ホラーミュージカル小説【現代の森のくまさん】
雨上がりの夕暮れ。
ネオンが濡れたアスファルトに滲む都会の商店街を、人々が足早に通り過ぎていた。
「タイムセールでーす!」
「ポイント5倍ですー!」
「クマ出没注意のため本日は19時閉店です」
物騒なのか平和なのか分からないアナウンスが流れる。
その時だった。
ゴミ捨て場の影から
ぬっ……
巨大な黒い影。
通行人の女子高生がスマホを落とした。
「え……」
クマだった。
しかもデカい。
しかもTシャツに「NO HONEY NO LIFE」と書いてある。
ピアノが鳴る。
ダンッ!!
スポットライト。
突然、駅前のサラリーマンたちが踊り始めた。
♪ 現代の森のくまさん ♪
ある日 街の中
くまさんに出会った〜♪
バクバク バクー バクククー♪
バクバク バクバク
バクー バククー♪
ゲップゥゥ〜〜〜♪
爆音ブラスバンド。
商店街の魚屋がトランペットを吹き、八百屋がタップダンスを始める
クマは人間の肉の塊を咥えたまま二足歩行で歩き出した。
ズシン。
ズシン。
コンビニに入店。
ウィーン♪
「いらっしゃいませー!」
店員が震えている
クマは雑誌コーナーを見つめた。
『冬眠ダイエット特集』
クマ、静かにうなずく。
その瞬間。
女子高生が叫ぶ。
「逃げてぇぇぇ!!」
照明が赤く変わる。
ドラムロール。
駅前スクランブル交差点をクマが爆走した。
♪ お嬢さん お逃げなさい ♪
走って襲います〜♪
背中を見せたら〜
狩りたくなる〜♪
肉食獣
ほ ん の う〜〜〜!!!♪
「キャーーー!!」
「食べ物を捨てろーー!!」
人々は叫びながら逃げ惑う。
しかし次の瞬間
クマ、転ぶ。
ズドォォン!!
アスファルト陥没。
地下鉄停止。
ニュース速報。
《現在、クマによる獣度のミュージカル災害が発生しています》
すると、どこからともなく現れる白いコートの女。
環境保護団体『ラブ&ベアー』代表、森川エリカ。
彼女は歌いながら現れた。
♪ くまさんを 殺さないで〜♪
照明が青くなる。
風が吹く。
なぜか鳩が舞う。
♪くまさんは 本当は 草ばかり食べる
優しいの〜♪
ほら バクバク バクー♪
バクバク バクー♪
ゲップゥゥゥ〜〜〜♪
クマは森川エリカの首を食いちぎった。
「クマァ……♡」
観客席から拍手。
狂った世界。
そして夕焼けの中
みんなで輪になって踊り続ける。
ホラーミュージカル小説【現代の森のくまさん】
完結




