』と言う認識がある。なら、あなたの実力が人間界から天界に帰ってきたときに大幅に変わっててもおかしくない、でしょ?」


そう言って笑うリョウカ様の笑顔は、子供の無邪気な笑顔のようだった。


「それに……こう言ってはいけないけれど、今回の使命はオーロラには向いてないわ。ダイヤにもね。だから……ね?良いでしょう、ヒスイ?」

「………わかりました。リョウカ様からのご使命、この第10位天使ヒスイが遂行いたします」


私はリョウカ様が大好きだ。

天使の頃は第1位天使で、使命を忘れず、下位の天使にも優しくしていたらしい。

それに、リョウカ様は私の力の秘密を知っている唯一の方だ。

そんなリョウカ様にお願いをされてしまったら、私は断れないし断りたくない。


「私はどこに行けば宜しいのでしょうか?」


神の心って?

どこにあるの?


「神の心は聖なる祭りにあるわ。だから、そこに行って。それで、神の心なんだけど……ごめんなさい、ヒスイ。神の心について天使に詳しく教えることは禁止されているの。だから……」

「大丈夫です。聖なる祭りに行けば、きっとわかりますよね」

「ええ。ごめんなさいね、分からないまま行かせるなんて」

「いえ。じゃあ、私今から行きますね」

「気をつけて。あ、これ、荷物よ。そうだ、場所は、ここからまっすぐ降りれば良いから」

「ありがとうございます。無事に帰ってくることをお約束致します」

「えぇ……行ってらっしゃい、ヒスイ」


そう言われて、私は天界から飛び降りた。

羽があるから飛びやすい。


「さて、真っ直ぐに………えっ!?」


何これ!?

これは……人間の、魔力!?

こんな強いの、感じたこと無い……!!


「きゃあああっ!!!!」





私は、巨大な魔力の力によって聖なる祭りの場に降り立つことは叶わなかった。

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