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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
8/28

08:家の裏山に以下略

ようやくここから本編のスタートです。

 高2の農林際も終わり、一息ついた日曜日、僕は朝から山に入ってました。雪が降る前に葛根(くずね)を掘るのです。カッコンと読めば漢方薬です。同じものですけどね。

 何のために掘るのかって?葛粉を採るんですよ、冬は婆ちゃんの生姜葛湯でポカポカです。単なる趣味ですけどね、買ったとしても安いもんだし。実益としては山の保全管理でしょうか。下草刈りの刈払機、蔓払い用の鎌鉈と剣スコ先生を担いで出発です。

 以前から目を付けてた良い葛があるんだけど、そっちは後回し。なんとなくそうしたほうが良いような気がして、斜面に大量に覆い繁ってる葛を間引くことから始めます。こういう葛は根っ子がヒョロいんだよね。将来、立派な根塊に育てるために間引いてやらないとね!と鎌鉈を振るってたら、蔦に覆われた急斜面に迷宮の入口があったのです。今まで気付かんかったわー。


 で、凸しました。迷宮を発見したら国に報告する義務があるんだけど、そしたら封鎖されちゃうからね、その前にちょっとだけ。ホールまでなら大丈夫だよね、きっと。

 1号迷宮さんは入口が縦穴だったので階段降りなきゃいけなかったけど、家の迷宮は入口が横穴、地面とホールは高さが同じだった。楽でいいね。入口は高さ2メートル、幅1メートルくらい、玄関ドアくらいの大きさだよ。僕んちは引き戸だから違うけどさ。入口を慎重に潜って、おお、これが迷宮か!

 ホールは土間だったよ。大きさは、薄暗くてよくわからないけど、陸上競技のトラックくらいかな。楕円?長方形に近いのかな?結構広いね。明らかに土の中じゃない方向にも、ホールが広がってるのは不思議なことだよ。入口は長方形の長辺の真ん中あたり。対面には下り階段があるはずと奥に行ってみると、そこで気がついたけど下り階段が3つあったんだ。後で知ったんだけど、3つというのは珍しいらしいよ。2つは今までに見つかってるんだってさ。

 とりあえず実験してみた。刈払機のエンジンを掛けたまま持ち込んでみたら、やっぱりエンジン止まったよ。リコイルスターターの紐をいくら引っ張っても掛からない。外に出ると掛かった。聞いてたとおりだったよ、うんうん。


 さて!ここまで来たからにはこの先にも行ってみたいよね。いやいや、見るだけでいいから。ちょっと下りてみるだけだから。いや、ホントちょっとだけだから、先っちょだけだから!

鎌鉈は後ろでベルトにはさんで保持、もしものときには剣スコ先生よろしくお願いします。

ホールの薄暗さに目が慣れたので、行きます。3つある階段の、よし、真ん中だ。下り階段は入口より広いかったよ。1号迷宮さんと同じ4×4メートル。静かに階段を下りて、記念すべき、第一歩を、踏み出し、まし、た!おお、感無量!

 階段を下りた先は、土が剥き出しの通路でした。1号さんは石造りだって聞いてるけど、迷宮によって構造は違うんだね。やっぱり暗いな、懐中電灯持ってくればよかったなと思ってたら、視界の右上端に久しぶりのノイズが。ノイズとは一年ぶりの再会でした。結局このノイズって何だろう、わかんねぇなと思ったら、ノイズが鮮明になった。

【第1階】

はい!?いやいやいやいや!頭を振ってみる、消えない。まばたきしてみる、消えない。ぐるーっと辺りを見回してみる、右上隅に表示されたまま。なんかあれだね、友達んちでやったゲーム画面みたいだね!だとすると、セレクトボタン押してメニュー画面にして、画面表示オフだっけ?と思ったら消えた。心の中で『画面表示オン』と唱えてみる、表示が現れた。なるほど、わからん!わからんけど、ノイズの右目はこんなものだったというのがわかった。じゃあフシギ空間の左目は?結果、何を試しても変わった様子はありません。無念です。

 指先ライターも試してみました。ゴォォ!という轟音と共にとんでもない炎が出ましたよ。危うく顔を焼くところでした。腰が抜けました。なんとなくおかしくなって一頻り笑った後、ため息が出ました、なにこれ?右手の人差し指を立てて前を指す!指先から4メートルくらいの炎が出ました!おお、大火力!マジ火炎放射器!面白くて何度も撃ってみる、天井へ撃つと天井に届いた。通路の先に向かっ・・・ん?通路の先にぼんやりと光るものがある。目を凝らして見ていると文字が表示されました。

【ジャイアントスラグ:Lv1】

この時が来てしまいました。魔物と初エンカウントです。


 埼玉県1号迷宮で死者を出し、自衛隊の一斉射撃による大量の弾薬と引き換えになんとか1体仕留めることに成功した這い寄る混沌、じゃなくて大ナメクジです。ですが、倒せないにしても、挙動に注意していればやられることは少ないんじゃないかと言われています。動きは遅いので逃げることは可能なようなのです。僕のすぐ後ろは階段です。逃げることはできると思いますので、一当たりしてみたいと思います。奇襲されなければ大丈夫、そんな楽観視で初戦闘に臨んだのでした。僕ってほんとバカ。


 攻撃方法は剣スコ先生で叩く、突く。大ナメクジはいよいよ這い寄って来ました。参ります!


 ダッシュで横へ回り込み、右手は握りを左手は柄を握り、先生を両手で構えて突き下ろす!剣先が少しめり込み、ぐにゃりとした感覚が伝わってきました。意外と硬いです。キックバックで右手首を挫きそうになりました。素人には叩く方がよさそうです。

 ナメクジが回頭してきました。慌てて退避して、仕切り直しです。反対側に回り込み、今度は柄を両手で持って最上段から振り下ろし、ブレードの側面を叩きつけます。1発!2発!ゴムを叩いてる感じです。やはり効いてなさそうですね。


 ここで僕は失敗しています。退路を確保していたのに、反対側に回り込んでしまったのです。ナメクジに退路を塞がれる位置に陣取ってしまいましたが、夢中で気付いてなかったのです。


 地面に穴を掘るように、スコップに足を掛け全力でナメクジの側面に突き立てます。これが更なる失敗でした。ナメクジの弾力に負けて、バランスを崩したのです。体を丸めて回頭して来たナメクジの頭に足を払われ、尻もちをついてしまったのです。拙い、逃げなきゃと思った瞬間気付きました、階段はナメクジの向こうだと。おろし金のような歯を持つ巨大な口が迫ります。なんとかスコップの剣先を突き立てて防御に成功しましたが、すごい力で押し切られそうです。ガリガリと剣スコ先生から異様な金属音がします。長く持ちそうにありません。


 ナメクジなら塩!塩はないか!?あるはずありません。埒も無いことを考えています。そこで思いつきました、火です!自衛隊の火炎放射が効かなかったことは知っていましたが、逃げ出す隙くらい作れないか。人差し指をナメクジへ、大火力指先火炎放射!炎がナメクジを包み込み、ナメクジはビクリと巨体を振るわせて縮みました。チャンス到来、脱出です。しかしナメクジはキラキラと儚く光る粒子を撒き散らして消えていきました。えっと・・・やったか!?・・・・・・ホントにやったみたいです。訳の解らないまま、けっこうあっさり戦闘勝利してしまいました。


 ナメクジの消えた場所に小石が落ちていました。何気に拾い上げ、背後に気配を感じます。振り返ると・・・

【ジャイアントスラグ:Lv1】

【ジャイアントスラグ:Lv1】

奥からさらに這い寄るナメクジが2匹。すでに5メートルくらいまで距離を詰められていました。慌てて逃げ出します。階段を転ぶように駆け上がり、ホールを突っ切って迷宮の外へ脱出しました。息を整え、暫く迷宮からナメクジが出てこないか警戒しましたが、どうやら出てくる気配はありません。安堵してその場に座り込んでしまいました。


 ふと、自分が小石を握り締めていることに気付きました。この大きさはあれですよ、チョ○ボール。じっと見るとまたも視界に文字が浮かびます。

【魔石:Lv1 品質:C3+】

これはまたずいぶんとファンタジーなアイテムだったようです。魔石ってなんだよ!


「ちょっと、あなた!」


 突然、女性の声で呼びかけられました。ハッとして顔を上げますが、誰もいません。気のせいだったのでしょうか、家の山には今では僕くらいしか入る者はいませんし。


「どこを見ているの!上よ上!」


 またも女性の声が。空耳ではなかったようですが、上?顎がカクンと落ちました。視線を上げたそこには、透明な蝶のような翅を生やした、全長20センチくらいの宇宙服が浮いていたのです。テレビで見るN○SAのものより随分スリムなようです。ヘルメットのバイザーはスモークで、顔は見えませんでしたよ。いや、フィギュアが浮いてるとか、無いわー!

 目平まで下降して来た宇宙服フィギュアはビシッと僕を指差しました。動いた!しかもけっこう滑らかに!さらに言うと、他人を指差すなんて失礼!


「そう、あなた!あなたが特異点ね!」


 宇宙服フィギュアは、あ、フィギュアじゃないのかも。小型宇宙服は傲然と胸を張って名乗りをあげました。


「わたしの名前はミラファグリンダン・ヴェルトライエン・アル・ロディンスクリンデン。エルフよ。」


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