第40話 捕虜の交換
「……というわけだ。喜べ、きさまらのうち14人は無事に解放されることが決まったぞ」
「「「………………」」」
おかしいな、せっかく人族の街に解放されるというのに反応が悪い。
「貴様ら! せっかく魔王様が解放してやるというのになんて態度だ!」
「よい、やめよマドレ」
「し、しかし魔王様……」
……まあ残念ながらこの人達の気持ちは分かるんだよな。
昨日魔族の集落で奴隷として扱われていた状況からいきなりこの場所に連れてこられてから、まともな食事や衣服を与えられて、次の日には解放して人族の街に返す……うん、どう考えても怪しいよな。
昨日誰かが言っていたが、儀式の生贄として連れていかれると思われても仕方がない。まさかこんなに早く解放することになるとは思ってもいなかったんだよ。
「立候補がないようならこちらで選ぶぞ。そうだな、若いやつか女性を優先してやったほうがいいか?」
「……くっ、分かった。俺が立候補する!」
「ちくしょう、俺もだ! だから子供や女には手を出すな!」
……いや、出さんて。むしろ解放するって言ってんだろ。
「わしも行くとしよう。どうせ老い先短い命じゃしな」
こんどは一番年齢の高い爺さんが手を挙げる。だからそういうんじゃないっての。まあ高齢の人達を選んでやったほうがいいのは確かだ。こちらとしても農作業をするのは若い男のほうがいいからな。
「それでは年齢の高い者と幼い者をこちらで選ぶとするか。ついでに今立候補したやつらも数人ついてきてもらおう。そちらのほうが貴様らも安心するであろう。心配せずとも、我らに逆らわなければ、貴様らもすぐに解放することは保障してやる」
年を取った者と子供や魔法では治療しきることができなかった病人を選んだ。そしてついでで、最初に立候補した勇気のある男2人も見届け人として街までは連れていくことにした。
ちゃんと解放するということを見せたほうが今後真面目に働いてくれるだろう。オッサンはこういう自分を犠牲にしようとする格好いい男は嫌いじゃない。できるだけ早くこの男たちも早く解放してやりたいところだ。
「待たせたな、ルガロ」
「とんでもございません、魔王様」
人族を連れて、先ほどの街の前にやってきた。ルガロには街から少し離れた場所で街の様子を見張っていてもらった。
「おい、あの街はまさかアーミネルの街じゃねえか!?」
「うそ!? いえ、私もあの街は見たことあるわ! 本当にアーミネルの街よ!」
「なに! それじゃあこの魔族の言っていることは本当なのか!?」
どうやらこの街を知っている者もいたらしい。これで俺の言っていることにも信憑性が出てきただろう。
「最初から言ったとおりであろう。この後に街の領主がこの街に捕らえられていた我が同胞達を連れてくる。それが無事にすめば貴様らは晴れて自由の身だ。向こうの街から魔族が出てきたことを確認次第、貴様たち2人は先ほどの場所へ返す。心配せずとも大人しくしていれば、貴様らもすぐに解放されるから安心するがよい」
もうすぐ領主の屋敷を出てから1時間が経ってしまい、交渉がうまくいかなかったのかと内心はビビっていた。
だが、時間ギリギリで街の大きな門の中から手錠のようなものをつけた魔族がようやく出てきた。数もちゃんと7人いるようだ。
「マジかよ……」
「本当に解放されるのか……?」
「最初からそう言っているであろう。さて、これから捕虜同士の交換を始めるため、貴様らは先ほどの場所に戻す。こちらの指示に従って働けば、すぐに貴様らも解放されるから安心しろ」
この2人にはちゃんと人族が解放されたということを伝えてもらわないとな。これで人族の捕虜も大人しくこちらの指示に従うだろう。
「さて、約束通り我が同胞を連れてきたようだな」
アーミネルの街の門から少し離れた場所に魔族の捕虜を連れてきたサンドル。そしてサンドルの周囲には人族の騎士達10人が彼を守ろうと周囲を取り囲んでいる。魔族の捕虜たちの腕に手錠がかけられているのは、暴れたりさせないためだろう。
そしてそこから少し離れた場所いる鎧姿の俺とルガロ。その後ろには転移魔法で連れてきた14人の人族の捕虜がいる。こちらは拘束具などもなく、水浴びをさせて新しい服を着せたばかりなので、とても奴隷や捕虜として見えない格好である。
「ええ。時間ギリギリとなりましたが、なんとか魔王殿のご要望通りに魔族の者を集めることができましたよ」
ありゃ、時間ギリギリになってしまったか。場所も教えたからすぐに集められると思ったが、そうでもなかったらしい。そうか、貴族が所有していたら、領主といえども難しいのかもしれない。次の街では倍の時間を取るとしよう。
「うむ。時間に間に合わなければ街に入らせてもらうところであったぞ。それでは捕虜の交換を始めるとしよう」
互いの捕虜を前に出す。向こうでは魔族の捕虜の手錠を外している。
捕虜の交換といってもやり方は単純だ。お互いが離れた状態で動かず、お互いの捕虜をゆっくりと進ませる。
「さあ、行くがよい」
「あ、ああ……」
「本当に本当なのね……」
ゆっくりとこちらの捕虜がサンドル達のほうへ進んでいく。
向こう側からは魔族がゆっくりとこちら側に向かって歩いてくる。この状況で何か手を出してくることはないとは思っているが、それでも緊張する。
そしてお互いの捕虜が交差し、無事に互いの陣営に進んで無事に捕虜の交換が終了した。
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