第2章 7節
何やかやでたまに見られてる事もあって書き貯めていた分です。
早く速く続き書かねば、、、
第2章 7節
士官学校ARMS関連学科の複合地形行軍訓練、通称『ハイキング』は1週間に渡り行われる。
無論、その事前準備はその更に数ヶ月前から既に始まっているのだが、生徒側が関与する内容は丁度2週間前からとなっている。
様々な模擬戦闘形式での演習を受け、自らの役割に合わせたARMS用装備の携行、及びARMS躯体本体の地形適応性の実地確認が名目となっているが故に、整備科の生徒達は前線士官養成科の生徒達に出発前日迄の間、それはもう扱き使われるのである。
その準備の開始が、この日。
エレナも勿論パイロット適性により前線士官養成科に所属しているのだが、彼女の場合はある程度以上に自分で何とかなってしまうのだ。
ARMSの動力源は完全にブラックボックス化されており、その部分に関しては現在では国家機密指定を受けている。
それ以前に流出した根幹技術により他国もARMSを開発してはいるのだが、コアブロックの構造はARMSが工業用パワードスーツであった頃から凡そ変化していない。
が、それ以外の部分に関して言えば大半が既存技術と高度なアクチュエータ、軽量水素電池の組み合わせで構築されていた為に、その過半は既にエレナの知識に組み込まれていた。
そもそもエレナの戦闘方法には得手が存在しない。
駆る機体自体が軽量化した高速戦闘特化型ではあるが、装備を活かす方向性での戦闘が可能であれば凡そ手段を選ばず利用する全距離対応性のカタマリ。
周囲の操縦士候補生は憧憬を向け、模擬戦闘を見ていない他の学科の士官候補生は嫌悪を向ける類いの泥臭さが多分に含まれるその戦闘法は、士官学校に於いて特に特異なモノであった。
寮、メアリーと二人共用の自室にて。
エレナは一人でチェックシートに記入作業を続けていた。
遠距離戦闘装備、特に狙撃装備を演習に使う事も出来なくは無いが、操作補助系統の開発が後回しにされたアリン共和国製ARMSのOSは自動照準補正等のシステムが未だに未成熟で、何処までも操縦士の力量に依存した性能を発揮してしまう。
システム面でのアップデートは常に続いているが、必要な所にシステム開発のリソースを割いた結果として後回しになってしまっているのだ。
ARMSが戦争に用いられる以前の狙撃手の様に観測手を必要とする為、ヘリアルの制式仕様での狙撃装備には操縦席の内装の換装が必要となる程であった。
エレナ自身も狙撃装備は使えなくは無かったのだが、至近距離戦闘装備を使い回す戦闘法に慣れてきてしまったので今回は近距離戦闘装備での参加となっている。
「エーレナ!何してるの?」
背後から声を掛けて来たのはメアリー。
敵国の人間の疑いが強いが、確証は無い。
が、小康状態にあるとは言えども戦時中である。その疑いがどんな結果に繋がるか判らないのだ。
複合地形行軍訓練はARMS関連学科、則ち前線士官養成科と整備科及び兵站科の合同で行われる為、衛生士官科のメアリーには凡そ関係が無い筈である。
故に。
「『ハイキング』の持ち物確認だね。」
詮索が面倒なので素直に答えてしまったのだ。
ソレがどの様な結果を招くか、考えもせず。
年内もう一回更新できる様に頑張ります。