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「ヤーにーたん。」
パタパタと幼児が、走ってくる。転がりそうなところを抱き止めてやると、
「危ないだろ、ナダン。お母さんはどこだ?離れちゃダメだろ。」
幼児は小言を聞いてないのか、聞き流したのか、来た方向を振り返って指さす。そこには母親のマァヤがニコニコしながら手を振っていた。
「お昼?ヤン。」
「いや食べに来たんじゃないんだけど、まぁ腹は減ったかな。」
ぼんやりした答えに、マァヤは笑いながら、自分たちの昼食に誘った。
「最近家に顔出した?」
マァヤがナダンの世話を焼きながら訊ねる。しまった、と思ったが当たり障りなくこたえる。
「いま立て込んでるんだ。新しい仕事ので。」なるべく表情にださない様にしたが、バレバレだったようだ。