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瞬きひとつで世界が変わった  作者: ろみ
序章 - 道化舞台
23/66

23.手探りの鍛錬

(さて、鍛錬あるのみ…だね)


 とはいえ、まずは何を鍛えればいいのか考えるところからだ。

 そして、それを鍛えるには何をすればいいのか考えなければいけない。

 素人がいいやり方を思いつくのかどうか…


(やれやれだよ)


 己が頼りなさすぎて笑えてきた。

 こんな自分を頼りに生きるとは不安でしかない。


(定番は素振り?やってみるか)


 武器の鍛錬で真っ先に浮かぶのはそれだ。

 それをやって問題点を洗い出すとしよう。


(こうかな?)


 柄を両手で握り締め上から下へ。


(これって足はどうなるのが正解?)


 さっそく疑問が生まれた。

 足を前後に開くで合っているのだろうか…


(体重移動はした方がいいの?しない方がいいの?)


 考えすぎなのかもしれない。

 感覚が大事?

 自分が一番違和感なく振れるのはどれなのか探せばいいのかな?

 とりあえず、体重移動やら足の様子やらを変えつつ腕を振り下ろし続けてみよう。


─────


───


──


 いくらか素振りを続けたことで少し何かを知れたと思う。

 意外と毎回同じ軌道に沿って振り下ろすのは難しいと知った。

 両腕が同じ角度で中心に伸びていなければならない。

 勢いを乗せて行うので少しブレることもあるんだ。


(一回一回集中した方がいいんだね)


 それから、体重移動が重要な要素のひとつだと思っている。

 剣をどの角度で振るか、どのような姿勢で振るうかで移動する程度を変えた方がいいのかもしれないとも。

 しかし、大まかには意識せずとも勝手に体重移動が為されるのだろう。

 大事だということを頭に入れておくことで何かが変わるのだろうか?


(分からないねぇ)


 まだまだ分からないことだらけだけど、当初よりも様になってきたと思う。

 たぶん大事なのは軸を意識すること。

 体幹をしっかりと鍛えた上で柔軟性を身につけた方がいいかもしれない。


(体幹ってどうやって鍛えられるんだろう…姿勢でとか?)


 ものは試しだ。

 今背筋を伸ばし続けてみよう。

 これで何かが変わるかもしれない。

 変わらなくてもいい。

 意味はなかったと知るのだって大いに助かるから。


(たぶんねぇ。あれ?そういえば、これって片手剣だよね?)


 動きを止めた。

 素振りのやり方に疑問を抱いたから。


(合ってる?)


 両手で握り締めた剣を振り上げ振り下ろす。

 イメージは剣道。

 ちかしい人がやっていたので見たことがある。

 しかし、竹刀は両手で扱うもの。

 私が今、手にしているのはおそらく片手剣。

 剣道を参考にするのは間違っている気がしてきた。


(片手剣は両手で扱わないよね?え?片手剣での素振りって何?)


 考えようにも参考資料が全く思い浮かばない。

 使っている様子を見たことはないもんね。


(いや、あれがある。あれあれ)


 アニメやゲームだ。

 今はそこしか頼るところがないので必死に思い出してみる。


(画面の中で主人公はどう動いていた?)


……………


………


……


(ダメだ。ボタン連打でコンボが決まってた…)


 思い出せたものは動きが速すぎてよく分からない。

 両手で握り締めた大剣を握り上げ高く跳躍したのち、勢いを乗せて下へ。

 そんな姿が思い浮かぶ始末だ。

 一刀両断!じゃないんだよ。


 アニメの方も自分が参考にできそうな映像は思い浮かばなかった。

 鍛錬している様子はあった気もするがよく思い出せない。

 そもそも戦闘シーンを見るに当たり武器の捌き方に着目したことがない。

 腰を落とす意味はなんなのか、縦ではなく下から斜め上に切る理由は何か…


(素振りしてたっけ?)


 アニメでそんな描写があってもおかしくない。

 だというのに思い浮かばないから困る。


(どうしようもないなぁ)


 記憶のどこかにあるはずのものを引っ張り上げる方法なんて知らない。

 何かをきっかけに思い出されることを待つとしよう。


(正解なんてないよね?きっと)


 大事なのは身を守るということ。

 正しく扱えた方がいいと理解しているが、それを知る術がないのであれば自分なりの使い方をするしかない。


(うん、やっぱり鍛錬あるのみ)


 結局そこへ行き着く。

 素振り以外も試してみようと朧げな記憶を頼りに動いてみる。

 片手で振り下ろし、次いで腰を落として横に払う。


(おぉ、こんな感じかぁ…)


 一連の動きにしたつもりが繋がらない。

 流れるように次に移行したいのに姿勢や振る方法が変わるとたどたどしくなる。

 これこそ鍛錬が功を成す部分なのではないだろうか。

 数をこなすことで徐々に滑らかな動きになっていく気がする。


(うん。やってみよう)


 この機会に習慣というものを作ってみよう。

 毎日の鍛錬を日課とする。

 その内容をこれから詰めよう。

 まず、剣に関しては両手での振り下ろしと片手でのそれを。

 それから、横への薙ぎ払いもだ。

 腰を落とす高さによってどう変わるかにも着目しましょう。


(他の2つのも決めたいね)


 槍とナイフも毎日触れたい。

 一旦、剣を置き、今度は槍を手にした。

 こちらは剣よりもっと分からない。

 握り方、構え方、振り方、全てが未知だ。

 アニメからヒントを得ようとしたけれど、槍を持ったキャラクターの立ち姿しか出てこない。

 ゲームや映画ならばどうだろうか?


(槍は突くイメージが強いなぁ)


 腰を落とし両手に力を込め思い切り前に突き出す。

 やり方が悪いのか突いた後に隙が生まれる…ような気がする。

 というか、突いた後はどうすればいいのだろうか?

 一発で相手に大きなダメージを入れるという前提があるのか、即座に引いてまた次に繋げればいいのか…


(分からないなぁ)


 相手もなくやったところで二手目が想像しにくいね。

 槍にも一連の動きというものがあるのだろうか。

 あればとりあえずそれを落とし込んでみようとなれるのに。


(いや、自分はたぶん早々使わないなぁ)


 剣があるなら剣を。そもそも魔法をだ。

 武器を使うべきときに槍を選ぶことは少ないだろう。

 突いても避けられそうだしね。

 とはいえ、他者が槍をどう使うのかは知っておきたい。

 突く以外だとどのような攻撃が繰り出されるのだろうか?


(振り回すとか?)


 狭い場所では難しいだろうけど、逆に槍を振り回せる場所でならば敵と近接することなく戦えていいのではないだろうか?

 となると、振り回すというやり方もありそうだね。

 そのときは距離を空けて魔法攻撃。

 だけど、槍の使い手は相手がそうするつもりだと分かりきっていそうだ。


(魔法攻撃をどうするんだろうなぁ。あれ?自分は何を鍛錬すればいいんだ?)


 槍とナイフの鍛錬内容を決めようとしていたはずなのに、少しズレたね。

 とりあえず、突きと振り回しを毎日行おうか。

 槍を極めるつもりはないけれど、やっておいて損もないだろう。


(私が使うとしたら…鈍器としてだな)


 振り回して強打する。

 もしくは、足を払ってもたつかせるとかかな。

 先端を当てようとすればそれに集中しすぎて他全てが疎かになるだろう。


(いや、何言ってんの?戦ったこともない奴が)


 口だけ達者ですこと。

 しかし、先程の考えは間違っていないだろう。

 槍のイメージが突くだからと言ってその通りに扱う必要はない。

 刃を当てようとするな。

 切ろうが、刺そうが、殴ろうが、殺られる前に殺る。

 それができればなんでもいい。

 

(うん。いいね)


 次はナイフについて考えよう。

 こちらに関しては持っていれば何かと役に立ちそうだと思ったので選んだ。

 なので、戦闘用という意味合いが薄い。

 だけど、ナイフで戦う方法を頭に入れておくのはいいかもしれない。

 これで相手に攻撃を通すには…


(投げるとか?)


 小説や漫画の世界ではそのような使われ方も出てくる。

 主に暗殺者の武器として。

 掻き切るや前方へ飛ばすイメージが強いんだ。

 投擲はいい考えかもしれない。

 ナイフ投げではなく、投擲自体を鍛えるんだ。

 足元に転がる石でも正確に投げられるなら武器とるだろう。

 大きなダメージを与えられずとも足留めや隙を作るのに適している。


 となると、ナイフと小石で的当てがいいかもしれない。

 これを鍛錬メニューに加える。

 できるようになってきたら弓にも手を出したいところだ。

 遠距離攻撃は是非とも身につけたいから。


(うん。いいね)


 毎日の習慣としたい武器の鍛錬内容が大まかに決まったところで一旦家に入りましょう。

 実は起床後すぐに外に出たので朝食を摂っていない。

 お腹が空腹を訴えてきたので武器を知る時間に一区切りつけようではないか。

 というわけで、地面に置かれたままの武器を拾い上げ抱える。


(さてと、何を食べようかなぁ…あ…)


 玄関に向かうべく持ち上げた足を下ろした。

 ふと思い立ち首を上へ傾け魔法を発動する。


(鑑定……)


………


(そっかぁ…)


 空の鑑定結果は思い浮かばなかった。

 自然と顔が下がる。

 何を“空”と見做すのか、空とは何か気になったんだ。

 どうして鑑定が発動しなかったのか分からない。

 放出した魔力は大気に溶け込み消えたね。


(あれ?そもそもあれは“空”と呼ぶ?)


 また顔を上げてしまった。

 日記同様、呼び方が…


(あ…本に…)


 “空”で合っていると思う。

 書物でその単語を見たから。

 自分がまさかそんなところに疑問を抱くなんてね。

 感心が強い。

 とはいえ、今の自分は情けない顔をしていることだろう。

 空とは何か、あれは空と呼ぶのか…

 それを問う相手がいないんだと実感したから。


(仕方がないことだねぇ)


「あ…」


 空を見上げる私に風が通った。

 実に心地のいい風が。

 柔らかくて暖かい風だった。

 寂しさを感じているところに吹いたからよりそう感じたのかもしれない。

 だけど、風とはいいものだと思えたからいい。

 この世界でひとつ、いい体験をできたね。


(さてと、ご飯を食べようか)


 そう思ってから長すぎる。

 とっとと家に入り朝食の支度をしましょう。

 玄関前で一度振り返り家へと入った。


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