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家の裏山に迷宮できました。  作者: ちゃぼ
第1章:僕、17歳、高校2年生の晩秋編
10/28

10:エージェントさんのお仕事

 僕の部屋は母屋と廊下で繋がった離れの2階にある。離れの1階は車庫兼格納庫って感じかな。2階は八畳と六畳の二間あって、八畳のほうが僕の部屋。六畳のほうは僕の荷物を放り込んでおく物置にしてたんだけど、軽く片付けてギンヤンマを運び込んだ。ここで一句、六畳に入ってよかったギンヤンマ。スツールがあったんで、そいつに留まって駐機姿勢のギンヤンマは、翅を下げ、テールを上げて、マジトンボ。そういえばトンボなんだからテールじゃなくて腹だよね。

 ギンヤンマの能力の一つに魔素(マナ)濃度の調整というのがあるらしいよ。魔素(マナ)濃度を一定に保つ結界のようなものを展開して、宇宙エルフさんが活動できる環境を整える機能らしい。でも容量的にこの家を覆うくらいが精々で心許ないから、いずれ工作班が来て結界を拡大するんだってさ。決定事項なんだってさ!

 宇宙エルフさんは着替えてくると言って、キャノピーからギンヤンマの中へ。キャノピーって目玉なんだけどね。ここで突っ立ってても仕方ないので自室に戻って待ってましたよ。


 僕の部屋ってそんな楽しいもんでもないよ、まあ普通。八畳の畳敷きで、ベッドがあって、安い折りたたみの座卓があって、カラーボックス2個に雑誌が詰め込んであって、その上には小型の液晶テレビ。この年の地デジ化を受けて買い換えたんだよね。あと小型の冷蔵庫、それくらいしかないよ。荷物は隣の物置に置いてるから、僕の部屋には必要最小限だね。グラビアのポスターなんて張ってないよ、恥ずかしいし。


 着替えを終えた宇宙エルフさんがひらひらと飛んで来て、座卓の上に降り立ちました。おお、宇宙エルフさん行儀悪いな、いやこれは仕方ないのか、主にサイズ的に。

 宇宙服、もとい高濃度魔素(マナ)防護服を脱いだ生宇宙エルフさんは、厚手のタイツにレオタードみたいな服着てますよ。防護服のアンダーなんですかね、身体のラインがまるわかりですね。引っ込むところは引っ込んで、出るべきところも引っ込んでます。さすがは飛行生物ですね、ちぇっ!そういえばファンタジー版エルフってのはナイチチ目ヒンヌー科に属してるって聞いたことあるぞ。そんなとこは一緒じゃなくてもいいのに。ちぇっ!

 形は鱗翅だけど鱗粉のない薄く透明な翅からは燐光が零れ、銀髪銀瞳、色素薄い系美人さんです、うんうん。これで出るところさえ出ていれば!無念です。あ、耳が普通だ、細長くないし尖ってないぞ。ブーブー!そんなのエルフじゃなーい!


「邪な視線と不愉快な思念を感じるわ。」


 ぉぅふ、美人さんのジト目ですよ。イケナイ何かに目覚めそうになるので、その視線は勘弁してください。


「まあいいわ。それでは約束だからいろいろ説明しましょうか。それがわたしの任務でもあるわけだし。」

「任務?」

「ええ、任務よ。わたしは・・・自己紹介を繰り返すのもなんだから簡単に。わたしはミラ、銀河民主共和国連邦資源エネルギー庁渉外部に所属する迷宮対策エージェントよ。」

「ん?んんんん!?」

「いろいろ訊きたいこともあると思うけどまずは一通りわたしの話を聞いてからにしてくれるかしら。ちょっと長くなると思うけどそこは我慢してね。一から話さないとあなたの理解が追い付かないと思うのよ。」


 しょっぱなから突っ込みどころ満載なんですけど、宇宙エルフさんは例の如くマシンガントークで話し始めた。そのうちガトリング砲と化して連続音になるんじゃないかな。これぞバルカンファランクス・トーク。




 宇宙エルフさんの話を要約すると、以下のようになる。


 宇宙エルフさん曰く、そもそも迷宮は生物である。その本体は巨大な核を持つ魔石であり、鉱物生命体の一種と考えられる。その星の魔素(マナ)を吸って成長し、小芋で増える里芋のように幼生体(子迷宮)を作って増殖する。子迷宮がある程度成長した時点で、親迷宮は子迷宮を物理的に飛ばして勢力圏を拡大する。子迷宮の飛散は大規模災害レベルの衝撃をもって行われる。子迷宮が成熟する割合は高くないが、成長過程でよく変異する。迷宮の密度が高くなると吸収さる魔素(マナ)が莫大になり、最悪その星は死滅する。迷宮は飢餓状態になると融合して巨大迷宮が生まれ、身を削って大量の子迷宮を作って飛ばす。巨大迷宮が子迷宮を飛ばす速度は、第3宇宙速度を超える。そうして、その星どころか恒星系を脱出して、新天地を求める。これが迷宮の生態である。


 ああ突っ込みたい!いろいろ突っ込みたいけど、重力圏をブッチして外宇宙まで種を飛ばす生物なんてあっていいのかよ!?豪快すぎんだろ!迷宮さんはそうやって地球くんだりまで、遥々お越しになったわけですね、わかります。納得はできないけどね!何たる迷惑な生き物!


 宇宙エルフさん曰く、迷宮の魔物は生物ではなく、迷宮が自らと子迷宮を守るために魔素(マナ)を使って創り出したオブジェクトであると考えられている。侵入者の排除のため捕食するが、栄養として吸収しているわけではなく、成長もしないし、繁殖もしない。物理攻撃はほぼ効かない。魔法と、魔力を纏わせた武器による攻撃が有効である。魔法の存在しない地球において、数は少ないが魔物を倒せているのは偶々である。物理攻撃でも延々と繰り返せば、回復能力を持たない雑魚なら、たまに与える僅かなダメージを蓄積して倒すことは可能である。


 魔法?SFかと思ってたらファンタジーだったでござる。ああ突っ込みてぇ!むしろ全てに突っ込みたいよ!自衛隊がジャイアントスラグを倒したのってあれか?大量の弾丸をばらまいて、たまに会心の一撃で与える零コンマいくつかの僅かなダメージを積み重ねて倒したってことか?大ナメクジのHPが幾つかはしらないけどさ。不憫が過ぎるぞ自衛隊、頑張れ自衛隊、僕は自衛隊を応援しています。


 宇宙エルフさん曰く、魔物を倒すと魔石を残す。迷宮の深い階層の魔物ほど本体の影響を受けやすく、大きく高品位の魔石を残す。魔石にはエネルギー源として有用な魔核(コア)と、極稀に宝石や金属インゴットなどを含んでおり、連邦など宇宙の先進諸国は資源として活用している。魔核(コア)エネルギーは、今や社会の根幹を支える主要エネルギーに位置づけられており、各国は魔石の確保に必死である。

 迷宮は子迷宮が成熟するのに大量の魔素と長い年月が必要であり、成熟してからも増殖までにまた大量の魔素と長い年月を必要とする。本体の魔石を破壊しない限り、迷宮は魔物を使った防衛機能を維持しようとするため、魔石の養殖が可能である。故に、迷宮に潜って魔物を倒し、魔石を回収することを生業とする迷宮探索者(ダンジョン・ダイバー)という職業が存在する。宇宙エルフさんたち迷宮対策エージェントのお仕事は探索者(ダイバー)の管理・監督、魔石の流通、そして銀河に飛散した迷宮を捜索し、それを新規資源として活用するべく、現地の知的生命体を指導・協力して迷宮のコントロールを行うことなのだ!


 話、長いよ!まだ途中なんだけどね!ホントよくしゃべるよね、宇宙エルフさんは。


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