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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
26/28

26:宇宙エルフさんのいるお正月

 あけましておめでとうございます。正月休みの佐藤幸永17歳です。二年参りして、彼女欲しいですと真剣にお祈りしてきました。何卒良しなに。ツ、ツレと原付で2尻なんてシテマセンヨ?渋滞とパトカー回避で裏道を縫って行ったりシマセンデシタヨ?ホント、何卒良しなに。


 お正月と言えばお雑煮ですよね。家の数ほど種類があるといわれるお雑煮ですが、我が家のお雑煮は濃口醤油の澄まし汁仕立てです。具はお餅のみ、お出汁に丸餅を焼かずに入れてそのまま少し煮る。するとお餅がちょっと溶け出して、おつゆが濁るのです。岩海苔を散らして、さあ召し上がれ。(゜Д゜)ウマー!

 僕のとっておきの食べ方を特別に披露しようかな。大きめの茶碗にご飯を盛ります。岩海苔を載せます。生海苔ならさらにいいね。そこに、我が家の雑煮の汁をぶっかけて、かき込みます。(゜Д゜)ウマー!ご飯にお餅の汁をぶっかける、あると思います!お米の国の人だもの。あ、僕はアメリカ人じゃありませんよ?誤解なきように願います。




 爺ちゃんたちは年始回りだ地元の年賀会だと忙しいけど、僕は居間の炬燵でのんびりお屠蘇気分です。はー、のんびりのんびり。つまみはお(せち)のあご野焼きと天ぷらかまぼこ、練り物万歳だよ。おっさん臭いって?(うち)は年寄り所帯なんだから仕方なかろ?カルパッチョだかヴィシソワーズだか知んないけどさ、婆ちゃん、そんなオサレな料理なんて作れないよ。僕だってオサレ料理なんて知んないし。オサレとかハイカラとかどうでもいいよ、婆ちゃんの飯は美味いんだからそれでいいんだよ。そういえばさ、揚げかまぼこのことを東京モンは天ぷらって言わないんだってね。さつま揚げっていうの?なんかサツマイモの天ぷらみたいだよね、それって。


「というわけでですね、こっちはもうほとほと愛想が尽きてるわけですよ。なんとかならないんですか?ちょっと佐藤さん、聞いてます?」


 あーあーあー、聞こえなーい!お正月から仕事の愚痴なんて聞きたくなーい!正月早々酔っ払いに絡まれたくなーい!お酒は楽しく飲みましょうよ。あ、お酒じゃなかった、お屠蘇でした。ここ大事です。


 炬燵には何故かチームのメンバーが皆さんいるわけなんですけどね。ニアンさんは天ぷらつまみにコップ酒です。天ぷら気に入ったんですね。炬燵天板の上にはエルフさんが3人。そう、ミラさん、ニーナさん、リアナさんの3人です。リアナさんはいわゆる宇宙エルフBさん、ここ日本での統括責任者で、首相と生中継で会見したおそらく日本で一番有名な宇宙エルフさんです。なんでそんな人が、僕んちでクダ巻いてるんですかね。ちなみに表座敷では、他の宇宙エルフさんたち大勢が大宴会中ですよ。どうしてこうなった。




 ミラさんは4日間の休みの間どうするのかな、母艦にでも帰るのかな?と思ってたら、帰っても別にすることがないというので、家で過ごすことになった。ニーナさんも同様なんだけど、普段から家にいるミラさんと違って、ニーナさんは普段どこで寝泊まりしてるか知らないので、ちょっと新鮮だったりする。ニアンさんは自分の着陸艇(ふね)で寝泊まりしてるんだけど、休みの間は面倒くさいから泊めろってさ。つか、あんた酒飲んで動きたくないだけじゃないの?まあ、表座敷で良ければどうぞ。

 なんてやってたら、正月休みで暇になったリアナさんたち東京の宇宙エルフ御一行様に押しかけられたわけですよ。あんたたちこそ母艦か、それとも東京ででも待機してなさいよ。休みの時くらい職場を離れてリラックスさせてくださいはいいんだけど、なんで僕んちなのさ?僕んち温泉宿でも保養施設でもありませんよ?それに、まさに僕んちを職場にしてる人たちだっているんですけどね。


 始めはまともに進捗状況とかそういうお話だったんですよ。

 連邦の支援魔法を受けた自衛隊さんも早々に表層を突破して、そろそろ上層も突破しそうな勢いのようです。ここからが大変なんですよ、とはミラさんの談。まだスキルを得た人はいないようです。それと上層で殉職者が出たようです。

 法整備の進捗状況はそれなりと言ってました。連邦が提示した雛形を現行法と摺り合わせる作業中で、政府は通常国会に提出するつもりのようです。ここで突然、リアナさんがキレました!政府への愚痴、官僚への愚痴、そしてなにより首相への悪口悪口悪口!ひぇ~っ!よっぽど鬱憤が溜まっていたようです。


「だいたい今の首相は人当たりの良い好人物などと言われてますけど?そりゃそうでしょうよ、口当たりの良いことしか言わないんですから。あれはなんですか?人形ですか?」

「なんですかねー(棒)」

「その場で何を言えば受けるか、格好良いかしか考えてないんじゃないですかね?落としどころとか?妥協点なんて目標もなく思い付きで喋るだけだから、相手するのはほ・ん・と・う・に・疲れるんですよ!」

「それはたいへんでしたねー(棒)」

「なんであんな○○○○(ピーーー)が一国の元首なんてやってるんですか!この国は世襲制の専制国家ですか!?」

「いやまぁ、あの人世襲だったはずだけどさー。」

「あれ(・・)が国民の選良とは片腹痛い!いったい何を以ってあれ(・・)を選んでいるんですか!?」

「えっと、お金?」


 リアナさんの愚痴はまだまだ続く。なんでも、第一印象が最悪だったそうな。初対面時に携帯で写メを撮りまくり、迷宮に関しては他人事みたいに丸投げしようとしたんだって。丸投げするなら連邦で抱え込んで、日本に(びた)一文落ちないようなシステムを構築してやろうかと、けっこう本気で考えたらしい。迷宮が金になるって聞いた途端食いついてきたんだってさ。私の忍耐は褒められて良いはずです、とはリアナさんのお言葉にございますよ。なんていうか、ホントにすいません。

 しかも閣議決定すら経ずに、連邦との連携をほとんど独断で決定したようなんだよね。その結果があの会見生中継であると。それって法的に認められるの?首相だからってなんでもありじゃなかろうに。不信任モノじゃね?政府はその事実をひた隠しに隠して事態を進めてるんだってさ。って隠しきれるものなのかなぁ?総選挙も近いんじゃないの?選挙ってスゲェお金掛かるんでしょ?何やってんだかなぁ。

 なんてことを聞かされた後で、これはここだけの話でって言われてもねぇ。むしろ最初から聞きたくなかったよ!


 結局、リアナさんは飲みまくり、一人で喋りまくって轟沈してしまいました。そんなところで寝たら風邪ひきますよ?お行儀悪いですよー、パンツ見えちゃいますよー。


「いやー、何ていうかさ、たいへんそうだねぇ。」

「話には聞いていましたがここまでとは思いませんでした。わたしには、楽しそうでずるい、代われなどと言っていましたが、冗談ではなく本音だったのでしょうか?普段は我を忘れるほど深酒するようなことはないのですが。」


 日本(うち)の首相がホント申し訳ない。


 表座敷も屍累々ですよ。後片付け大変そうだなぁ。宇宙エルフさんって酒癖悪い人が多いんだろうか。なんかジョッキサイズのコップ@宇宙エルフさん用で日本酒ガンガンやってたけど。爺ちゃんたち帰ってきて、あまりの惨状にびっくりしてたよ。


「そんで?あたしはどこで寝ればいいんだい?」


 そろそろお開きにしますか?そんじゃいよいよ表座敷片付けないとね。宇宙エルフさん用品は全て小さいから、片付けにも気を使いますよ。迂闊に触ると壊しちゃいそうですよね。取り敢えずタオルで包んで、部屋の片隅へまとめておきましょう。あとは明日、自力でよろしくです。

 客用布団はニアンさん用。足が出ちゃいますけど、それしかないので文句言わないでくださいよ。あとは座布団を敷き詰めて、屍と化した宇宙エルフさんたちをその上に並べていく。なんか美少女フィギュアを敷き詰めたみたいになっちゃいましたよ。掛け布団はないです。暖房弱めに入れとくんで、それで勘弁してください。


 僕も付き合わされて、あくまで付き合わされてですからね?誤解しないでくださいよ?けっこう飲んだはずだったんだけど、全然酔ってないような気がするんだけど。おかしいなぁ、僕、そんなに強くないんだけど。


「それはもしかしてスキルでアルコールが解毒(デトックス)されているのでは?」

「あー、自動回復っすかー。二日酔いとかしないんすかねー。そりゃまた便利なこってすなー。」


 なんだそれ?微妙なスキルだなぁ。二日酔いがないのはありがたいけど、酔えないんじゃ何のためにお酒飲むの?それって何が楽しいの?って話になっちゃう。あ、いかんいかん!今日のはお屠蘇だったよ。しつこいけど大事なことだった。それにしてもニーナさん、言葉変だよ?もう寝ましょうか。




 そんな骨休みのお正月は過ぎ、僕たちは再び迷宮へ向かうのです。なんか余計に疲れた気がするよ、まったく。


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