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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
12/28

12:交渉というほどのものでもない

「取り乱してしまってごめんなさい。わたしたち連邦はあなたに提案をしたいの。」


 宇宙エルフさんはすぐに立ち直ったようです。僕ですか?立ち直れませんよ、そんなもん。フフ・・・フフフフ。


「なにをそんなに黄昏ているのかしら?既に起こってしまったことを嘆くのは建設的ではないわね。あなたはまだ未来に明るい希望を抱いたほうが良い年代でしょう?」

「あなたはまだって、うち・・・ミラさんは違うんですか?」

「わたしのことなどどうでもよろしい!今はあなたの将来の話をしているのです!」


 怒られました。でも、なんかおかしいぞ?宇宙エルフさんって年齢不詳なんだよね。何歳でも納得できそうなんだけど、もしかして結構なお歳とか?まさかね。宇宙人でも若くても女性は体重と年齢の話にはナーバスになるんだろう。きっとそうだ、だから睨まないでください、お願いします。


「んんっ!さて!連邦はあなたの将来に提案があります。あなたを迷宮対策のサンプルとして観察させてほしいのよ。その代償として連邦はあなたの将来をバックアップします。どうかしら?」

「いや、どうかしらって言われても・・・」

「まずあなたには迷宮を攻略してもらいます。あなたが迷宮から奪ったスキル、あなたの所有するスキルには希少なものがあるからどのように作用するのか検証したいのよ、それも長期的にね。例えば迷宮から奪ったスキルが次世代へ継承されるかどうか。具体的には将来あなたが子を成したときに能力が受け継がれるかどうかということね。他にも検証したい事柄はたくさんあるの。」


 実験動物(モルモット)になれということですね、わかります。いまではマウスやラットが主役らしいですけどね。どっちにしても齧歯類です、本当にありがとうございました。


「大前提としてあなたのプライバシーは保護されるわ。あなたの私生活に必要以上に干渉しないことをお約束します。それでも多少の窮屈は生じるでしょうからその代償、または協力の報酬として連邦は安全保障と情報と金銭面であなたをバックアップします。」


 あれ、意外と好条件のような気がするぞ?


「まず安全保障についてですがあなたの存在が公になった場合様々な干渉が起こり得ます。まずあなたが暮らすこの国から、この星の他の諸国から、そして銀河の連邦以外の諸国から。あなたの能力を取り込もうと強引な手段に訴えるケースも考えられますが連邦の力によってこれを排除します。あなたが市井の迷宮探索者(ダンジョン・ダイバー)と同様の生活を送れるよう手助けをいたします。」


 宇宙エルフさんがビジネスライクなしゃべり方に、いやお役所的というべきかな。それにしても、僕の立場はやはり面倒なことになってるようだ。最悪マジで実験動物コースもありうるな、これは。


「次に情報面でのバックアップですが、これは迷宮攻略のノウハウを実地で示して迷宮探索の技術向上を短期間で安全に行うものです。あなたには迷宮で長期間活躍してもらわなければなりませんので、技術向上と初期のレベリングは必須と考えています。必要な人員も連邦で用意いたします。」


 お仕着せパーティーで行こうってことですね。やっぱり探索者ってパーティーを組むんですね、ソロじゃなくて。できたらケモ耳のかわいい女の子を希望します!


「最後に金銭面ですが、これは迷宮で得られた魔石を連邦で買い取ることで対応します。さらに装備品など初期投資についてはこちらで負担します。もちろん日本円を準備しますのでご安心ください。」


 今、宇宙エルフさんの同僚さんたちが、迷宮の出現した各国政府と似たような条件で交渉中らしいよ。つまり、迷宮を災害ではなく資源として活用するノウハウを教え、魔石をエネルギー利用する技術を供与するから、その代わりに魔石を寄越せと。最初は8:2、連邦が8割ね、ぼったくりだね。技術の導入が進んで、この星でのエネルギー利用が進展したら徐々に割合を下げて、最終的には3:7になるよう契約するらしい。取り分3割でも、連邦の負担は輸送だけで安定供給につながるから益があるんだってさ。

 そこまで10年以上を見込んでるらしいけど、もっと早い段階で魔石は政府による専売ならぬ専買となるだろうってさ。昔の食管制度による米の政府買入みたいなものだね。今までの例ではだいたいそうなったらしいよ。貴重な戦略物資を横流しされたら困るからね。そこで政府の買入額(米価にちなんで魔石価かな)と、連邦の直接買取額に差が出る可能性がある。魔石価の方が安い場合には差額を補填してくれるんだってさ。魔石の買取額が品質に関係なく重さで一律ってケースも多いからなんだって。

 悪い条件じゃないどころか結構な好待遇のような気がするね。それにしても気になることが一つ、いや二つか。


「もし断ったらどうなるの?」

「断られたらわたしたちとしては残念ですが諦めざるを得ませんわ。でもその場合には、あえて言わせていただきますがあなたには健康で文化的な人間の尊厳を保った生活が送れる保障は無くなりますわ。あなたの好むと好まざるに関わらずにね。それはわたしたち連邦があなたをどうこうするという意味ではありませんので誤解無きようお願いしますわ。」


 やっぱりそうなっちゃいますよねー。まさに実験動物一直線ってことですよね、それって!宇宙エルフさんのいう条件で連邦に飼われたほうがましということかな。

 もう一つの問題は、宇宙エルフさんの言うことを信用していいのかってことなんだが・・・。絶対の信用はおけない。宇宙エルフさんにとって一番の優先事項は僕ではなくて連邦の、つまり自分の利益だ。当たり前だね。では全然信用できないかというとそうでもない。宇宙エルフさんは天使じゃない、かといって悪魔でもない。状況によって天使になりもすれば、悪魔にもなるだろう。僕に価値を見出している今は天使に近いが、本当に僕は宇宙エルフさんにとって価値ある人間だろうか。それがいまいち解らない。


「ねえユキさん、あなたは自分を『鑑定』したことがある?なければ一度試してご覧なさい。自分にむけて『鑑定』と念じればいいの。」


 自分に向けて『鑑定』?


【佐藤幸永 17歳 男性 Lv1

 [所有スキル]オートマッピング、仮想表示(ヴァーチャル・ディスプレイ)異空間収納(アイテムボックス)空間跳躍(ワープ)(マップ連動)、自動回復(オート・ヒーリング)、鑑定、魔力感知、魔力操作、眷属オブジェクト作成、ブレス(炎)、成長限界突破、成長力増強

[所有魔法スキル]

 Lv1回復、Lv1付与、Lv1錬金】


 ははっ、なwんwだwこwれwわw

変な笑いしか出ない状況ってのはホントにあるもんなんだね。


「突然のことであなたが戸惑ったり不安に感じる気持ちは理解しているつもりよ。わたしたちはあなたにそれだけの価値があると思うからこそ、わたしたちの勢力に組み込みたいと思っているわ。そこには打算しかないのかもしれないけれど、身内として取り込むからには全力で誠意を示すつもりよ。それは信じてちょうだい。」

「わかりました。でも返答はしばらく待ってください。家族にも相談したいと思いますので。」

「そうね、未成年のあなた一人で決められる問題ではないことは理解するわ。良い返答を期待しているから。」


 僕は契約する方にかなり傾いていたんだけど、でももう一押しが足りないな。何かもう一押しが。なんて思ってたら、その一押しはすぐにやってきたんですけどね。ちょっとご都合すぎませんかね?


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