昔からの仲間・1
「あ、ヒスイ、店はここ」
あ、通り過ぎちゃった。
「ここが武器のお店?」
「俺のこの大陸イチオシのな。種類とかも豊富だし、説明も丁寧だし、何より…」
「?」
「ま、これは言わないでおく」
「えぇっ、ちょっ、ローク!?」
「お邪魔しまーす」
私を置いて先に入るなぁっ!!
そんな私の叫びを無視してロークはお店に入っていった。
お店の中は、明るかった。しっかり清掃されているし、すごく輝いてる(ただ、鏡が反射したりしてるだけなんだけどさ)
あ、武器がある。ふんふん……これは銃かな?すごく重そう…。
私は体力がないし、銃は持てないなぁ…。
「おい、店長野郎」
ええっ、ローク!?店長に対して何て事を……。
「おう、ローク。今日は何の用………え、誰、その可愛い子!?ロークの彼女ってのは1億%あり得ないとして……」
「お前、失礼だな」
「なぁ、誰だよ誰だよ!?気になる!!!」
「………ヒスイ」
「What?何て?」
「ヒ・ス・イ!つか、買い物に来たんだけど?」
「え、ああ、勝手に見て買ってけ。俺はヒスイさんが……」
「対応しっかりしろ」
「良いじゃねぇか、お前のせいで可愛い女子拝めねぇんだもん」
「それに関しては悪く思ってるけどね…仕事はしっかりしろよ!!」
「わーったよ」
この軽いノリ…仲がいいほど来てるのかな?それに、ロークのせいでってどういうこと?
「ローク、この方は誰?」
「ああ、俺の昔からの仲間の一人。ドグっていうんだ。武器とかそういうのに詳しくて、自分で開発したりもしてる」
「よろしくお願いします、ヒスイさん」
「こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
昔からの仲間の一人?他にも仲間がいるってことなのかしら…?
「ローク、他にも仲間がいるの?」
「ああ、各大陸に一人いるぜ。あと、自由に旅をしてるやつが一人いるな」
「あいつ今何してんの?」
「しらね。生きてはいるだろうけど。異世界にでも行ってるんじゃね?」
「ああ、あり得るな。異世界かー、俺も行ってみてぇな。ここから抜け出して……」
「だから、悪いとは思ってるって。ただ、さ……」
「わーってるよ。ったく、いつも強気な癖にこの話になると途端に弱気になるよな」
「結果的にお前たちの自由を奪ってるんだ。悪く思わないわけない」
「優しいもんな、お前。昔から」
「う、うるせっ」
あ、ロークが照れた。可愛いな。
にしても、他にもいるんだ…。なんだろう、女子がいるんだとしたら……少し妬いちゃうな。
…………ち、違う!!別に、そういうわけじゃないもん!!
……にしても、ロークは昔何があったのかなぁ。センメル・ケア大陸までの仲間だけれど……知りたいな。
ゆっくりでいいから。少しづつ、ロークを知っていきたいな……。
「なぜですか、リョウカ様!!!!」
「落ち着いて、オーロラ。あなたが感情を露わにするなんて珍しい……」
「落ち着いてなんかいられませんし、話をずらさないでください!!なぜ私でなくあいつなのですか!?」
「あなたには自分の使命があるでしょう。けれども、あの子には使命がないのよ。だとしたら、期間限定でもあの子に使命を与えてあげたいじゃない」
「リョウカ様は昔からそうですね。あいつ……ヒスイにだけ甘い。私達には厳しくするくせに」
「それはあなたたちに期待しているからよ。もちろん、ヒスイにも期待はしてるわ。けれど、まだ使命がわからない子だから……」
「はっ、使命がわかる前からそうだったくせに。リョウカ様がそう言うなら、私にも考えがあります」
「あら、何かしら?」
「今から人間界に行きます」
「……何を言っているのかしら?」
「私は自分の使命もしっかり遂行します。それでありながら、今ヒスイが行っている使命もやり遂げて見せましょう。それなら、文句はないでしょう?」
「…………オーロラ。この使命は私と、神と、ヒスイしか知らない、極秘の使命なのよ。私がヒスイを指名したわけではないわ。神が、ヒスイをお選びになったのよ」
「………私は第一位天使ですのよ?ヒスイに教えられて私に教えられないというのですか?」
「……………はぁ。わかったわ、許可しましょう。あなたに使命の内容も教えるわ。ただし、神からも許可をもらわないといけないし出発は明後日よ」
「十分ですわ。リョウカ様、私がその使命を無事にヒスイより先に遂行できた暁には…私を第一位女神にすることをお約束くださいませ」
「神が決めることよ。…………オーロラ」
「はい、何でしょう?」
「大地が…自然が…大海原が…言っているわ。あなたが、最近美しい心を失いつつあると」
「何を言っているんですか?私は第一位天使。ヒスイとは……違う」
「話は最後まで聞きなさい。………行ってしまったわ。神に、お話ししないとね。オーロラについて。…………オーロラ。お前は、第一位天使であることに誇りを抱いている。自分の使命にも。自分が姉妹たちの中で一番優れていることを保ちたい。お前は、努力家だ。歴代の天使を探したって、ここまで努力家な天使も少ないだろう。しかし……それ故に……」
「リョウカ」
「…あら、お父様?どうなさったのですか?」
「少し、話をしたくなってな」
「丁度宜しゅうございました。私もお父様にお話ししたいことがございましたのよ」
「それは、先程の事か?」
「……見ていらしたのですね?」
「私は全てを見ている。天使でも知っている常識だぞ」
「ふふ…そうですね、お父様。いえ……神様」
「これからのことについて話す。今すぐ、来れるな?」
「お父様のお手を煩わせずとも、私と一緒に向かえば宜しいでしょう」
「うむ、そうだな。では、よろしく頼む」
「はい、お父様」