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【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いたんだけど  作者: 荼枳尼天
原始人編

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ば、バランスブレイカーすぎる…!



 都内にあるオフィスビル。

 その一室で、数人の男女がやけに楽しそうに談笑している。

 とはいえ、時間も時間なため、もれなく全員が片手にエナジードリンクを持っている。


「いや〜にしても、踏んでくれないイベントが結構ありますねぇ」


 徹夜に慣れていないのか、眠そうな半目の若い男が話し始めた。


「ああ。まあ、肝煎りのイベントは大体踏まれてるし、心配することはないだろう」


 それに対して、小太りの男が答える。


「あれには震えましたね〜。ネッシーと魔法少女ロールの子の邂逅。配信勢じゃないのが悔やまれますよー!!」


 割り込むように年若い女が興奮しながら話す。


「まさかのって感じだったな」


 小太りの男が想起したのか目を閉じて腕を組む。

 負け掛けた魔法少女の奮闘を見た魔獣ネッシーが間一髪のところを助けた場面。

 運営が持つ録画データをCMにしてもいいかと魔法少女にメールで打診しかけたレベルだ。

 魔獣の存在が世に出てない時点でのそれは得策ではないと上役に止められたのが悲しいところだ。


「…ん?…ん?!」


「どうした?」


 黙って作業をしていた清潔感のある男性が驚きの声を上げた。

 それに疑問を投げかけたのは小太りの男だ。

 そして、その男性はこの部署の中でも限られた分野、バッカロア湖を担当する人間だった。

 ちなむと、魔法少女とネッシーの邂逅に気付いたのも彼だ。


「ま、まぁ……あ、アッツ!!マジかぁ…」


「ちょ、おい、見せろ…!」


「私も私も!!」


「僕も僕もぉ!」


 寡黙な彼がここまで反応するのは、ネッシー騒動以来であったため、他3人も群がるようにその男の端末に集まった。


 そこには、魔法少女を守るネッシーとは趣の異なる光景が広がっていた。


「……ね、願いの魔法持ちのカーバンクル…だ、と…?!」


 小太りの男が驚き、次の瞬間、少し怒る。


「ば、バランスブレイカーすぎる…!こんな場所に配置するんじゃねぇ!誰だ!」


「ぼ、僕じゃないっすよ?!」


「俺でもないです…」


「…ぴゅ〜」


「てめぇ!!」


「で、でも!ちゃんとデメリットあります!ありますよ!!………こ、このカーバンクルちゃんはもうこの先ウィッシュ魔法使えないです…よ?」


 【願いの魔法】

 それは、その魔法ひとつでゲームのバランスが崩れるほどの大魔法。

 簡単に言えば、願ったことを叶える魔法。

 願えば富も名誉も思いのままのチート。

 だから、小太りの男は怒った。


 だが、それも織り込んで年若い女はデメリットを設定していた。

 それは回数制限。


「でも、先輩、ログ見てください」


 バッカロア湖の担当がログを遡り、カーバンクルの願いを小太りの男に見せる。


「…………………ふっ」


 それを見た小太りの男は微笑んだ。


 《この人を生き返らせて!!》


 それが【願いの魔法】を宿らせたカーバンクルの最初で最後の願いだった。


「…しかも、その願いの作用の仕方が面白い。見てください」


 そう言ってクリックしたのは、あるアイテムのログ。


 【傲慢の処刑斧】という仰々しい名前の呪われたアイテム。


 最初から呪われていたアイテムで本来の性能というのが存在せず、解呪も効かないフレーバーアイテムという扱いだったゴミ。


 そのくせ、敵が手に入れればとてつもない強化が為されるプレイヤーには無価値のアイテムという扱いだった。


 【鑑定】をかければ【解呪不能】という項目が出るため、回収する人間など居ないだろうと踏んでいたネタアイテム。


 コレクターなどがいれば回収されるだろうと思っていたが初期地点で、尚且つまだまだリリースから時間が経っていないためホコリを被ることになると、寡黙な男は考えていた。


 なんなら、【鑑定】を掛ければ呪いの内容が断片的にわかるし、あの見た目で呪いを警戒しない人間はいない、はずだった。

 【呪詛鑑定】の種になればいい、レベルのアイテム。

 なのに、このプレイヤーはいつか使えるという理由で回収した。


 呪いの内容は、


【傲慢の処刑斧】

【解呪不能ウェポン】

・効果

strength. -60

endurance. -90

・スキル

【処刑】 / 【傲慢】


 力が洒落にならない程下げられ、耐久まで下げられるため、初心者が手に入れ装備した瞬間、HPがマイナス圏まで下がり即死するという地雷アイテムが、このアイテムの全貌だ。


「…これが、なんだ?このプレイヤーはこんな斧持ってな…………まさか」


「え?ドユコト?」


 小太りの男はすぐに察する。


「………蘇生の願いを受け入れた【願いの魔法】が七大罪武器を七美徳武器に変換しました…」


「……………未実装お蔵入り武器を…?………てか、七大罪武器の配置は許さんって言ったよね?ねえ、上司の俺が言ったよね?」


「…ぴゅ、ぴゅー」


 下手くそな口笛で若い男が誤魔化そうとした。


「てめぇ…」


「…あー…社長に許可はもらってます!」


「あの人はもう…ほんとに…」


「で、でも!七美徳は配置してません!世界のどこにも!ほんとに!」


 世界のどこにもない、七美徳の武器。


「………で?どれ、どの七美徳武器」


「…えーっと、これです」


【慈悲の免罪斧】

・完成度 : 神造

・効果

strength. 35

endurance. 50

・スキル

【赦し】 / 【慈悲】


「ダジャレみてぇになってやがる…強スギィ!!!」


 ほとんど叫ぶように頭を抱える小太りの男。


「…てか、対になるもんなんじゃねえの?傲慢の対って言ったら謙譲だろう?」


「そこはもう願いの魔法の効果としか…」


「…AIも雑な仕事しやがる…七美徳が世界に存在しねぇっつったって…」


 机をコツコツと叩く。

 眉間を揉みながら詰問は続く。


「…それで?こんなもん初心者にくれてやるのはオーバーパワーってもんだろ」


「……それは…」


「しかも配信されてやがる…配信通してこの武器の異常な強さが知れ渡るぞ」


 広報を担当してる身からすれば、そんな炎上の仕方は勘弁願いたいところだ。


「……あ、あの」


 ソワソワしながら年若い女が質問する。


「どうやって蘇生を?デメリットは?」


「あ、このスキル。【慈悲】です」


 【慈悲】

 使用者を蘇生する。

 使用者のカルマ値によってクールタイムが変化。


「……え?残機を保証するスキルなんですか?」


「強スギィ…」


 小太りの男が呻くように言う。


「まあこのプレイヤーは今のところ良いことも悪いこともしてないので。クールタイムは現実時間で2週間です」


「ええ…なっが…」


「妥当だろ」


「まあ、とりあえず、このプレイヤーがどうするか見ませんか?今いいところです」


 4人がひとつの端末に視線を向ける。


 1匹の魔獣の願いで化けたチート武器を握ったプレイヤーが何を成すのか。


 それを見てから判断しよう。

 それがその場の共通意識であった。

 

◇ ◇ ◇



「アンタを倒すッ!!」


 ナナイの手に握られているのは、神聖なオーラを纏った白い大斧。

 天使の意匠が施された豪奢な斧。


(羽毛みたいに軽い)


 ナナイは知らないが、武器効果で高まった膂力のお陰で重量を感じない。

 

「…ッ!おりゃあああああ!!」


 飛び出す。

 敏捷自体に強化はない。

 だが、ホブゴブリンは自らの生存本能に従った。


「ッ!!」


 切り離された腕を無視して、地面に捨てた両手剣を拾い上げ技術も何もかもを無視し、全力で両手剣を振るう。

 殺せる、さっきは殺せた。

 しね、死んでくれ、という祈りを込めた、必死の一撃。


 斧と両手剣がぶつかった。


 シャラン、と音がする。


 両手剣に、【慈悲の免罪斧】がめり込む。


 ナナイに手応えは無く、ホブゴブリンにすら無かった。

 このまま斧を壊し、女を切り裂き、殺せる、生きれる、と勘違いする程に。


 壊れたのは、否、切り飛ばされたのは両手剣の切っ先で、ホブゴブリンの胴体はそのまま免罪斧に切り裂かれた。


「GIGYAaaaaaaAAaaAaa!!」


 ホブゴブリンの断末魔と共に身体がズレ、そのまま煙に還っていった。


「……っふ…ふ、ぅ…」


 斧を振り、アイテムボックスに収納する。

 配信結晶が、思い出したかのようにコメントを吐き出す。


:おおおおお!!

:勝った!!

:よっしゃああああ!!

:888888

:斧強くね?

:斧白くね?

:なんで?



「カーバンクルちゃん!!」


「きゅっ!」


 ナナイはカーバンクルを手に乗せて、目を皿にして傷がないか見ている。


「……あれ?宝石が透明になってる…?!?!」


「きゅ!」


「……死んじゃやだああああ!!」


 宝石をウルトラマンのカラータイマーと勘違いしているのか、とんでもない大声で叫ぶナナイ。

 願いの魔法の存在に気づくのは、もう少し先だ。

 


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