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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
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27:上層アタック

 さあお待ちかね、迷宮に帰ってまいりましたよ。


 僕らは3つある迷宮入口の真ん中から入って表層を制覇した。便宜上B口としておくね。向かって左からA口、B口、C口だ。B口のマップはまだ完全なものではないけれど、どうやらこれまでの範囲では、A口・C口のマップと繋がっていないように思う。おそらく中層あたりで繋がるんじゃないかな。これはミラさんからも過去の例からの推測でお墨付きをもらったから、合ってると思うよ。迷宮が合流する中層以降は、1フロアがかなり広大になるんじゃないかって思う。連想したのは宇宙三つ首龍だw全身金色で、ピルル、ピルルルと着信音みたいに鳴くアイツだよ。


 さて、これからの方針は二つある。一つはB口をさらに奥へと進む。もう一つは別の入口から入って、表層を制覇する。冬休みが終わると、ニアンさんは一旦帰るんだってさ。そりゃあ学校が始まったら、週末探索者になっちゃうもんね。ニアンさんの無駄遣いだ。そこで、ニアンさんがいる間に上層の魔物で経験を積むか、もう一度ボスに挑むかって二択なんだ。

 ニアンさん抜きでボス戦という選択は今のところ無い。この迷宮のボスは他と比べて明らかに強い。しかも執拗に僕を狙ってくる。半分素人の僕と、後衛の宇宙エルフさん二人では心許ないんだ。B口表層のボスが特別だった、なんて希望的観測で危険を冒すわけにはいかないでしょう?

 結果、B口の上層を行くことになった。色々な魔物と戦って、経験を積むことを選択したんだよ。A・C口の探索は、次回ニアンさんが合流した時ってことで。つまり、春休みか、下手すりゃ夏休みだね。もし、A・C口の魔物がB口と全く同じだったら、ボス戦しか旨味が無くなっちゃうから仕方なかったんだ。




 というわけで、B口1階から僕のスキルで6階へ跳躍した。空間跳躍(ワープ)、便利です。まだ吐き気はするけどね。

 工程は今までと同じ、僕が魔物を倒しながらひたすら奥へと進むだけ。ミラさんたち3人は、いつでも僕をフォローできるように戦況を見守っている。ホントに頼りになる人たちだ、普段はけっこうアレな人たちだけど。


 上層では自衛官の殉職者も出てるって話だったので、僕としてはかなり警戒して戦いに臨んだ。結果、表層の魔物と強さ自体はそんなに変わらないと思う。でもやりにくい。上層の戦いを経験して思うことは、表層の魔物がいかに単調であったか、ということだ。

 表層の魔物は単に突っ込んでくるだけだった。ナメクジ然り、アリ然り、イナゴ然り。イモムシとカマキリには糸と鎌による捕獲という技があったけど、ぶっちゃけ相当油断してない限りは躱せる。不意討ちを警戒しつつ、正面に立たなきゃいいだけのことだ。苦戦する要因は、倒すのに手間取ってる間に集られる、これくらいしか思いつかないわ。いや、マジで。油断や慢心ではなくね。


 ところが、上層の魔物はなんかヤラシイ。対応を間違えたら詰んじゃうような危機感があるんだ。裏返せば、対応を間違えなければ恐ろしくないってことでもあるんだけどね。僕はとうとうB6階でダメージをくらった。あってよかった『自動回復』、お前アルコール分解機能だけじゃなかったんだな。

 B6階の魔物は【ジャイアントフロッグ】、でっけぇ・・・これなんだ?アカガエルか?まあ地味なカエルだ、うん。トノサマガエルじゃないし、アマガエルやアオガエルでもない。ヒキガエルやイボガエルとも違う。ヒキガエルだったらフロッグじゃなくてトードだよな、とか愚にもつかないことを考えてみたり。言語って面白いよね。日本語だったらカエルで済んじゃうのに、英語ではフロッグとトードがあって、それもニュアンス的な違いで明確な差はないってことなんだから。もちろん逆も然りなんだろうけどさ。英語では甲虫の類はみんなビートルなんだってね。カブトもクワガタもカナブンもみんなビートル。カエルより区別しやすいだろうにね。おっと話が逸れたぞ。話が逸れついでにもう一つ、それにしてもジャイアント多いな!いや、でかいのはわかるけどさ、もうちょっとこう、魔物の名前らしい名前ってのがあってもいいと思うじゃんね?わかりやすくて助かってはいるんですよ、うん。


 まあ、そのカエルに一撃くらったわけなんだけどさ。体を撓めたから突っ込んでくるかと思ったんだよ。そしたら舌を伸ばしてきやがった、しかも太腿あたりを狙って。なんて言ってるけどさ、速すぎて見えなかったよ。戻す時にようやく舌だったって解ったんだ。ほとんど勘で足を引いて避けたのはいいんだけどさ、無理しての回避だからバランスとか重心とかメチャクチャなわけですよ。そこに今度こそ体当たりで突っ込まれて、なんとか剣鉈槍を間に差し込んでブロックしたつもりだったんだけど、そんな程度で堪えきれるわけもなく脚ごと刈られて床に叩きつけられた。マジで脚が折れたかと思ったわ。


 前のめりに顔から落ちたせいで、ヘルメットに付けてたヘッドライトが壊れて、いきなり灯りが無くなったのにはまいった。普通ならこの時点で詰みだよね。魔力感知スキルのおかげで視界が真っ暗にはならなかったので助かったけど、それなりに明るさに慣れてたのが急に薄暗くなってパニックだよ。なんとか倒したけどね。

 あってよかった予備のヘッドライト。ヘルメットも衝撃受けただろうから交換しないとね。ヘルムには予備がないので、しばらくはこのまま使うけどさ。脚はもうなんともない。顔もちょっと切ってたみたいだけど、跡形もなくすぐに治っちゃったよ。『自動回復』さん、アッザース!


「しかしお前さん、見事にハマったなぁw」

「ホント、華麗なるヤラレパターンっす。」


 要するに僕は、カエル野郎のフェイントに手もなく引っかかってしまったわけだ。くっそう!カエルのくせにフェイントだと!両生類め、人間様をナメるなよ!次はぜってー倒しきる!


 意気込んで迎えたvsカエルのラウンド2、戦闘プランはこうだ。警戒するのは体当たり、そこにカウンターで突きを合わせる。舌はこの際無視だ。カエルの舌は超高速の攻撃だ、見てから回避なんてまず無理だろう。だったら無理に躱そうとしてバランス崩すよりも、当てさせて耐えるほうがマシだ。カエルの舌ってのは粘着力で獲物を絡めとる構造になってるから、耐えて反撃するくらいはできるだろう。

 なんて思ってたんですけどねぇ。実際そんなの無理っす。舌を右太腿で受けたと思った瞬間、物凄い衝撃とともに、とんでもない激痛が。感覚的にはあれですよ、当たった場所から下が千切れ飛んだような。もちろん脚は千切れてないし、骨すら折れてなかったんですけどね。


「魔物の攻撃をあえて生身で受けるたぁ、お前さん漢だねぇw」


 痛い!痛すぎる!『自動回復』、仕事してんのか?そうだ魔法!回復魔法があるじゃないか!普段使わないから忘れてた。えっとなんだっけ?そうそう、確か『Rtt…』イタタタタ!痛い!痛いーっ!激痛で呪文に集中できねぇし!結局、『自動回復』である程度治まるまで、痛みで床を転げまわってました。カエルはニーナさんの炎の槍で片付けたようです。


「ジャイアントフロッグはな、でっけぇカエルじゃあねぇんだぜ?でっけぇカエル型の魔物だ。今までのもそうなんだけどよ。」


 表層や上層の魔物は、普段見慣れている動物が多いので誤解しがちだけど、あくまで魔物であって動物ではないってことだ。生態とか攻撃に関して、かなり誇張された存在なんだって。だからカエルのくせに人間様の脚をもぎ取りかねない一撃を放ったりするんだ。前にもレクチャーされてたはずなんだけどねぇ、どうしても見た目が見た目だからさ、でかい○○みたいに考えちゃうんだよね。見た目が同じで全く異質のものって考えなくちゃいけないんだけどね。

 さっきの一撃は、ホントに千切れはしないけど、大腿骨くらいはへし折っておかしくないんだってさ。それが無事だったのは、戦闘前にミラさんがこっそり掛けた保護(プロテクション)の魔法のおかげのようだ。ありがとうございます!それにしても保護すら掻い潜ってあの衝撃だったんですねぇ、恐ろしい。


「でもユキさんのスキル構成なら、千切れた脚でも元どおりに繋がっちゃうんじゃないすかね?」

「それはどうでしょうか?ユキさん、激痛で魔法が唱えられなかったようですし。」

「なんだよ、情けねぇなぁ。片腕千切れても平然と戦い続けるのが男の子ってもんだろ。」


 こら、大猫女!僕はどこぞのバトルマンガやファンタジーのチート主人公じゃねぇんだよ!んなもん無理に決まってるだろうが!手足もがれたら普通にショック死するわ!

 しかしなぁ、今後そういうことが無いとは言い切れないんで、対策は取っておきたいよなぁ。対策さえあればもしもの時に慌てずに済むし、助かる確率も増えるだろう。単純に他人に頼るってのもありだよな。もう1人ヒーラーがいればいいんだよ。それでお互いに治療できるしね。でも今は僕しかいないから、僕自身でなんとかしなくちゃいけないわけだ。これは早急に解決しなくちゃいけない課題として覚えておこう。


「でもさ、躱すもムリ、受けるもムリとするとこのカエルってどうやって倒すの?」

「んなもなぁテメェで考えろよ!と、言いたいところだが?まぁ今日のところは方法の一つってヤツを教えてやるよ。」


 おお!ニアン軍曹殿、お願いします!

 「まあ、単純な話でよ」というとニアンさんは無造作に、しかし素早くカエルに近づくと頭を踏んづけた。えぇ~っ!?大剣をザクザクと突き立てて、あっさり倒しちゃいましたよ。その戦い?駆除?を、あえて擬音で表現するなら、ぶぎゅる!だ。なんか梅雨時分に車に轢かれて、道路でぺちゃんこになってるカエルを連想しちゃったんですけど。


「躱すも受けるもムリなら最初(はな)から攻撃させなきゃいいんだよ。単純な話だろ?」


 ソウデスネー、気付キマセンデシタヨー。

 ちなみにカエルの落し物はピンポン玉サイズのLv2魔石、1個1000円前後でございました。割に合わねぇなぁ。


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