不思議な買い物・2
お店の奥から出てきたドグさんは魔法師みたいでした。
……なんで?
「相変わらず、その服装にならないとだめなんだな」
「これが一番感じやすいんだよ。あんな服装よりも、こっちが楽」
「…ねぇ、ローク。何をするの…?」
「あー、えっとなー。ヒスイが選んだ武器が、ヒスイを好きかってことをドグは感じ取れるんだ」
…はい?
「ごめんなさい、全然意味が分からないわ」
「えーっと…武器にも意思?があって…それで…あー…」
「お前って昔から説明下手だよな…。えっと、俺は武器にある意思を感じ取れるんですよ。その武器が使い手のことを好きかどうかがわかるんです。で、相性バッチリだと他の人が使ったら全然使えないような武器でも、その武器の真の力が引き出せてめちゃくちゃ強いんですよ。ちなみに、俺の店ではそれが上手く当たったらその武器は無料でお渡ししてます」
「そうなんですか!武器にも意思ってあるんですね…」
「はい。ただ、それもそれで困るんですけどね」
「どうしてですか?」
「こんなにも武器があると全部の意思が聞こえてきますから。うるさいったらありゃしない」
「なるほ、ど…」
けど、それってすごいことよね。ローク、こんなにすごい人が友人にいるのね。
「けど、このスキルを見つけてくれて、俺にこの商業をやるように勧めてくれたロークには感謝してるんです。こいつと会わなかったら、今頃俺は…」
「ドグ、無駄話はそのあたりにして早くしてくれ。他にも色々行きたいんだ」
「ん、ああ。そうだな。よし、じゃあ始めるぞ。うん」
ん…?今、少し無理やりに話を止めさせた…?
「…あー、はいはい。…はぁ、うん。だから?ああ…ほうほう。…あほか。…で?どうしたいんだよ」
おお、話してる…。武器の意思ってどんなのなんだろ。私のこと、気にいってくれたかな…?
「…最初からそう言えっての。余計な手間かけさせやがって…ん?ああ、安心しろ。あれは手強いからな」
「で?どうなったんだよ」
「結論と過程、どっちが」
「結論を言え」
「…どっちもヒスイさんの事は好きだ。ただ…」
「ただ?」
「ステッキの方は相性バッチリ。無料で渡せる。剣の方は…なぜか、剣自身が好きなのに相性バッチリじゃないらしい」
「どういうことだ?そんなことがあり得んのか?」
「…あり得るっちゃあり得る。過去にその武器と旅したり…ある程度の期間使っていれば、相性が良くなくても剣が好きになることはある。ヒスイさん、この武器を使ったことは…?」
うーん…。さっき、懐かしさは感じた。けど…。
「全くありません。私、生まれてから武器を握ったことがないんですもの」
そう。私は、武器を握ったことがない。いつも呪文を唱えれば魔法は出た。
剣を使うことなんて、一切なかったのだ。
「じゃあなんでかな…ほかの理由は考えられない…」
「その武器ってどこから持ってきたんだ?」
「えっと。レミング大陸だな。その辺で会った商人と交換して手に入れたんだ」
「で、ヒスイ、レミング大陸には…」
「わかっていると思うけれど、私は初めて人間界に来たの。レミング大陸なんて…本でしか聞いたことないわ」
「だよなぁ…」
「じゃあ…」
なんで?
私たちに、疑問が生まれた。
「…アリア様。少しよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「本人らしき方をホーミル大陸で発見したとのご報告が」
「本当に!!?」
「ただ、8年前ですから…お姿も変わられているので、確信とは言えないらしく」
「見せて」
「こちらです」
「………」
「いかがなさいましたか?」
「どうして、本人らしいと報告が来たのかしら?」
「名前が聞こえたらしく…ただ、そのような名前もほかにいて不思議ではないので確信ではないようで」
「……もう少し見張ってみてほしいと伝えて。違う方だったら申し訳ないもの」
「かしこまりました。それでは、失礼いたします…」
「…あなたなんでしょう?何年経とうと、姉の私が…弟を…あなたを見間違うはずない。けれど…念には念を重ねないとね。もう少し出会えるのかしら。楽しみだわ…。……そうだ。じいや?」
「はい、何でございましょう?」
「ホーミル大陸の代表…いいえ、ミクロに連絡を取ってほしいの」
「用件は?」
「…私から話すわ。とりあえず、できる限り早く」
「かしこまりました。連絡が取れ次第、こちらに繋げます」
「お願い」
「待ってて…ローク」