第2章 8節
待たせたな!(蛇風)
年内とは言ったが、、、
翌日じゃないとは言っていない!
第2章 8節
12月1日午後2時16分。
グラエシア帝国軍 帝都アロム48番格納庫にて。
30機近く佇む鋼鉄の竜を背に、壮年の男は眼前の部下達に向けて口を開いた。
「諸君。『勝利の日は近い』と、軍上層部は市井に放送し続けて来た。」
それはプロパガンダである。
戦争が10年続いた時点で厭戦主義者はかなりの人数が確認されていたが、30年が経った今では寧ろ減少傾向にあった。厭戦主義者と判断された者は優先的に短期速成プログラムに則って訓練され、前線に送られて行くのだ。
遺される者に敵国への憎しみを植え付けながら兵員を確保し、国内の意見を統制する方法として実行されて来た。
「諸君は知っているだろう。アレは嘘だ。根拠の無い言葉の羅列でしか無い。」
実際には拮抗し、戦局は膠着し、戦線は一進一退の様相を呈している。アリン共和国は比較的少ない人口を補う為、手厚い士官育成を行い、グラエシア帝国がその広大な領土と人口に裏付けられた人海戦術を行う事もあって、兵員損失比率は常に1:3〜1:4の間を推移していた。
此処に並んだ操縦士達は本来諜報員であり、諜報員として活動する上でその事実は如何しても気付いてしまう事でもあったのだ。
「しかし我々は、この『ファーブニル』にて
この戦争を終わらせられる手段を得たのだ!」
数ヶ月前に上司直々に転属を言い渡された『メアリー』達はARMS操縦訓練を受けた事が無かった。だが、それ故に彼女達は機種転換訓練を行わずとも『ファーブニル』に適応し、諜報員として得た状況判断力でソレを操る。
受けた訓練の関係上、連携には難が残っているが、単機で行う殲滅戦には問題は無い。
「総員、搭乗!」
そう、コレで、この戦争も終わるのだ。
同時刻。
アリンフォート士官学校にて。
放送で呼び出されたエレナは『ハイキング』の準備を中断し、全科共通教官室の前に来ていた。
「エレナ=グリーシス士官候補生、入室致します。」
部屋の中に入り、訓練の担当教官の横に居た男女2人の内のよく見る方を見て、この呼び出しが何の件なのかを悟った。
「あぁ、エレナ=グリーシス士官候補生。急で悪いが、複合地形行軍訓練のトレーラーに2人分の空きは有ったかい?」
ARMS関連学科のみと思って油断したのかも知れないが、やはり想い人と遠出と言えばワクワクする事も。
「確か2人分丁度、有った筈です。天幕は男女別ですから、野営用の装備さえ積めれば大丈夫でしょう。」
いや待て。未だに彼女の目的が解っていない以上、警戒を解くわけには。
「で、其方が?」
まぁ理解出来なくも無いのだ。
衛生士官は実際居てくれるだけで安心感がある。
長距離行軍ともなれば怪我人の1人や2人は間違い無く出るし、去年はARMSで転倒して頭を切ったと大騒ぎした馬鹿も居たらしいし、実際訓練機が盛大に血塗れになっている場面も見た。
「一昨年にこの士官学校の衛生士官科を卒業したディートリッヒ衛生中尉と、君と同室のスー衛生士官候補生だ。」
「宜しく。」
数年前に卒業した当時学年主席の軍医と。
「驚いた?本決まりは昨日だったんだけどね!」
同室の厄介事。
「宜しくお願いします。」
内心の荒れ具合はこんな時も表情に出ず、淡々と挨拶しながら内心天を仰いだ。
何か、悪い事でもしましたか、、、?
SFと言うか、戦闘シーンまではもう少しお待ち下さい。




