06:決戦!魔物vs陸上自衛隊
迷宮の魔物を殲滅せんと、陸上自衛隊1個小隊が出撃しました。
装備は89式5.56mm小銃、64式7.62mm小銃、5.56mm機関銃MINIMIの普通科標準装備に、110mm個人携帯対戦車弾、M26破片手榴弾のガチ装備、あと火炎放射器。いやいや、順を追って突っ込みますのでちょっと待ってください。
まずナメグジみたいな軟体動物に、5.56ミリなんて小口径高速弾って効果的なんでしょうか?7.62ミリの方が有効な気がします。可能ならもっと大口径の方がいいんじゃないかな、20ミリ6連ガトリング砲とかよろしんじゃないでしょうか。
次に、パンツァーファウスト3を迷宮内で使う気ですか?発射するのに後方10メートルの離隔距離が必要で、射程も100メートル単位のはずなんですけど、そんな空間は迷宮内にはまず無いと思います。自殺志願かよ。
手榴弾は、まぁ解ります、フレンドリーファイアに気を付けてくださいね、狭いので。
最後に火炎放射器、どっから持ってきた!?一応、陸自は持ってるけど。酸欠とか大丈夫なんですかね?
分隊単位で迷宮に突入、前回の苦い経験から壁や天井も警戒して進みます。最初の角を曲がったところでエンカウント、ジャイアントスラグ1体です。89式がミニミが火を噴きます。射撃音を全て消すなんて不可能ですが、サプレッサーが付いてるのでそれなりに静かです。こんな狭い空間でまともな射撃音を響かせたら耳がやられてしまいますので、対策が取られたようです。演習時や通常戦闘時には対策無しが多いようです、大変ですね。5.56ミリ弾が次々と着弾し貫通しますが、目立った効果は無いようです。すぐに穴が塞がってしまいます。マークスマンの7.62mm弾が炸裂し、ジャイアントスラグは巨体を大きく震わせますが、やはり効果は薄いようです。ナメクジのように地面に張り付いてる魔物でなければ、もしかしたらノックバックくらいは発生したかもしれません。
弾を撃ち尽くしたところで次の分隊と交代です。じりじりと這い寄ってきたナメクジが体を縮めました。体を大きく伸ばす高速攻撃のモーションです。退避が遅れた隊員の足にナメクジの攻撃がヒットします。別の隊員2人に引っ張られ、辛くも脱出した隊員ですが、ナメクジのおろし金のような口でブーツが大きく抉られてしまいました。角を引き返し全力で退避しながら手榴弾を投げ込みます。耳を塞いでも身体に響く轟音に効果を期待しましたが、ナメクジは何事もなかったかのように、ずるずると角を曲がってきます。体に突き刺さっていた破片が押し出され床に落ちて、やけに乾いた音を響かせます。
火炎放射器が投入されました。600度の炎がナメクジに襲いかかりますが・・・襲いかかりますが平気で這い寄ってきます。自衛隊はパニック寸前です。弾を撃ち尽くす勢いで撃ちまくり、弾が無くなったらストックで殴り掛かります。パンツァーファウストを使うという暴挙に出ないだけの理性は残っていたようです。気の利くものは小銃に銃剣を装備して突きかかりました。
そして永遠とも思える時間の後、ジャイアントスラグは儚い光の粒子となって消えていきました。消えた後には、1個の小さな石が残っただけでした。
『何が起こったか解らなかった。ただ茫然として消えていく光を見つめていた。』
『終わったのかと思ったら、腰が抜けて立てなかった。』
後に隊員たちはそんな感想を残しました。
数名の負傷者を出しましたが、自衛隊は辛くも戦闘に勝利したのです。
膨大な資材を消費し、隊員は気力・体力を消耗し、戦果は1体だけ。継戦は困難と判断せざるを得ず、自衛隊は撤収しました。
一戦には勝利しましたが、事実上の敗北です。