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とっさに言葉を返せないジーナをみて、マァヤは苦笑いを浮かべた。
「そんな顔しないでよ。ジーナの服憧れなのよ、嫌みのつもりじゃないんだよ。ね、ほら、サハギが入ったよ、好きでしょ、ジーナ。」
マァヤが強引に話題を変えてくれたことにホッとしつつも、気を使われた事にまた居たたまれなくなる。他愛ない会話を少し続けてお目当てのサハギの芽を買い込むと、仕事の道具は足りてるしと、マァヤに挨拶して他の店を覗いてみることもなく、そそくさと市場をあとにする。
実際のところ、ジーナが気にし過ぎなのだ。良いものを作ってるから、だから高いのだ、と腕を誇ったような軽口でかえせるし、人に商品を売り込めるチャンスにもなる。不当に高いわけでもないのだ。だが、ジーナは徹底的に商人に向いてなかった。仕事は好きだし、作ったものに客が満足してくれたらいい、そこまでだった。喜ばれれば嬉しいし、注文がくれば一心につくる。対価は暮らしていける金額を貰えば十分なのだった。
評判を取って店を持とうとか、さらに値の高いものを作ろうなどとは考えもしていなかった。彼女は自分の作ったものに対する評価に腰が引けていた。それがジーナを妙に引っ込み思案にしていた。