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第6話 冒険者パーティ


「……ああ、大丈夫だ。助かったよ」


 どうやらこの冒険者の男は俺を助けようとしてくれたようだ。もちろん今の俺の身体能力なら、このイノシシの突進くらい大したことはないだろうと思うが、いきなりのイノシシの突進にビビっていたことは事実だ。


 それに俺は武器も防具も身に付けてはいない。そりゃこんなオッサンが森の中に丸腰でひとりでいたら、狩りに来ているようには見えんよな。


「危ないところだったわね!」


「怪我もなさそうで何よりだな」


 現れた冒険者は10代半ばから10代後半くらいの若い3人組パーティだった。イノシシを倒してくれた男は、短い金髪の男で金属製の鎧を着ている。容姿も整っており、爽やかなイケメンといった感じだ。


 もう一人は女性の冒険者で、金色の長い髪をポニーテールにしている。この子も綺麗な容姿をしており、爽やかなイケメンくんと並ぶと美男美女のカップルに見えるな。防具は軽装で武器は弓矢のようだ。


 最後のひとりは茶髪の男で、革製の鎧を着てゴツめのナイフを両手に持っていた。こちらの男は少し強面で目つきが少し怖いかもしれない。


「無事で何よりだよ。それにしてもどうしてこんなところにひとりでいるんだ?」


「……実は盗賊に襲われて身ぐるみを剝がされてしまったんだ。そんな時イノシシに見つかって襲われてしまったんだよ」


 とりあえずそういうことにしておこう。


「それは災難だったね。僕達はちょうど依頼を達成した帰り道だったんだ」


「盗賊に襲われるなんて運が悪かったわね、おじさん」


「だが、ちょうど俺達に会えたのは不幸中の幸いだったな」


「ああ。本当に助かったよ、ありがとう」


 俺の嘘は見破られてはいないようだ。まあこんな森の中に丸腰のおっさんがひとりで魔物を狩りに来ているなんて思えないだろう。


「困った時はお互い様だよ、気にしないでくれ。僕達はちょうどこれから街に戻るんだけど、一緒に来るかい?」


「本当か、とても助かるよ。でもすまない、身ぐるみ剥がされてお金がないから、礼もできないし依頼料も払えないんだ」


 オッサンを助けようとしてくれる気持ちはとても嬉しいが、今金がほぼないのは本当だからな。


「はっ、依頼料なんて取りゃしねえから安心しろよ」


「ええ。ただでさえ困っている人からお金なんて取らないわよ」


「ああ。困っているようだし、そんなことは気にしなくても大丈夫だよ」


 どうやらオッサンに見返りを求める気はないらしい。3人ともすごく良い人達のようだ。


「ありがとう、感謝する」


「うん、気にしないでくれ。ただ、このワイルドボアを解体するから、悪いけれど少しだけ待っていてくれないか?」


「もちろんだよ」




「へえ~ジンさんはこの辺りにやってきたばかりなんだ」


「そうなんだ。遠い国から来たから、このあたりのことを教えくれると助かる」


 あのイノシシはワイルドボアと言う魔物らしく、そこそこの値段となるらしい。それとなく俺が倒した黒い牛のことについて聞いてみたが、こいつもそこそこの値段で買い取ってくれるらしい。とりあえずしばらくの活動資金になりそうで助かった。


 ワイルドボアの解体が終わり、3人の冒険者パーティと一緒に街を目指している。俺を助けたようとしてくれたこの男はマルコという名前で、この3人の冒険者パーティのリーダーらしい。


「あの街はなかなかいい街だぜ。このあたりじゃあかなり大きな街で賑わっているし、治安も悪くねえぜ」


 こっちの少し強面な男はジョナンという名前だ。少し乱暴な物言いだが、真っ先に金はいらないと言ってくれていたし、見た目や話し方によらず優しい男のようだ。


「そうね。女性にとって過ごしやすい街よ。私もずっと前から暮らしているわ」


 紅一点の女性冒険者はミリーというらしい。結構可愛い容姿をしているから、モテるんだろうな。ただでさえ女性の冒険者は少ないイメージがある。まあオッサンには釣り合わなすぎるだろう。というより、娘と父親くらいの歳の差がある。


「僕もいろんな街を回ってきたけれど、かなり住み心地の良い街だよ」


「へえ~良い街なんだ」


 どうやらあの街はなかなか住みやすい街らしい。よし、俺もしばらくはあの街を拠点にするとしよう。


「唯一の欠点といえば魔族の集落から近いことかな」


「………………」


 おっと、ここで魔族の話がでてきたか。そのあたりの話は昨日街で聞くことができなかったので、気になるところではある。あの魔族の四天王が言っていた通り、人族は本当に残虐な性格をしているのだろうか?


 街の人達やこの優しい冒険者達を見ると、あいつらが言っていたように魔族を虐げてきたとはまったく思えない。


「実は俺が来た国だと、魔族の被害や情報がまったく入ってこなかったんだ。魔族についていろいろと教えてくれないか?」


「ああ、いいよ。魔族と人族との対立はもう何百年も前から続いているのはさすがに知っているよね?」


「……ごめん、そこから知らない」


「おっとそこからか。魔族の話を聞いたことがないなんて、よっぽど平和な村からやってきたみたいだね。魔族と人族の争いはもう何百年も前からずっと続いている。一時的に停戦が結ばれた時期もあったようだけれど、今はそれも解かれて戦争状態になっているんだ」


「なるほど。……もしかして魔族って人を食べたりするの?」


「いや!? さすがに人を襲ってくるけれど、人を食べたりなんかしないよ」


 さすがにそこまではしないようだ。元の世界の漫画やアニメには、人を襲って食べるような魔族がいるものも多くあったからな。だが、確かに魔王城にいた時も、殺したり実験台にしろとかは言っていたが、食べるとは言っていなかった。


「どうして魔族と戦争が始まったんだ?」


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