最期の日
どうやら俺は今日死んでしまうらしい。こんなこと他人に言ったら笑われるかもしれないが、昨日の夢の中で神様に言われたから間違いない。枕元には神様からもらった岩のようなよくわからない置物が置いてある。
「冥土の土産」
とかちょっと上手いことを言いながら渡してきやがった。あのヒゲじじい、あっちに行ったら一発殴ってやろうかと思う。こんなもの俺の趣味では無い。間違いなくあのヒゲからもらったものだ。
「こんなもの家のどこに飾れって言うんだよ・・・。」
と思ったがどうせ今日死んでしまうので関係ないのに気がついた。
「まぁいいか。今日は最期の日だ。最期の日を楽しもう。最期ってことは何も考えなくていいんだからな!プラス思考だ、プラス思考」
「じゃあ行ってきます」
とカバンを手に取り家を出る。朝食は取らない。いつものことだった。
「ああ、ちょっと待ちなさい。今日は朝ごはん、ちゃんと食べていきなさい」
母さんに呼び止められた。珍しいな、朝飯食ってけなんて・・・。と思いつつも履いた靴を脱ぎ、食卓へ向かう。
「最近学校はどう?楽しい?」
「んーそこそこ」
と答えながらたくあんを口へ運ぶ。これが最期の朝飯か・・・と思うと少し気が滅入るので考えるのはやめる。
「じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
「ああ、母さんもね」
学校へ行く。周りに気を配りつつゆっくり向かう。
「トラックとかが突っ込んできて死ぬんだとしたら気をつければ死なないかもしれないからな・・・。」
と思いながら歩いていたら学校へ着いていた。
「自動車事故じゃないのか・・・」
教室へ入る。
「おはよう、元気かい山下君」
「ああ、おはよう・・・」
こいつは山下。小学校からの知り合いだが、どうにも神経質なところがある。今日も朝から何かあったのか顔色が悪い。
「元気ないな、どうしたんだ?」
「いや、実はさ・・・頭のおかしいやつだ、何て思わないで聞いてくれよ・・・?」
驚いた。聞くところによると山下も夢の中に神様が降臨して
「明日、お前は死ぬ」
といわれたらしい。
「俺もおんなじような夢を見たんだが・・・。じゃ、じゃあお前も冥土の土産貰ったのか?どんなやつだった?」
「いや、俺はそんなもの貰ってないけど・・・」
「え?じゃあ何でそんな話信じてるんだよ。たかが夢だろ?」
「いやー、信じないにしても突然夢の中で死ぬ、とか言われたら怖いじゃん」
「おいおいじゃあお前の場合ただの夢っていう可能性もあ―――」
ガラガラ。先生が教室に入ってくる。顔面蒼白だ。
「みんな、落ち着いて聞いてくれ。今全国に緊急的な連絡があった。巨大隕石が地球に迫っているらしい。いや、迫っているというか迫っていた、というのが正しいか―――」
先生の話を要約するとこうだ。昨年秋ごろ、NASAが地球に巨大な隕石が近づいているのを発見した。しかしこれを発表すると世界中がパニックになる。だから今日まで極秘裏にその隕石を何とかしようとした。でももう駄目だ、ということが確定したので隕石が落下する今日、全世界にこのことを発表した、ということだそうだ。
「ああ、だから今日は母さんが朝ごはんを食べて行くように言ったのか・・・母さんの夢にも・・・」
女子は全員泣いている。男子も相当焦りは隠せないようだ。泣いてるやつも数人いた。先生も相当困惑しているようだ。
――さっきから引っかかっていたことがある。
「冥土の土産」
これだ。何で俺には渡して、山下には渡してないのか。あの岩のような・・・というか隕石、そうか、隕石か、あれは。と気づくのが早いか、動き出すのが早いか、というような速度で俺は教室を飛び出した。
「あれを粉砕すればあるいは・・・」
わき腹が痛い。こんなに本気で走ったのはいつぶりだろう。街には誰一人としていない。最期の日をそれぞれの家で楽しんでいるのだろうか。家に着いた。枕元に置物があった。
「冥土の土産・・・か。うおぉおおおおおおおお」
持ち上げ、机の角に向かってフルスイングする。真っ二つに割れた。
「これじゃだめだ、きっと駄目だ。もっと細かく粉砕しないと駄目だ。」
何分たっただろうか。バラバラに粉砕された隕石の置物と刃がボロボロになったミキサーが地面に転がっていた。俺は汗だくだった。息が切れる。
「隕石はどうにかなったの・・・か?疲れた・・・な・・・寝よう・・・」
隣の家から歓声が聞こえる。
いささか先生って凄いと思いましたよ・・・
あとジャンルの分類が間違ってるかもしれないです