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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
23/28

23:ニアン軍曹のスパルタ探索行

 出てくる魔物を斬り倒してひたすら奥へ奥へと進んで行きます。1階を突破、2階も突破して初の3階へ到達です。2階の探索、全部は終わってないんですけどね。


「んなもなぁ後でゆっくりやんな!あたしがいる間は、ひたすら奥へと進んでもらうぜ。そういう話になったんだからよ。3階の魔物は・・・なんだよイモムシかよ、シケてんなぁ!せめて蜂くらい持って来いよ!」


 はい、3階の魔物は巨大イモムシ【ジャイアントキャタピラー】でしたよ。長さ1メートルくらいの円筒形の体は蛍光グリーンで、黒と蛍光イエローのド派手な模様があるアゲハの幼虫です。なんでアゲハって解ったかって?そりゃあ解りますよ、臭角出して威嚇してますもん。臭角ってのはアゲハの幼虫が頭のあたりから出す、先が二股に分かれた黄色や赤の角のことね。独特の臭いを発して外敵を撃退するためにあるんだ。これはアゲハチョウ類の幼虫に独特の特徴なんだよ。魔物は成長しないから、アゲハチョウに羽化することはないんだけどね。ちょっと見たかったかも。

 ていうか、既に臭いわ!結構キッツイなー!しかもこいつは糸を吐いて絡め捕りにきやがる。結構めんどくさいヤツだよ。だいたいお前ら草食だろうが、ミカンの葉っぱとか人参の葉っぱとか。それが人間襲うってどういうことだよ。家の作物食い荒らしやがって、成虫が綺麗だからって容赦しねぇぞゴルァ!


「おらおら!サクッと倒せ!サクッっと!」


 ニアンさん声が変ですよ?って、鼻を押さえてたんですね。納得しました。ミラさんとニーナさんも鼻を押さえて、さっさと倒せオーラを放ってました。すいません、さっさと倒します。で、倒しました。糸に気を付けて突きまくれば僕の勝ちですよ。囲まれたらヤバそうですけどね。イモムシが消えたら臭いも消えた。なんなら糸まで消えた。迷宮って換気悪そうだもんね、臭いが消えるのは大歓迎だよね。


「そうかい?煮炊きしても平気だぜ?生木燃しても平気だったしよ。」


 生木?やったんですか、ニアンさん?やったんですね。なんというチャレンジャー!ていうかガサツが過ぎませんかねぇ?


「あたしがやったんじゃねぇよ!」


 聞くところによると、当時のニアンさんのお仲間さんだそうです。ホントかなぁ?あ、ホントですよね!僕、ニアンさんがそんな事するなんて変だなーって思ってたんですよ!アイタタタタ!ホントですって!だからそのバカみたいな握力で、頭を握り潰そうとするの止めてください!継ぎ目がズレて中身が漏れちゃう!


 迷宮内の換気は非常に良好とのことですた。換気というか迷宮さんが一定の環境を保ってるだけなんだけどね。

 これは話してなかったよね?迷宮おトイレ事情。その辺でします、気になる人は砂とか掛けておきます、迷宮さんが片付けてくれます。以上。迷宮さんはそういう異物が大嫌いなんだってさ。自衛隊が運び込んだ土砂が、すぐに片付けられたのもそういうことなんだね。温度が一定みたいだから、根菜の保存とかによさそうだなって思ったけど、迷宮さんに片付けられちゃうのか。残念だ。ちなみに迷宮さんの一番嫌いな異物は探索者だろうねー、はっはっは。




 魔改造された真・エスカミリオンは(それはもう止めようよ)絶好調です。非常に使いやすくなりました。重量とバランスは大事なんですね。斬撃にも簡単に力が乗りますよ。ちょっと、いやかなり重くなりましたけど、鍛えろ!の一言で片が付いちゃいました。ですよねー。ニアンさんとニーナさんのドヤ顔がちょっとムカつく。この人たちドヤ顔多いな!


 そういえば、寝惚けてて半分夢の中で聞いてたんだけど、ミスリルって何さ。合金?化合物?純金属?原子番号は何番なんですかねぇ?と嫌味たらしく聞いたら、ミスリルはチタンですよってさ、あれー?例のあれか、宇宙ではチタンのことをミスリルと呼んでいると、そういうことなんですねと思ったが、それも違うと否定されました。ミスリルとは強大な魔力に晒されて変質して魔素(マナ)が固定したチタンで、迷宮以外ではまず産出されないんだってさ。あー・・・うん、突っ込むだけムダなんでしょ?解ってるよ、解ってるけどさ、これだけは突っ込ませてよ。どんだけ物理法則無視してんねん!迷宮さん、あんた何者だよ!宇宙産の謎生物だよね!知ってたよ、チクショウ!!(僕は過負荷によりフリーズしました、再起動(リブート)するまでしばらくお待ちください。)


・・・

・・


 お見苦しいところをお目に掛けまして申し訳ありませんでした。なんとかリブートいたしました。で、なんだっけ?ああ、ミスリルね。金属の中には特に魔力に対して感受性が高いのが何種類かあって、その代表格がチタン48なんだってさ。原子に魔素を取り込んで変質することを魔化といい、魔化したチタンがミスリルであると。魔素ってのは素粒子なんですかねぇ?他に有名どころだと、感受性が高いのは銅なんだってさ。魔化した銅ってオリハルコンですか?って聞いたら、よく知ってましたねと驚かれた。やっぱりあったか、オリハルコン。何でもありだな、もう。


 いつもの如く立て板に水で語るミラさん、へー、ほー、為になるっすと大きなリアクションで相槌を打つニーナさん、突っ込みたいのをぐっと堪えて黙って聞いてる僕。


「おい、いつまでもくっちゃべってねぇで次行こうぜ、次。」


 ニアンさんが焦れちゃいました。




 往路は僕独りがひたすら戦って進みます。頃合いをみて遅めのお昼休憩を取ります。そこで折り返して、復路は僕以外が戦闘して僕は後をついていくだけです。日帰り探索行(ツアー)ですね。ニアンさんはそれが不満みたいだけど、迷宮でお泊りとか嫌ですよ。早くスキル使えるようにならなくちゃ。

 復路の速いこと速いこと。ミラさんとニーナさんの魔法攻撃にニアンさんの剣撃で魔物は瞬殺です。たぶん剣撃だと思うんですよ、目で追えないですけどね。踏み込みが速くて剣速も速い。いやー『疾風ニアン』ですねーと言ったら、マジでやめろ殺すぞと怒られちゃいました。迅雷のほうがよかったのかな?失敗失敗。

 帰ったら今度は薪割り修業です。今日こそは一本キレイに割るぞ。今日も割れませんでしたー!チクショー!




 次の日は4階に到達しました。魔物は(イナゴ)でした。全長50センチの大イナゴ【ジャイアントローカスト】です。また虫だよ。ここって虫王国なんですかね?

 角を曲がったら通路の様子がなんかぼこぼこしてて、おかしいなと思ったら大量のイナゴが一斉に飛び立ちました。もうパニックですよ。思わず炎の魔力溜めブレスで一掃して、ニアンさんに怒られました。せっかくの飛行型魔物なんだから、戦い方を学ぶために近接で云々。勘弁してください、もうちょっと数が少ないときに頑張りますから。それにしてもイナゴめ、お前らも草食だろうが。佃煮にして食っちまうぞ。


 ところで、蝗という漢字は本来イナゴではなく、ワタリバッタやトビバッタを指す漢字だそうな。英語のlocustもこれに当たる。

 このワタリバッタは稀に相変異を起こす。孤独相から群生相だ。ボッチも群れると狂暴化するってことだよ。乾燥地帯に多いんだけど、大量発生し長距離飛行形態となって食物である草を求めて集団で移動するようになるんだ。その数、実に数億~数千億匹、空を大地を埋め尽くすバッタ、バッタ、バッタだ。これを飛蝗(ひこう)という。

 飛蝗が通った後はあらゆる緑が短時間で食い尽くされ、人間は飢饉一直線である。これを蝗害(こうがい)という。聖書や中国の史書に度々登場するこの蝗害、日本では無縁であるが故に種は違うけど稲の害虫であるイナゴが訳に当てられたということらしいよ。

 ちなみに、聖書では昆虫を食べることは禁じられているが、唯一の例外がこいつらバッタ類だ。どうやらコオロギもOKらしい。世界最大のベストセラー、THE BIBLEにも認められた食材イナゴ。さあ、みんなもレッツ・トライ・昆虫食!詳しくはグ○グル先生に訊いてね。




 5回に到達しました。魔物は蟷螂(カマキリ)【ジャイアントマンティス】です。ついに来た、完全肉食性の魔物です。天性の捕食者(プレデター)です。得意技は待ち伏せです。でもやっぱり昆虫でした。虫多いな。

 中脚と後脚の4本で体を支え、翅を広げ、上体を起こして前脚の鎌を開いて全力で振り上げる、威風堂々の威嚇のポーズです。頭の位置は僕よりも高いです。デッケェ!&カッケェ!こちらも全力で相手をさせていただきます。佐藤幸永、参ります。

 確かにカマキリは天性のハンターだが、カマキリの鎌は本来、獲物を捕まえて手繰り寄せるためのものだ。捕まらなければ怖くない。悔しかったらハリガネムシでも出してみやがれ。やっぱキモいんで止めてください。

 無造作に伸ばしてきた左前脚を剣鉈槍で斬り飛ばす。カマキリの鎌は呆気なく節から切断されて宙に舞い、返す刃で頭を斬り落とした。ちょっとはマシな斬撃を放てるようになった、と思う。


 そんなこんなで毎日激闘(自分比)を繰り広げて、年内最後の探索にすることにした12月30日、5回の最奥に到達しました。初めてのボス戦です。


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