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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
16/28

16:説教と地図

 迷宮第1階、前と同じく真ん中の階段から進入しました。


 大ナメクジを発見する。魔力付与(エンチャント)された剣鉈槍(エスカミリオン)で突く。大ナメクジは魔石を残して消え去る。

見る、突く、相手は死ぬ。見る、突く、相手は死ぬ。えぇ~!簡単過ぎねぇ?もはやルーチンじゃん。初戦の苦労ってなんだったのさ。ムリゲーかと思ってたら、突然ヌルゲーになったでござる。エンチャント様様だね、楽勝~♪


「(主任、やっぱ自分、必要ないんじゃないすかね?)」

「油断はなりませんよ。被験者はお調子者です。そのうち魔法の効果が切れているにも関わらず調子に乗って攻撃を仕掛け、効かなくてパニックに陥ります。」


 はい、そこ、煩いよ!僕のこと馬鹿にしすぎじゃないですかね!?自分のギャグがスベったからって、僕に当たらなくてもいいじゃんね。しかもそんな聞こえよがしに言わないで、言いたいことがあるならハッキリ言ったらいいじゃないですか。それ以前にさ・・・


「そもそも、この魔法ってどれだけ効果が続くか教えてもらってないんだけど。」

「ええ、教えていませんよ、訊かれませんでしたから。」

「え!?」

「少なくとも『一時的に』『魔力が尽きるまで』としか伝えていませんわ。いつまで効果があると思っていたのですか?魔法効果の有効時間を尋ねておくくらいの考えは持っていただきたかったですわ。何でもかんでも手取り足取り教えてもらえると思うのは間違いです。教えてもらったことが100%正しいなどと鵜呑みにするのも間違いです。わたしたちが誘ったことではありますが、わたしたちもいつでもあなたをフォローできるものではありません。実際に迷宮で命を懸けるのはあなたです。あなたの命を守ることができるのはあなた自身しかないのです。ならばこそ、あなたが自分で考え実践して検証してこそ身になるのです。わたしがあなたをお調子者と呼んで憚らない理由の一端です。」


 ・・・あうあうあう、いきなり何?そんなことはわかりきった・・・。


「魔物を簡単に倒せるなどと思ってはいませんか?それはここが表層の、しかも1階という入口からほんの僅かばかり進んだ場所でしかないからです。迷宮は稼げる場所ではありますが、同時に多くの死者の出る危険な場所です。長年迷宮と相対してきたわたしたちでも、今でもそれなりの犠牲者が毎年出ています。このところあなたは随分浮かれているように見受けますが、そんなことではユキさん、あなたは早晩死にますよ。その時あなたに仲間がいたならばあなたは仲間も殺します。」


 Aさん、いやミラさんは感情的になるでもなく、じっと僕の目を見つめて話す。その淡々とした説教が心を抉る、気圧される。本当に、本当に本当の真っ正面から切り込んでくるんだな。そんなことはないと駄々をこねて突っぱねるのは簡単だろう。でも、それだと僕はそのうちどこかで死ぬんだな。僕のおバカが仲間を死なせるのか、それは嫌だな。僕はどうやら本当に調子こいたおバカだったみたいだ。それを素直に認めてしまうのはあまりにも悔しくて、情けなくもあるけれど。


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


 取り敢えず絶叫しといたった。ああ、スカッとした!ミラさんはそんな僕を変わらず真剣に見つめてる。そんなミラさんの説教中ずっとオロオロしてたニーナさんは、僕の絶叫にビックリして固まっちゃったみたいだ。僕は深々と頭を下げた。


「すんませんした。ホントに調子こいてたみたいです。これから心を入れ替えて頑張ります。」


 あなたにはきちんと話せば理解してもらえると信じていましたと、ミラさんは笑顔で僕の謝罪を受け入れてくれたよ。頑張ろう、この信用を損ねることのないように。頑張ろう。


「迷宮で大声を出すのも禁止です。魔物を呼び寄せますから。ほら、ジャイアントスラグが寄って来ましたよ。片付けてくださいな。」


 ホント、スイマセンでした!ナメクジ野郎は一撃で片付けました。エンチャントがまだ効いててよかったよ。




 その後も探索を続けたんだけど、エンチャントが有効だったのは30分くらいだった。それくらい経ったら武器を薄らと覆ってた光が消えた。ああ、効果が無くなったんだなってわかったけど、移動中だったから気が付いただけで、戦闘中だと微妙だな。マジでパニックになってたかも。


 カロ○ーメイトで昼食を取って捜索続行、2階への下り階段を発見したのは午後2時を少し回った頃でした。


「では2階に足を踏み込んだら本日の探索は終了としましょう。」

「少し早くない?1階ってまだ全部見てないけど、コンプしないの?」

「そういえば!マッピングしてなかったっすよ!すいません、忘れてたっすー!」


 突然ニーナさんが大声を出してオロオロしだしたけど、ああ、マッピングねぇ。


「ユキさん、どうですか?」

「えっと・・・紙に書き起こしたがいい?」

「な、なんすか!?どういう事っすか!?」

「ユキさんは『オートマッピング』というスキルを持っているのです。初見のスキルにも関わらず、迂闊にもわたしも事前確認を怠ってしまったのですが、迷宮の地図を作成するスキルと推察します。いかがですか?」


 初見!?『A・(オートマッピング)』こそレアスキルなのか?可視化したマップを見ながら考える。これまで進んできたルート周辺が緑色の線で描かれた二次元マップだね。方眼紙マップじゃなくてフリーハンド、斜めのラインもあるよ。青の▲が上り階段、赤の▼が下り階段、オレンジ⇒の点滅は現在地だな、身体の向きを変えると・・・矢印の向きが変わった!じゃあ、進行方向を上に表示ってのもあるよね!・・・地図が回った!なんて親切設計!


「うん、合ってるよ。視覚に捉えたら地図が作られるみたい。視線さえ通れば、結構な距離でも地図化されるみたいだよ。」

「なんすか、そのチートは。ズルすぎるっす!」


 ニーナさんが以前迷宮に入ったときは、マッピングが上手くいかずに相当苦労したらしい。地図を埋めていったら、繋がるはずのないところが繋がってみたり、その逆だったり。あそこが違う、ここが違う、いや合ってるなど大モメだったらしいよ。


「図面起こしは必須です。ですが今日はスキルの検証を優先しましょう。迷宮外でもマップは消えずに残るのか。また、残った場合任意のマップが見られるのか。次回の探索の時、マップは残っているのかなど確認したいと思うのです。それと・・・」


 ミラさんにしては珍しく歯切れがわるいな。なんか表情も冴えないし。


「それと?」

「ええ、本日わたしはユキさんに苦言を呈しました。勿論、必要と思えばこそだったのですが、それはわたしたちにも当てはまることだったようです。」


 ん?どういうこと?


「わたしはユキさんのスキルに関して自分の推論を元に行動し事前の確認を怠りました。ニーナはマッピングという迷宮の基本を忘れていました。」

「申し訳ないっす。」

「ニーナに関してはその遠因はわたしであると言えますので割り引いて考えなくてはいけませんが、3人が3人とも小さからぬミスをしていたのです。今日のところは撤収し、あり方を再確認したうえで後日再挑戦したほうが良いと思います。」


 なるほどね。こんな時なんてのは、こんなもんかも知れないよね。ミスってのは続くものというかさ。仕切り直しに賛成します。

 『オートマッピング』がミラさんの思ってるようなスキルじゃなかったら、僕たちいきなり遭難してたかもしれないんだな。1階だし、そんなあちこちうろついたわけでもないから、大事にはならなかったとは思うけど、記憶なんて当てにならないしね、大変な目にはあったかもしれないな。

 ニーナさんは巻添え乙な感じで気の毒ではあるんだけど、自分に任せるっすなどと言った手前、責任を感じてるみたいだ。

 ミラさんはいつもどおりに見えるけれども、結構落ち込んじゃってるんだろうな。でも、そんなのを表に出すまいとしてるんだと思う。真面目な人だから。


 一応、2階に足を踏み入れて、マップが切り替わったのを確認してから撤収したよ。今いる階層のマップが自動で表示されるみたいだ。任意で切り替えもできたよ。


「あ、そこ右だよ。」

「え?真っ直ぐじゃなかったっすか?」


 ヴァーチャル・マップで再確認。現在地がここで、上り階段がここだから・・・やっぱり右折だな。行きはほとんど一本道みたいに思ってたけど、帰りにみると意外と分岐が多くてびっくりしたよ。A・Mさんカーナビみたいなんだからルート案内があってもいいのにな、などと思っていると【現在地より目的地までの道程を表示します】の文字が明滅して、上り階段までの道のりがオレンジのラインで表示された。このルート、上り階段まで確かに合ってるわ。A・Mさん、マジカーナビ。きっと『現在地がここで、上り階段がここ』ってやったのがトリガーだったんだね。

 などと報告したところ、ミラさんは解り難かったけどホッと息をつき、ニーナさんは非常に解り易くズルいっすチートっすと憤慨していた。


 そして、本日は無事に迷宮から帰還いたしましたとさ。


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