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「カラ麦…はサルーラ産が一番。タウ芋もどこでもある。漁業は川しかないしまとまってない、林業は山遠いし、サハギの芽は美味しいけど今だけだし……。」
また歩き出した男はとりあえず思いついたものを口から出してみて、すぐ自分で否定する。てくてくがタラタラとした歩みになる頃、市場に差しかかった。昼にはやや早いが、人も多く賑やかな気配がする。
(別に今のままでいいのに…もっと活気をって、治安悪くなるだけじゃないかなぁ。)
確かにずば抜けて儲かる物も、儲けている者もいないが、ぬるま湯が悪いとは思えない彼は、中々積極的な案が出せずにいた。仕事のない者や生活が苦しい者への支援ができると思えば、新たな産業も必要であることは理解していたが、どうしたら結び付くのか全く当てがなかった。
沈みそうな気持ちで、店先を覗き歩いていると見知った顔に呼び止められた。