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馬車から降りて、通された部屋で大人しく待っていると、重々しいドアが バタンと開いた。
「お待ちしてましたわ!」
柔らかそうな淡い茶色の髪を髪飾りだけでとめた愛らしい少女が、似合わない性急な所作でジーナに近寄ってくる。ジーナが挨拶をしようとした時、ドアの向こうから冷たく声がかけられた。
「リラーシャ?」
ビクッと固まるリラーシャに、部屋へ入ってくるなり、後ろから手に持っていた扇子で、ペシリと頭をはたく女性。
「グラーゼ夫人。お呼びにより参りました。リラーシャ様もお久しぶりにございます。」
ジーナがそう挨拶できたのは、グラーゼ夫人が娘に小言を言い終わってからだった。