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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
22/28

22:真・エスカミリオン降臨

「武器の魔改造終了したっす!早速試してみてくださいっす!」


 早朝からテンションの高いニーナさんです。徹夜明けですか?お肌に悪いですよ?僕は眠くて堪らないんですけどね。ぬくぬくお布団でゴロゴロしていたいのです。


「つか魔改造言うなし。」

「何を言ってるんすか、魔法で改造したので魔改造で間違いないっす!」


 いや、そんなドヤ顔で言われましても。




 微妙な雰囲気になってしまったため、昨日の探索を早めに終えると、ニーナさんは剣鉈槍の改造のために赤トンボで母艦(ベース)へ向かった。剣鉈槍をビニールフィルムっぽいもので包み、発泡ウレタンっぽいもので固めて、6本の脚で抱えて持ってっちゃったよ。聞いたら塩化ビニールフィルムと発泡ウレタンなんだってさ。なんだよ農ビかよ、超素材じゃなかったのかよ!

 それにしても、赤トンボはさすがの純作業用、すげぇホバリング性能だね。いいジャイロ使ってんだろうな、空中で微動だにしないもん。翅の動きがすんごいよ。目視?無理、無理。これは制御技術がスゴイのか、それとも操縦者の腕なのか。両方だよね、きっと。


「てゆーかさ、赤トンボって大気圏離脱できたんだね。どんな超技術使ってんだよw」

「赤トンボとはニーナの工作艇(ドラゴンフライ)ですか?大気圏離脱なんてできませんよ?成層圏あたりがせいぜいですね。」

「つかお前さん、羽ばたき飛行機(オーニソプター)が大気圏を突破できるわけがねぇだろうが。大気の濃いとこしか飛べないんだぜ?頭、沸いてんのか?」


 いや、だから!できるはずないのに赤トンボで向かったから不思議だったんだろ!?プロペラ機の限界高度くらい知ってるよ!羽ばたき機も似たようなもんでしょ?ああ、そうか、赤トンボで最後まで飛ぶ必要はなかったね。どっかでシャトルかなんかに乗り換えればいいんだもんね、僕が悪かったよ!


「どうも話が噛み合わないと思うのですが。もしかしてユキさん、私たちの母艦(ベース)が宇宙空間にあると思ってます?」


 普通は衛星軌道上とかにあると思うじゃんね?宇宙船なんだし。ところがどっこい、母艦は普段は成層圏に静止してて、ステルスしてるんだってさ。母艦に用があるときは、赤トンボで向かうというより、母艦に対流圏まで迎えに来てもらうんだって。それってエネルギーの無駄使いじゃね?解せぬ。


「そうですか?連絡艇を準備する方がスペースとエネルギーの無駄だと思うのですが。わたしたちの母艦は3000メートル級の小型艦ですから、直接地表まで降りてもそんなにかわりませんよ。重力制御と慣性制御があればこそですが。」


 そうですか、3キロメートルは小型の範疇なんですね。御見逸れいたしました。


「それにしてもよ、宇宙空間を飛ぶドラゴンフライかよw幻想的(ファンタジー)だな、おいwww」


 あなたの方がよっぽどファンタジー向きだと思うんですけどね、大猫女さん。腹抱えて笑ってんじゃありませんよ、まったく。




 そんなおバカな会話をしながら何をしていたかといいますとですね、特訓です。僕がミラさんとニアンさんに(しご)かれてましたよ。PTってやつです。隠語のほうじゃないですよ、念のため。格納庫で古い斧を見つけたのが運の尽き、薪割りをやらされました、しかも生木で。爺ちゃんめ、斧ならあったはずなんて余計な事を教えやがって。

 そんな爺ちゃんは、大猫女のニアンさんを見て腰を抜かしてました。婆ちゃんは、あらあらまあまあと驚きを華麗にスルーして、孫をよろしくお願いしますなんて普通に挨拶してた。僕には婆ちゃんのリアクションが読めなかったよ。


 ニアンさんにはまいるよ、ホント。薪がないもんだから、適当に見繕ってやるよと言っていきなり立木を大剣で切り倒そうとしたんだけど、止めて!それ山桜だから!春になると綺麗な花が咲くんだよう、やめたげてよう。夏になると毛虫天国だからイラッとするけどさ。桜の代名詞といえばソメイヨシノなんだけど、僕は山桜の方が好きだな。ソメイヨシノは花が白過ぎるんだよ。

 なんだよしゃあねぇなと、次にニアンさんが選んだのは(けやき)だった。それも止めてよ!その木、めちゃめちゃ堅いんだから!裏山の自然破壊に僕は反対します。結局、ニアンさんの着陸艇がへし折った木を回収して使うことにしたよ。松だったorz


 直径10センチくらいの細い松だったので、チェーンソーで適当に輪切りにして薪割りに使うことにしたんだけど、この時点で既に解る(ヤニ)っぽさ。松と言えば松脂だ。英語でロジン(rosin)だ、ロジンと言えば滑り止めだ。もしくはパインタール(pine tar)だ。パインタールと言えばスピットボールだ。スピットボールは退場だ!関係なかったねw あ、こういう作業をするときは、キチンとゴーグル付けましょうね。

 爺ちゃんが言うことには、生木の松は割れにくいんだってさ。これなら欅のほうがマシだったって。どっちにしてもあんまり関係なかったかな、だって斧がまともに当たらないんだもん。

 最初の一振りは薪にかすりもせず、斧が台木に食い込んだ。その衝撃で薪がコテンと倒れたよ。シュールw 二振り目はちょっとかすって、薪が真横に吹っ飛んで行った。振れども振れども当たりゃしないよ。狙ったところに振り下ろせない。偶に当たっても刃筋が通ってないから、薪が飛んで行って終わり。斧とか鈍器に近いんだから、少々刃筋が通ってないくらい何とかなるはずじゃなかったの?ホント難しいわ、これ。握力はなくなるし腕はビキビキ背中はピキピキ、昨日はとうとう一本もまともに割れることなく薪割り修業は終了しました。

 その後、ニアンさんが無造作に真っ二つに断ち割るのを見せつけられましたよ。猫顔でもドヤ顔してるの解るんですね。盛大にへこみましたとも、ええ。




「というわけで僕、昨日の疲れが全然抜けてないんだけど。」

「まあまあユキさん聞いてくださいよ!まずは樹脂加工なんすけど、含浸することによって硬く粘り強い柄になったっす。おっと成分は秘密っすよ。この深く美しい艶を見てくださいっす。さらに芯も入れてみたっす。素材はなんとタングステン鋼っす!魔法で木材を刳り貫いて、タングステン鋼を軟化させて押し込んだっす。いやー、苦労したっすよ!タングステンは魔法との相性悪いっすからねー。それはもう少しずつ少しずつっす。重くなり過ぎたり、バランス崩したりしないように細心の注意を払ったすよ。刃も研ぎ直して、固定もバッチリ、口金カッチリ、しかもユキさん好みの指かけ(キリオン)付きっす。石突も追加しといたっすよ。で、素材はなんと!聞いて驚くなっすよー?じゃーん、ミスリルっす!」


 ふーん、そーなんだー、むにゃむにゃ。

『ペシン!』


「ちょっとニーナ、あなた自重という言葉を知っているのかしら?」


 ん~?何の音かと思ったら、な~んだ、ニーナさんがミラさんに引っ叩かれた音か。すよすよ。


「お言葉ですが主任、この件に関しては自分に一任されたはずっす!任された以上は、さらには他人様が命を預ける大切なツール、とても手抜きなどできないっす!これは工作班の総力を結集し、持てる全ての知識と技術を注ぎ込んだ、自分ら渾身の一品すよ!」

「だからそれを自重しろと言うのに、まったく。あなたたち随分ノリノリでやっていたみたいだけれど?これどうするのよ?うかつに人前に出せる代物じゃなくなってしまったじゃないの。」

「まあまあ、いいじゃねぇかよ。ちったぁマシなモンになったじゃねぇか。これで斬れなきゃあ、この坊主の腕が悪ぃってこったな。ところでよ、こいつはこんな状況で何時まで寝てる気なんだろうな?」

「「さあ?」」


 なんでお三方が雁首揃えて、僕の部屋の、しかも枕元で話してるんでしょうね?僕のプライバシーはどうなってしまったんでしょうか?解せぬ。

 勿論、即刻叩き起こされて迷宮へ向かうことになりましたとさ。外は冷たい冬の雨、僕は筋肉痛、寒いと痛さも倍増だー!解せぬ。


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