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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
11/28

11:特異点

「これがそんな重要な戦略物資だったんだねぇ。」


 大ナメクジ戦の戦利品の魔石を矯めつ眇めつ眺めてみるも、ちょい綺麗な石ころにしか見えないんだよね。

【魔石:Lv1 品質:C3+】

あ、また謎の文字が。これってラノベとかでお馴染み、チートスキルの代名詞『鑑定スキル』ってやつじゃね?女の子のスリーサイズとか解ったりしないかな、あとは下着の色とかカップ数とか、カップ数とか。でもまてよ、女性のスリーサイズはファンタジー要素だって聞いたことあるぞ、実際を知ると夢が壊れる的な意味で。カップも【偽乳】とか表示されたらがっかりだ。やっぱ見えなくていいや。


「レベルが低いわりに品質の高い魔石ね、魔核(コア)のほうも期待できそうだわ。そうね、それ1個あればドラゴンフライをこの星の時間で2か月は維持できそうよ。品質C3+ということはその魔石の50%以上60%未満が魔核(コア)で3+という標準より少し高い濃度の魔素を含んでいるということなの。表層の魔物が落とす魔石にしては破格の品質ね。」

「な、なんでそれが!?」

「あら意外そうな顔ね。わたしも『鑑定』スキル持ちだもの、それくらい解るわ。『鑑定』が無いと迷宮対策エージェントなんて勤まらないわよ。」

「わたしも、ね・・・」

「ええ、あなたにも解るのでしょう?『鑑定』スキルを持っているのだから、ねぇ特異点。」


 またその言葉だ、『特異点』。特異点ってあれだよね、ブラックホールで重力が無限大になってどうこうって話だった気がするんだけど。違ったっけ?

 しかし、変な文字の正体はやっぱり『鑑定』だったのか。『鑑定スキル』ってそんなレアじゃないのかね、ちょっぴり残念。いやいや、そうじゃないだろ、騙されるな僕!人間は普通そんなことできないんだよ、普通はね!でも僕が普通じゃなかったらどうしよう。あなた人外ですよ?とか言われたらちょっぴり切なくて死ねる。


「この魔石はあなたが初めて獲得した魔石だから、記念に保存しておきなさいな。さて!」


 宇宙エルフさんは姿勢を正すと、僕の目平まで浮き上がり、僕の目をまっすぐ見るとこう言った。


「いままでのは前置きでここからが本題だと思ってちょうだい。あなたも気付いていると思うけど、そもそも迷宮や魔石の話をあなたのような一民間人に直接持ってくること自体おかしいのよ。本来は統治機構、殊に政府といったその国の最高意思決定機関に持ち込まれるべきものなの。」

「え?ああ、そうか!そういえばそうだよね!」

「・・・(汗)」

「・・・(?)」

「んんっ!えーっと、つまり・・・そう!わたしたちが直接一民間人であるあなたとコンタクトを取って交渉をしているのは、あなたが他と一線を画する一種異常な存在だからなの。異常に多い魔力然り、この星においては他にスキルを持っている個体なんて皆無に近いにも関わらず多くのスキルを所有していること然り、しかもそのスキルが明らかに迷宮に関連するものであること然りよ。あなたの存在はこの星の基準に当てはまらない。だからわたしたちは、あなたを特異点と名付け観察することにしたのよ。」


 魔力だスキルだ言われても困るんですけど。意味わかんないし。でも『鑑定スキル』があるんだから、スキルを持ってるってことになるのかな。で、宇宙エルフさんは僕のスキルと迷宮を関連付けて注目しているということか?

 なんかきな臭い話になってきたぞ。このまま連れ去られて人体実験(アブダクション)されちゃうんじゃないの?

状況を確認しておこう。僕は部屋のほぼ中央、座卓の前で胡坐だ、宇宙エルフさんは座卓の上だが胡坐じゃない。ちぇっ!それはさておき、いざとなったら卓袱台返しして逃げよう。窓から逃げるってのもありだな、2階だけどなんとかなるさ。


「どうやら失礼なことを考えているようね。わたしたちはあなたに危害を加えるようなことはしないわ。仮に危害を加えるつもりがあるならばとっくにやっているわよ。例えばあなたが迷宮で戦っていたときにでもね。なんでわかったかって?あなた思っていることが全部表情に出るのよ、解りやすいことこのうえないわ。」


 解りやすくてごめんね!ナメクジと戦ったのも見られてたんですね!全然気付きませんでしたよ!


「拗ねていないで話を続けるわよ。記録によると12年前当時5歳のあなたは原因不明の高熱で意識不明となって入院している。間違いないわね?」


 そんなことまでバレてるの?なにそれ、やだもー!


「時期的にこの星に迷宮が飛来したのと同時期と思われるの。12年前のあなたにいったい何が起こったのか教えてもらえるかしら。」

「そんなことに意味があるのかな?」

「意味のあるなしは聞いたうえで判断します。判断材料の提示という点では非常に意味があると言ってもよいでしょう。」

「どうしても?」

「ええ、是非に。」


 是非知りたいと言うわりに、宇宙エルフさんはドヤ顔なんですけど。どうしようかな?知られても差し支えないのかな。逆にこちらが情報を引き出せるのかも。というか、別に隠すほどのことでもなかったよね。知られて何か起きるとは考えにくいし、隠したところで何かの利益があるとも思えない。


 僕は当時のことを宇宙エルフさんに話したよ。隕石が落ちたようなので探しに行ったこと。でも見つからなくて退屈してたこと。偶々見つけたゆで卵型不思議物質を食べちゃったこと。そこで高熱を出した影響か、当時のことはあまり覚えていないので、今話したことは家族からの伝聞であること。しばらく経って、後遺症なのか視界がおかしくなって悩まされたこと。


 宇宙エルフさんは絶句してましたよ。ごめんね、おバカで。でも、今の宇宙エルフさんもけっこうお間抜けさんな顔してますよ?口とかポカンと開いてるし。美人さんのお間抜け顔ってのも結構いけるね。


「あなたが食べたものは、おそらくだけど迷宮の幼生体だわ。それで迷宮の持っていたスキルを取り込んでしまったのね。信じられない!なんでそれで生きているのよ!普通死ぬわよそんなの。予想はしていたけどやっぱりおかしいわ!」


 ああ、そうか。なんとなくそうじゃないかなーみたいに思ってましたとも、流れ的に。やっぱり僕って人外なんでしょうかね。


「予想してたんなら、そんなに怒らなくても・・・」

「状況から推察するとそう考えるのが合理的であるとは思っていました。あくまで理論上は、という話です。でも感情的には常識的に考えてそんなことはあり得ないと思っていました。よもやの結論に冷静ではいられませんよ。私たちの常識を返してください。」


 そんなこと言われても、ねぇ?

 ちなみに特異点というのは、一定の基準が支配する環境下にあって、その基準が適用されない点のこと、なんだってさ。やっぱ人外ってことじゃないですか、やだもー!

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