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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
17/28

17:お金とスキルの反省会

「本日はお疲れ様でした。」


 僕の部屋のテーブルの上には、今日の戦利品の魔石8個と、千円札5枚が置かれている。え?5000円にしかならないの?魔石1個625円?なんかショボくね?


「第1階の戦利品であるLv1の魔石に何を期待していたのかしら?これでもかなり色を付けているのよ?本来は二束三文よりはましな程度なのだから。」

「でもこの魔石1個でギンヤンマが2か月使えるって言ってたじゃん、この前。だからもうちょっともらえるのかなぁ・・・なんて・・・・・・」


 ミラさんに睨まれました。怖いです。語尾が尻切れトンボになっちゃいました、ギンヤンマだけにって・・・あっ!すみませんでした許してください!


「もう諦めたからいいわ、好きに呼んでちょうだい。わたしは2か月間維持できると言ったつもりだったのだけれど?いい?翅を動かす生体エンジンは維持するだけで魔素(マナ)を使うの。魔素を常に供給しないとエンジンが死んでしまうのよ。エンジンだけじゃない、他にもある生体パーツをあの時の魔石1個で死なせずに2か月間維持できるということよ。飛んだり本格稼働にはレベル1の魔石では心許なさすぎるわね。」


 あ、そうなんですか・・・。ニーナさんもうんうんと頷いてますよ。この人は常にアクションが大きいよね、リアクションもだけどね。


「表層や上層なんてアルバイトみたいなものよ。せめて中層まで潜らないと稼ぐのは難しいわね。誰も彼も表層で稼げるなら、深く潜ろうなんて思わないでしょう?だから浅い層の低レベル魔石の買取額はわざと抑えられているの。稼ぎたければ実力を付けて深く潜りなさいと誘導しているのよ。」

「表層や上層は人も多いんすよ。中層になると結構減るんすけどね。下層・深層はさらに減るっす。人が少なきゃ他人に気兼ねなく魔物を狩り放題っすよ。」

「そうね。迷宮で稼いでいる人は下層や深層に潜れる実力がある限られた人たちなの。価値の高い魔石を落とす魔物を好きに狩れるからこそ実入りがいいというのもあるわね。」


 話しが違いませんかね?なんか僕、騙された気がするんですけど。もっと簡単に稼げるような話しぶりだったのになぁ。


「またしても随分と失礼なことを思ってるようだけど、どんな仕事でも簡単に稼ぐなんてありえないことよ。でもあなたの場合は心配いらないわね。きちんと深層に潜って稼いでもらいますから。」

「そうっす!あんなチートスキル持ってるっすから、すぐ深層にたどり着くっす!他にもチートスキル持ってるっすよね?将来荒稼ぎに違いないっすよ!」


 チートチート煩いよ。そんなに煽らなくても行くけどさ、迷宮の深いところへ。

 今日だって自給800円くらいにはなってるのか。そう考えるとそんなに悪くないよね、あくまでバイトとしてだけど。危険度は普通のバイトより遥かに高いんですねどね。もっと稼ごうと思ったら更に危険度が高くなるわけですね、わかります。

 表層だと2~3人で1日探索して、1人当たりの手取り3~4000円くらいになるように設定されるんだってさ。8時間労働だとして自給500円弱。あれ?最低賃金割り込んでるぞ?その代わり非課税所得とすることで射幸心を煽って、深層へ向かわせようとするんだってさ。汚い!大人って汚いよ!

 でも、迷宮を放置しておくと幼生体爆誕という災害が発生するから、深層で活躍できる人材は必要だ。今、日本の迷宮は50個を超えてるんだって。上手くいけば日本はエネルギー輸出国になれる。日本国内の迷宮で他国に美味しい思いをさせることはないということで、法整備が急速に進んでるんだってさ。日本の迷宮は、日本が管理して日本の国益とする。深層から安定して魔石を持ち帰る、そちらの面からも人材の育成は急務なんだ。

 ちなみに迷宮探索者は個人事業主、つまり経営者であって労働者ではないから、最低賃金法の適用外なんだってさ。農家とおんなじだったよ。


 実際のところ僕らの探索ペースはすごく遅いんだよ。6時間も迷宮にいて魔石が8個って多くないんだってさ。45分に1個ペースだもんね。休憩考えると1時間に1個かな。人大杉の迷宮の表層ならそのくらい普通らしいけど、家の迷宮には僕らしかいないわけでもっと稼げていいはずなんだ。1戦ごとに解説貰ったり話し合ったりしてたから、このペースも仕方ないんだけどね。




 僕が持ってる12のスキルの内、効果が解って実際使えたのは『オートマッピング』、『仮想表示(ヴァーチャル・ディスプレイ)』、『鑑定』、『ブレス』の4つだ。


 僕には今は使えないけど、過去に例があって内容が解っているのが『異空間収納(アイテムボックス)』、『自動回復(オート・ヒーリング)』、『魔力感知』、『成長力増強』の4つ。だけど、アイテムボックス以外は僕が知覚していないだけで、使えているはずというのがミラさんの意見だ。

 自動回復は自然治癒速度が大幅に向上するスキル、怪我が治りやすくなるスキルだね。回復力の強い人は傷がみるみる塞がっちゃうんで、傍からみてると結構不気味なんだって。一度、迷宮で怪我してみればわかるっすという意見はこの際無視で。他人事だと思いやがって!僕のこと嫌いなの?

 魔力感知は文字どおり魔力を感じたり、見たりすることができるスキル。一時、視界がおかしくなってたのは、このスキルの影響と思われるんだって。魔力の過多、じゃなくて多寡、流れなどが解るから、中学生当時やけに光って見えた青山さんは、結構な魔力を秘めていたってことなんだね。ふーん、3年越しの疑問解決だ。

 成長力増強はレベルアップにプラスの補正が掛かるスキルだってさ。いずれも常時発動だったり受動型の(パッシブ)スキルだから、アイテムボックスのような能動型の(アクティブ)スキルに比べて解り難いよね。アイテムボックスは説明の必要ないでしょ、よくあるチートスキルだからさ。


 さて、ここからが問題。『空間跳躍(ワープ)(マップ連動)』、『魔力操作』、『眷属オブジェクト作成』、『成長限界突破』、この4つが解らない。見当は付くけど正しいかどうか解らない、というのが正確かな。ミラさんにとって初見であり、過去の資料にも無くって、僕の固有(ユニーク)スキルなんじゃないかって。

 空間跳躍は迷宮内でワープできるスキルじゃないかな。というのも、迷宮には元々そういう機能があるらしいんだ。表層第1階と、上層・中層・下層・深層の各階層の一番上の階は相互に転移できるんだってさ。僕の場合はマップ連動の但し書があるんで、マップさえ作成されていればどこへでも任意で転移できるんじゃないかって。だとしたら相当便利だぞ。でも、迷宮さんはなんでそんな機能を持ってるんだろうね、簡単に奥に辿り着かれたら自分に不利なだけじゃん。もしかしたら僕如きに計り知れない何かがあるのかもしれないけれど。ミラさんの言うことにゃ「迷宮を理詰めで考察するなど無駄の極致です、こういうものだと漠然と理解した方が精神衛生上よろしいですよ。わたしはとっくに諦めました」ってさ。ミラさんでもそうなら仕方ない。

 魔力操作は魔力を操作できるんだろう、当たり前か。でも操作してどうなるのか、何ができるのかさっぱり解らない。

 眷属オブジェクト作成ってなんだろうね。魔物でも作って戦わせるのかな、アハハハハ!って笑い事じゃないんだってさ。ミラさんたちが一番注目してるのは、このスキルなんだって。魔物を作るには魔石が必要だ、と思われる。つまり僕は魔石を作れるんじゃないかって言うんだ。いやあ、どうなんだろうね?さらに言うとスキル結晶、僕の持ってるスキルをコピーしたスキル結晶が作れれば、僕の価値は無限大なんだってさ。スキル結晶量産計画、なるほどミラさんたちの目的のひとつはそれだったんだね。『どうも、佐藤幸永です、生けるスキル結晶生産工場やってます。日がな一日、生命維持装置に繋がれて、スキル結晶を量産するだけの簡単なお仕事です。』わあ、楽しくない未来だ!連邦はそこまで非人道的じゃないと信じよう。


「仮に私たちの仮説が正しいものとするとユキさん、あなたは自動で作られたマップを見ながら好きな階に転移して、魔物を倒して得られた魔石をアイテムボックスに詰めていくらでも持ち帰ることができるのです。素晴らしいことだと思いませんか?まさに迷宮探索の常識を根底から覆す事態です。もしそのスキルコンボを他人にコピーできるとしたならば、探索の効率は飛躍的に高まることは間違いないでしょう。」

「ホントにチートの権化っす。一つずつでも大概チートっすけど、コンボになるとさらに凶悪っす。今までチマチマやってたことがホント馬鹿らしく思えるっすよ。」

「連邦があなたを守り通すのに戦争も辞さないと覚悟を決めているのもお分かりいただけたものと思いますわ。」


 止めて、そんな大事にしないで!僕のせいで宇宙戦争とかホント勘弁してください。そんなことになってしまったら、心が痛すぎるわ。


「でもね、エネルギー問題は何時どんな時代どんな世界にとっても永遠の課題と言えるものよ。前にも話したけれど、今使われているエネルギーの中核を成すのは魔素(マナ)エネルギーなの。魔石の覇権を握ることは銀河のエネルギー体系の主導権を握ることなのよ。今の魔素エネルギーの力関係を覆すような存在が現れたら、戦争を起こしてでも手に入れたいと躍起になってもおかしくないわね。勿論かなり大袈裟に話してはいるけれど、決して有り得ない未来ではないのよ。」


 日本だって有り余る魔素エネルギーで、世界を牛耳ることもできるかもしれないんだってさ。日本による世界のエネルギー支配(パクス・ジャポニカ)?碌なことになりそうにないから止めておこうよね。政治家の皆様には自重をお願いしたいところです。ホント、マヂで!


「あとはあなたの暗殺かしらね。他国に利するばかりで自国の利にならないのならば、いっそのこと殺してしまえと短絡的に考える者がいてもおかしくないわね。殺してしまえばどこの利益にもならなくなるもの。」


 もう止めて!僕のライフはとっくに0よ!


「だ、大丈夫っすよ!宇宙は今、緊張状態じゃないっすから、そんなことにはならないっす!主任!最悪の未来像だけを(あげつら)って、相手を脅して利益を誘導するのはフェアじゃないと思うっす!!」


 おお、ニーナさんありがとう!普段軽いノリのニーナさんだけど言う時は言うんだね。カッコイイっす!ミラさんも笑顔だし、まあいつもの出来の悪いジョークの類だったんだろう。そうだよね?そうだと言ってよミラさん。


「ええ、そうね。わたしが悪かったわ。ごめんなさい。今日はもう休みましょうか。ユキさん、明日は・・・」

「明日は当番で午前中は学校だよ。」


 農林高校は当番(これ)があるんだよね。生き物を扱ってるから仕方ないんだけどさ。僕は栽培専攻で畜産はコースが違うんだけど、同じ生産科学科だからね。


「では午後から少しだけ入りましょう。ところで、今日ずっと気になっていたのですが、ちーととは何でしょうか?」

「「!!」」


 え?今更それなの?えーっと、チートとはズルとかそんな感じの・・・ん~・・・何て言ったらいいのかな。説明するとなると難しいな。そこは察しろなんだけど。


「(ぶっちゃけ自分、ノリで言ってるだけでよく知らないっす。ユキさん説明頼むっす。)」

「(こっち見んな!僕も似たようなモンなんだってばさ。)」


 ミラさんはニコニコしながらも不思議そうにこっちを見てる。もう寝ましょうよ、ね?


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